見出し画像

清水晶子『フェミニズムってなんですか?』(文春新書)

新書で気軽に読めるフェミニズムの入門書、という位置づけの本。読みやすく、とてもいい内容だったのでご紹介したい。フェミニズムとはどのような思想かに関する説明がまずあり、歴史と思想の変遷(第一波から、現在の第四波まで)と、現在のフェミニズムが提示していること、その解説といった内容が中心になっている。フェミニズム運動に四つの波があったことは知らなかったし、それぞれに目指した方向性の違いなど、なるほどそうだったのかと発見の多い本だった。三人のゲストとの対談も含まれており、親しみやすい一冊になっている。

本書では冒頭にフェミニズムの三つの基本が掲げられている。「改革の対象は社会/文化/制度であると認識すること」「あえて空気を読もうとせずに、おかしいことをおかしいと思う(言う)こと」「フェミニズムはあらゆる女性たちのものであると認めること」。こうした運動はまず「女性たちが日常生活の中で『あれ?』と疑問に思うこと、何気ない言葉や行為に抵抗を覚えること」から始まるのだと説かれていて、非常に納得したのだった。確かに「これよくないな」と思うような状況はあるのだが、反論できるような雰囲気ではなく黙ってしまうというのは起こりがちである。もしその場で何も言えなくても「違和感や憤りを捨て去らないこと」が大事だと著者は述べている。本当にそうだと思う。

印象に残ったのは、日常的なケア(家事など)が女性の領域(私的領域)とされて「女性たちが自然に担う役割である」とされてきた点を論じた「なぜ〝ケア〟は黙殺されてきたのか」、性教育の重要性について書かれた「日本の性教育の転換期に考える、真にヘルシーな性教育とそれがもたらす効果」など。性教育をしないことで不利益を被るのは圧倒的に女性なので、ここは本当に良質な性教育をすべきだと思う。ロー対ウェイド裁判のことにも触れられているが、2022年5月に本書が発売された後、その1ヶ月後に同判決が覆ってしまうというできごともあった。このあたりは考え始めると重い気持ちになってしまうが、よりよい世の中に変えていきたいと感じた。

文化的な面で発見があったのは、これは先日読んだ『男の子みたいな女の子じゃいけないの?』(原書房)でも指摘があったが、フェミニズム運動のアイコンとしてのココ・シャネル。私はまったく知らなかった。ファッションはあまり詳しくないジャンルなので、もう少し掘り下げてみたい。それと90年代に活動していたロックバンド「ビキニ・キル」の果たした役割も興味ぶかく、これまで聴いたことがなかったので調べてみると、サブスクリプションにも音源があった。いま聴いているが、ワイルドで実にカッコいい。フェミニズムと文化的表象の変遷についても、知らないものがいろいろあるだろうし、もっと見てみたいと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?