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CancerX Story 〜横山太郎編〜

CancerXメンバーがリレー方式で綴る「CancerX Story」
第8回は、CancerX理事の横山太郎です。

私のキャンサーストーリー


「自分のしたいことだけでなく、人のためになることをしなさい。それが私達の使命だ。」

昭和28年に開業した祖父が自分に対して生前にかけた言葉です。
平成9年に父が院長となり、その翌年の自分が高校3年の時に祖父はがんで他界しました。

当時、地に足のついていなかった私に対して患者さんは「わたしをみとるはあなただよ。しっかりしなさい。」と祖父の葬儀で声をかけてくれました。

そこで、自分の人生のために「継ぐ」ことを考えていた自分自身に疑問をもつようになり、地域のために医師になろうと決意しました。

診察する祖父
私・父・弟

しかし、人間弱いもので医師になった頃には、地域にクリニックが増えたこともあり、祖父と父が続けてきたクリニックを存続させるためにはどう「継ぐ」のがいいのかばかりを考えるようになっていました。

しかし、研修医を終え、実家のクリニックで週一回働きはじめた時に患者さんから「お医者さんになったんだね。これからよろしくね。」と言葉をかけてもらい、生前に祖父からの言葉を思い出し、地域に必要な医療は何だろうという視点でも自分の進路を考えるようになれました。

そんな中で、緩和医療科の研修で痛みだけでなく全人的にみていく医療を教えてもらい、これからの地域に必要な医療だと感じ、緩和医になることを決意したのでした。

そして、がん患者さんを診ていくなら、手術や抗がん剤といった治療にも携わることが重要だという恩師の教えの元、腫瘍内科での勤務を開始しました。

所属した腫瘍内科グループには日本のがん診療を牽引している先輩が集まっていました。先輩達は自分に対して今までの経験や人脈を惜しげもなく提供してくれました。

その一つにチーム医療を行う上で必要なことを伝える『みんなで学ぼうオンコロジー』がありました。

その主催者側には現在、CancerXで一緒に活動する上野直人医師がおり、チーム医療のためには個々の力をあげることが礎になるという言葉に克己し、自分ももっと学び発信しようと決心したのを今でも覚えています。

そんな中で開始したのが、『10年後の未来を考えるプロジェクト』です。

自分が克己してきた礎には多くの人との出会いや教えがあってこそだったと感じていたので、中学生や高校生に対して機会を作りたいという思いから、地域の医療者や新聞記者、行政の職員と一緒に医療や介護の現場を体験してもらい、明日から自分達ができることを考え実行する会を文部科学省の委託事業をきっかけにはじめました。

また、診療は横浜市立市民病院に転職し、祖父を看取ってくれた呼吸器内科と肺がん患者さんに対して診断時から緩和ケアチームが介入していく取り組みを行いました。

その中で痛感したのは、病気だけでなく、生活全体に目を向け支援していくことが重要であることを実感しつつも、医療者だけで支援することは量という意味でも質という意味でも厳しいということでした。

ですので、医療への住民参加を今まで以上に活性化することが大事だと思う様になりました。そのためには、自分人身の経験や中高生へ体験学習を通じて 『教育』 が必要だと意識するようになり、中高生の教育に加えて、多職種勉強会をはじめとした教育、公民館が行う社会教育に強い興味をもち参入できないかを模索する様になりました。

しかし、実際に実行することの難しさにも直面していました。

そんな中でコレクティブインパクトを大事にしたCancerXのメンバーに誘われ、メンバーには今までの活動や自分を克己させてくれた人がすでにいたことからここのメンバーと活動したいと思い仲間に入れてもらいました。

これから


私は、今後も日々の診療で気がついた 『困りごと』 がすこしでも良くなる活動を今後も継続していきたいと思っています。特に今まで記載してきた医療者と市民による支援を増やすきっかけを作っていきたいと思っていますが、最後に具体的な2つの取り組みを紹介させてください。

一つ目は『防がんMAP』です。

2021年に行ったCancerX情報のセッションがきっかけとなり 『防がん訓練をつくろう』 という取り組みが生まれました。

自分がいたチームでは、がんになったときにあふれる情報の迷子になるのを防ぐために 『防がんMAP』 というものを作成しました。チームには、病気を経験した人や医療者といった様々な人たちで構成され、互いの価値観や見え方をぶつけ合いながら1年以上かけて作成しました。

今後は作ったMAPを実際に使ってもらうところを増やしていきたいと考えています。

防がんMAP

二つ目は 『医療補助動画』 です。

こちらはクリニックで行っている取り組みですが、医師の長くて分かりにくい説明を短く分かりやすい動画にすることで医療者とのコミュニケーションを良くしたいという思いから開始した取り組みです。

医療者だけでなく、コミュニケーションデザイナー等と制作しています。これからも日々の診療で伝えたい情報を動画にしていきたいと思っています。

今後はCancerXで可視化されたアンメットニーズなども動画にできたらいいなと妄想中です。

医療補助動画を見る患者さん

これらが自分の「やりたい」という欲だけで世には必要とされていないものなのかどうかをCancerXのメンバーとも意見を掛け合わせながら1日1日活動していきたいとおもいます。

興味を持ってくださった方はぜひ連絡ください。

プロフィール

横山 太郎 Taro Yokoyama


横山医院 在宅・緩和クリニック 院長

平成18年  埼玉医科大学 医学部 卒業 同大学初期研修医  
平成21年  埼玉医科大学国際医療センター腫瘍内科
平成23年  横浜市立市民病院 緩和ケア内科       
平成31年  医療法人社団晃得会 横山医院在宅・緩和クリニック開院

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