手を繋いで別の方向を見ていたい23時18分.
何ヶ月かぶりに夜ランニングに出かけた.
高校生の頃の部活動の格好をして,
好きな音楽と共に近所の平坦なコースを走る.
この時間は遅めの仕事帰りなのか
サラリーマンや春物のコートに身を包んだ
バリキャリ(っぽい)女性も多く見かける.
目の前に手を繋いで歩くカップルがいた.
何を話しているのかは,
私が音楽を聴いているから分からない.
暗くて見た目もよく分からないけれど,
多分私よりほんの少し人生の先輩のよう.
「身長差も絵になるなぁ」
何て思いながら走ってすれ違う時,
2人は手だけ繋いで別々の方向を見て笑っていた.
それもまたとても絵になる光景だった.
どんな2人なのか,何を話していたのか,
全く分からない.
けれど,手を繋いでこの時間にどこかへ向かっていて
別々の方向を見ていてもお互いの顔に笑みが溢れる.
ちゃんと繋がっていると思えるから,
別々の方向を見ていても平気なのだろうか.
安心出来るのだろうか.
「何か良いなぁ」
ってつぶやくのは呼吸が乱れるので辞めたが,
その後も2人の姿が頭からしばらく離れなかった.
将来のやりたいことリストに
「夜中に恋人と手を繋ぎながら出歩いて,
別々の方向を見て笑い合いたい」
を追加したくなった夜.