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さてと、やはり"がんカテ"は吹田がいい理由


ある事情で、しばらくブログを書くことを自粛していましたが、
患者さんたちから、なんか書いて〜と言われることも多く、
また、自分はもうかれこれ8年近く書き続けているヘビーブロガーですので
自分が、全国のがん患者さんたちに伝えたいことを書き続けたいと思います。
これは、自分が個人で継続しているブログ活動ですから。


さて、先週は木曜から土曜まで、和歌山で開催された
日本IVR学会総会に参加してきました。
学会は、大きく地方会(関東とか関西とかのブロックごとの小中規模の学会)と、全国規模の総会に分かれます。
自分ももう医者25年くらいのおっさん(ベテラン?)なので
地方会などは若手の先生方の修行の場として
全ての学会は、
自分が発表する、総会レベルの学会しか行きません。
ひとりでやってると、さすがに緩和科の先生に自分がいないときの管理をお願いしても、患者さんたちが心配なので

(ちなみに、僕はがんカテをしてるだけでなく、腫瘍内科医として全てではありませんが一部の全身薬物療法、そして緩和治療医ではありませんが緩和治療もやっています。)

今も、ホスピス病棟で緩和治療をしている患者さんを数人持ってますが、
数日間病院を開ける前は、関係年数が長い患者さんの場合
「僕が帰ってくるまで、元気で待っててくださいよ」
と言って出かけます。
皆さん、先ほど元気に待っていてくれたことを確認できてほっとしています。

さて、学会の話ですが
IVR学会は、カテやその他の様々なデバイスを用いた技術的治療に関する発表ですので、どうしても技術、道具の発表が多くなります。
僕もそのようなデバイスを使用して治療していますので、もちろん、ふーん、今はこんな新しいデバイスが主流になりつつあるんだ、と勉強するんですけど、
若い時よりも、関心のポイントがずれてるなと自己分析しました。

若い時は、とにかく、カテやりたいやりたいやりたい!って感じで
がむしゃらに症例数をこなしました。
今は、様々な制約があるので若い先生方の修練する場面が激減していますが、
もう緊急で呼ばれることも年に10回以上、1日に5件、がんカテして17時に退勤してそのまま飲みに行ったこともあります。
それだけ、自分の中では、がんカテ=技術と道具、でした。

ただ、IVRって、良性疾患から悪性疾患、検査まで幅広く実施されますが、
僕のやってるがんカテは、かなり進行したがん患者さんしか実施していません。
必然的に、考え方が、道具屋さんから、抗がん剤屋さん、に代わってきました。

だから、どんな道具がどれだけよかろうとも、すでにある程度技術レベルがあがりきった今、道具の良し悪しよりも、関心事項は、患者さんへの治療効果だけですね。

IVR学会でも、抗がん剤を用いた治療に関する発表は数は以前より少ないけどあります。でも、その発表の主旨は、やはり使用した道具だったり、治療した部位の縮小率だったり、時に生存期間だったりします。

僕は、がんカテの目的は3つです、といつも説明しています。

1つ目は、長生きすること。 
生存期間の延長は、全てのがん治療の最大の目標です。

2つ目は、治療部位を縮小、制御すること。
がんカテが局所治療である以上、治療した部位が小さくなったり、増大が止まらなければ意味がありません。
これは、一般的なIVR学会の他の研究でも普通に論じられますが、
ただ、僕はこれに患者さんの採血値を重視しています。
がんが縮小するってことは、その臓器の負担が軽減することになります。
IVR学会だけでなく、多くの学会で論じられませんが、
がんカテでは、採血の数字が改善します。
わかりやすいのが、肝転移。これは肝機能が改善して、全身状態が改善します。
皆さん、肝機能が悪いと体調悪いでしょ?
肝機能が悪い原因は、肝転移です。
そしたら、肝転移を制御することが、1番の特効薬。
もちろん、有効な薬剤があれば、全身薬物治療でも肝転移は縮小しますが、
どうしても全身投与の場合は、肝機能が悪すぎると投与自体ができなくなりますし、うちで実施している動注の場合は、同じ薬剤で一度効かなくなった後でもそれと同じ抗がん剤を動注して効果を出しています。
抗がん剤を使って副作用でしんどくなるか、
逆に抗がん剤を動注して肝機能がよくなりご飯が美味しくなるのか。
そう言った意味で、今回の僕の発表は、
大腸がん肝転移で全身状態が非常に悪い方20例に緊急的に動注したら、採血値が劇的によくなり、余命1−3ヶ月程度と予測された人たちが中央値で8ヶ月生きた(当然中央値ですので、これより短い人もいれば、2年近く生存してる人もいます)という発表。つまり、患者さんの満足度に寄与する結果が、僕の関心事項であって、それなくして、がん治療の発表はあまり最近していません。

3つ目は、元気になること。
上記と被りますが、寝たきりで、ストレッチャーで救急車で他院から搬送された患者さんに動注したら、翌日起き上がって歩いていた。
そんなことを度々経験してきました。
寝たきりの重症の患者さんを引き受けるときは、当然、カテだけするのではなく、
狂いまくった採血値を見ながら頭を抱えながら、内科的治療、緩和的治療を並行して実施します。カテも、本当にしていいのか悩むくらいの採血値の方もいます。
ほんと、勝負!と思って実施することを何度か経験してきました。
やはり、全部のがんで同じ結果を出せません。
がんカテと相性のいい、大腸がん、婦人科がん、乳がん、それと他に治療法が圧倒的に少ない希少がんなどが、成績もいいし、結果として、長期間がんカテを実施し続けています。また、今は遺伝子検査から治療法が劇的に拡大した肺がんも、かなり薬剤を使い切った方で良い適応になる場合もあります。

がんカテは、がんの種類、現在残っている再発病変の場所、今まで実施してきた治療(抗がん剤)の内容など、複数の条件を総合的に判断して適応を執刀医である私が判断しています。
適応に関しては、当然ですが、がんカテを実際にやっていない先生方には判断できませんし、一般的なIVRの先生方にも無理だと思います。

相談に来てくださった方で適応になる方は、やはりそんなに多くないです。
他の治療法が良ければ私はそちらを勧めたりしますし、
現在のかかりつけの先生の意向も大切に判断しています。
ですので、まず大切なのは、がんカテに興味を持ったら、
主治医に紹介状を書いてもらって、一度相談にきてください。
お互いの病診連携室を通して外来予約をとるのが一番正確で確実だと思います。


また、世界情勢読みながら、皆さんが待っているようなので、時々ブログ書くようにしますね。



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