バナナ労働者虐殺事件とゲリラの話


今回はコーヒーじゃなくてバナナの話をします。


1928年12月5,6日の出来事なのでちょうど94年前の出来事ですね。コロンビアでバナナ労働者虐殺事件という事件が起きました。コロンビアの過去の出来事って日本語じゃ情報が少ないので、私がこちらで読んだ解釈を備忘録として残す意味でブログにまとめますね。 


この事件はコロンビアのカリブ海に面するサンタマルタの町、シエナガ地区で起こりました。20年代はコロンビアが海外に向けてコマーシャルを大きく広げた年代でもあり、バナナはこの先駆けとなったフルーツでもあります。この事件が起こったシエナガではアメリカ企業ユナイテッドフルーツ社(現チキータ)が現地民を雇ってバナナの生産を行っていました。しかし90年以上前の出来事なので福利厚生とか労働者環境も当時はゆるゆるで、安く雇える現地の労働者を相当コキ使ってたんですよね。搾取してたんです。賃金は安いのにアメリカ人は現地にプール付きの豪邸を会社のお金で建てて、パーティーとか車とかも全部労働者が生産したバナナで儲けたお金を使ってたんですよ。当時の労働者の中で読み書きができた人は100人に1人いたかくらいだったということで、契約書とかも読めずにサインさせられていたんでしょう。


そんな環境で働かされていた労働者たちの怒りはある時ピークに達し、25000人の労働者たちがストライキという形で11月12日から抗議活動を行います。バナナの生産がストップして困ってしまったアメリカはコロンビアに「なんとかしろ」と連絡を入れました。それがこの事件が起きるきっかけとなったのです。


https://encolombia.com/educacion-cultura/historia-colombia/masacre-de-las-bananeras/

連絡を受けたコロンビアは軍を投入。軍隊はデモ隊が密集している広場に向かい、「5分だけ時間をやる」とデモ隊に告げます。そして5分後、広場から立ち退かなかったデモ隊に向けて一斉にマシンガンで発砲し始めたのです。その後、軍隊たちは証拠隠滅のために死体をトラックに積んで海に捨てに行きました。大きな穴を掘って死体をそこに埋めたという目撃情報もあります。政府は死者20人と公表。9人、12人と報じる新聞もありましたが実際の軍に殺された労働者は1000人を超えているという話が有力のようです。(ガルシア・マルケスの「百年の孤独」にはこの事件を基に書かれた場面があります)


この痛ましい惨事を引き起こした政府の言い訳としては「このストライキは共産主義に仕組まれたものだった」でした。コロンビアって決まった家系の人間が交代交代に政権を握っているような国で、それに逆らうような人が出たらこういった適当な理由つけて消すっていうのがお決まりパターンなんですよ。


現にこのバナナ大虐殺で直接現地にいって証拠を国会まで持ち帰り農民たちを声を代弁したホルヘ・ガイタンという人物がいるんですが、市民に絶大な評価を経て大統領候補になったところで暗殺されます。犯人はその場に居合わせた市民に撲殺されました。ガイタンの暗殺を指示した人物は謎に包まれてることになっていますが、まぁ分かりますよね。ちなみに80年代ルイス・カルロス・ガランも同じように腐り切った政府に反発して大統領になりかけたところでパブロ・エスコバルに殺されました。ガランの殺害には当時の司法大臣が関わっているみたいです。政治家が麻薬組織に依頼したって解釈でいいんじゃないでしょうか。コロンビアってこういう国っす。


ホルヘ・ガイタン(https://lalineadelmedio.com/a-la-carga/)

まぁこういったバナナ大虐殺みたいな事件ばかりが起こるので、こうして政府に裏切られ家族を殺されていった人たちが団結して反政府武装組織としてゲリラ化していくわけです。で、右派も対抗して武装するのでコロンビアってゲリラだらけなんですよね。ちなみに今年コロンビアの大統領になったグスタボ・ペトロ大統領も左派ゲリラ出身なんですが、彼が所属していたM19というゲリラ軍は、左派の大統領が誕生しそうになったところで投票を打ち切って右派を当選させたという政府の汚職に対抗するために組織されたゲリラ軍でした。このゲリラ軍が解体されたのち、ゲリラのトップだったカルロス・ピサロは大統領候補になりましたがアビアンカ航空の機内で射殺されてます。犯人は若い殺し屋の男の子でしたが暗殺を依頼したのは・・・まぁ勝手に想像しておきましょう。(念のため言っておきますがM19もかなりの数の一般市民を殺してるので擁護はしてません)豆知識?ですが、カルロス・ガランの息子さんやカルロス・ピサロの娘さんは今政治家をやっています。


 


話はゲリラに逸れてしまいましたが、このバナナ労働者虐殺事件はコロンビアに暴力が絶えなくなったきっかけの出来事の一つであるとされています。コロンビア軍がコロンビア人を殺した事件ではありますが、元の原因は先進国による搾取ということを忘れてはいけないと思っています。


あ、ちなみにこのバナナの会社、右派の武装組織に資金援助してたらしいですよ。なんかもうめちゃくちゃですね。(参考)


 


さてここで先進国がめちゃくちゃ言いよる出来事をもう一点。


先日ヨーロッパが森林伐採の進む国の製品(カカオ・コーヒー・大豆・パーム油など)の輸入を停止することを決定したそうです。ヨーロッパお馴染みの表面的な「僕たちはたちは良い事してます。」みたいな優等生ぶってる感じに吐き気がするのでちょっと言わせてください。


コロンビアの森林伐採は、コーヒーなどの農業によるものではなく多くが違法武装組織によるものです。武装組織の資金源ってどこか知ってますか?コカインです。コカインの主な消費国ってどこか知ってますか?アメリカとヨーロッパです。


つまり自分たちが違法組織にお金を落として森林伐採が行われているのに、自国の可愛い可愛いコカイン中毒者たちを放置して、搾取されて貧しい暮らしを強いられている途上国の農民を取り締まるとか言ってるわけですよ。もうね、ほんと吐き気する。


国連のスピーチでペトロ大統領が、先進国はスピーチで偽善的なことばっかり言って問題を全部コロンビアのジャングルに押し付けてるみたいなこと言ってたけど本当にそれで、これまでの出来事をさらっと聞き流してる人は南米が左派政権だらけになっていることを馬鹿にするんですよ。でもこんな事ばっかりだから保守政権に嫌気がさす気持ち、私は分かりますよ。 (左派が政権握った方がいいとは言ってません)


あぁなんかもうね、このニュースをみた昨日からなんかイライラしてます。


中国アパレルSHE|Nの過酷な労働環境に関する報道もありますけど、消費する側の私たちは服に限らずその製品の裏側がどうなっているかにちゃんと興味を持つべきなんじゃないかと思っています。

https://youtu.be/lEfVdGADij8

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