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邂逅

鬱屈している時や気持ちが行き詰まった時、フラッと外に出てみると、何か起こるかも知れません。とにかく歩き回っている事自体が気晴らしになり、思わぬ情報が入ったり、欲しかった物を見つけたり、偶然誰かに会ってしまったり…

ある土曜日の休日の午後、気分転換に街に出かけました。まだ本来の姿ではないですが、いくらか人出が戻ってきたように感じながら、あちこちお店を覗いてフラフラ散歩をしていました。

最後に、かつての職場近くの大型書店に立ち寄りました。そこで偶然、前職の時、一緒のチームにいた女性を見かけました。どうしようか迷ったのですが、一応声をかけてみました。すると、私の事を憶えてくれていて、近況を語り合うことになりました。

その人によると、私の退職後、退職者が2名出た。数人は異動し、新たにやって来た人あり、出戻った人あり…と現在の様子を教えてくれました。

退職した2名のうちの1名は、私が在職中、大変お世話になったマネージャーです。私の些細な質問に、いつも丁寧に答えてくれました。個人的には、俳優の柳葉敏郎さんを一回り若くした感じに似ていると思います。長身で、見た目がカッコいいので、異動者や退職者が出た時は、よく花束贈呈役を任命されていました。

聞くところによると、このマネージャーは、私の退職後、半年近くして辞められたのだそうです。ということは、このマネージャーに、最後に花束贈呈して頂いたのは、恐らく私ではないかと思われます。

そのマネージャーがもういないとは…自分が最後にいた時の光景とメンバーで、私の中の、前職での記憶は止まっています。なので、話を聞くうちに、確実に時は流れていて、万物は流転するんだと、当たり前の事ですが、実感した訳です。長く同じチームで一緒に働いたマネージャーだっただけに、この情報は衝撃でした。

このマネージャーに1つだけ、申し訳ない事をしたと思っている事があります。ある年の忘年会に、かなり熱心にお誘いを受けたのですが、無下に断ってしまったことがありました。

私は飲み会は元来好きではありません。(数回は楽しかった事もありましたが。)前職に入社したての頃、何も知らずに酒癖の悪い上司の隣に座らされ、困惑してたところを、面白がった女性上司が写真を撮り、後日バラ撒かれた事がありました。以来、少人数のものはともかく、大勢の飲み会には行かなくなりました。

このマネージャーが異動してくる前の出来事でしたが、私にはトラウマとして残っていたのです。この話はマネージャーにはしませんでしたが、その時お断りしてしまった事は、後々まで尾を引きました。

後になって、このマネージャーが、その時、幹事だったと知りました。人集めに奔走してたと知って、ずっと申し訳なく思っていました。私は退職する時、その時の事を謝ろうと思っていたのですが、何となく言いそびれてしまい、結局それっきりとなってしまいました。

小一時間ほどでしたが、偶然の立ち話で、思わぬ収穫がありました。今となっては、前職の状況は知る必要もないですが、それでも知って良かったです。

その女性は普段は無口ですが、職場から離れた場所だった事もあり、すでに退職した身の私が相手だったせいか、話しやすかったようで、色々話してくれました。思い切って声をかけた甲斐がありました。

何気なく散歩のつもりで出かけたら、思いもかけず、情報が入ってきました。いつもとは限りませんが『犬も歩けば棒に当たる』の諺通り、出歩いてみるものですね。

帰宅して、アイスティーを注いだお気に入りのマグカップは、私が退職する時、皆さんから贈られたプレゼントの1つです。

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