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C2020/最近楽しく聴いている日本のインディーアーティスト

去年から年に一度、よく聴いている日本のインディーアーティストの楽曲をSpotifyのプレイリストにまとめている。これはその2020年版。せっかくなので、簡単なプロフィールをつけて記事にしてみた。

1)MIMOSA/ZOMBIE-CHANG

シンガーソングライター・メイリンによるソロプロジェクト。2016年にシングル「恋のバカンス E.P.」でデビュー。2018年の3rdアルバム『PETIT PETIT PETIT』では、サポートにnever young beachの鈴木健人と巽啓伍、D.A.N.の市川仁也らを迎えて、ユニークなバンドサウンドを披露した。最近、カネコアヤノやbetcover!!など、ソロアーティストが(たぶんライブを想定して)バンドを組み、思いも寄らないポテンシャルを見せてくれることが多いと感じるのだが、彼女はその最良の成果のひとつだと思う。「MIMOSA」は、2019年末にリリースされた配信シングル。
http://zombie-chang.com/

2)オープンカー/家主

トクマルシューゴ主宰のレーベル・TONOFONからソロ名義で作品を発表している田中ヤコブ(Vo,G,Key)に加え、田中悠平(Vo,Ba)、谷江俊岳(Vo,G)、岡本成央(Dr,Per)からなる4人組。ドラム以外の3人がソングライティングを手掛け、自分の書いた曲でボーカルを取り、しかも3人とも書く曲の方向性が違っていて、それぞれに個性を感じさせてくれるところも面白い。曲のテイストだけでなく、そんなバンドのあり方にふとティーンエイジ・ファンクラブを連想してしまう。ライブでギターをぶんぶん振り回しながらソロを弾きまくり、かと思えば曲間のMCで、やたら人懐こいトークを繰り広げる田中ヤコブの存在感もいい。「オープンカー」は、2019年末に発売された1stアルバム『生活の礎』のラストを飾った一曲。
https://coboji.tumblr.com/

3)rendez-vous/Laura day romance

2017年に井上花月(Vo)、川島健太朗(Vo,G)、鈴木迅(G)により結成。翌年にはサポートメンバーだった清水直哉(Ba)と礒本雄太(Dr)が正式に加入し(のちに清水は脱退)、現行の体制に。一度聴いただけでスッと耳に入り込むメロディ、そしてそれを軽やかに彩るネオアコ/ギターポップ直系の楽曲構成。少し憂いを含んだボーカル・井上の、歌声と佇まいも素晴らしい。この「renderz-vou」は、6月に発売された1stアルバム『Farewell Your Town』からの先行シングル。「私小説的なコンセプトアルバム」になったという、このアルバムもよかった。
https://www.lauradayromance.com/

4)In your徒然/illiomote

東京・池袋出身の幼なじみコンビ、YOCO(Vo,G)とMAIYA(G,Sampl)によるユニット。2019年3月にYouTubeにアップした「In your徒然」のビデオで注目を集め、楽曲の正式リリース前にもかかわらず、雑誌やウェブメディアで話題に。もともと高校の軽音楽部でガールズバンドを組んでいたそうだが、2人以外のメンバーが脱退したことをきっかけに、サンプラーや打ち込みを使うようになったらしい。ゆるっとした打ち込みとインディポップ的な荒っぽさが同居しているのは、たぶんそんな彼女たちの出自から来るものなのだろう。今年4月には、代表曲の「In your徒然」など全6曲を収録した1stEP『SLEEP ASLEEP...。』を発表。曲ごとに違った表情を見せる、変幻自在な詰め合わせ感が楽しい。
https://illiomote.amebaownd.com/

5)WARMUP/JUANAFAN CLUB

2018年に結成された後藤大義(Vo,G)、徳光晴行(G,Cho)、山口雄一朗(Ba,Cho)、ライス(Dr)による4人組ロックバンド。たまたま耳に飛び込んできた、この「WARMUP」という曲が抜群によかった。荒っぽくギターがうねりを上げる導入部、倦怠感や日々の裏にべったりとくっついてくるどうしようもなさを、そのままストレートに歌う散文的な歌詞、そしてトドメが「自販機で温かいお茶を買った」の執拗なリフレイン……。その「普段着のロックンロール」ぶりたるや。この「WARMUP」は、去年末にリリースされたデモ音源の2枚目『DEMONstration2』の収録曲。今年5月にはデモ音源の第3弾もリリースしていて、そちらも相変わらず面白い。
https://juanafanclub.jimdofree.com/

6)シャーロット/SEAPOOL

ギターとヴォーカルを担当する小原涼香とベースの飯谷真帆の2人により、2015年に徳島で結成。2018年に、対バンをきっかけに知り合ったドラム・白井景が正式加入し、現在は大阪を拠点に活動するスリーピース。小柄な身体から放たれる圧倒的な爆音と、ずっとキープされ続ける不穏さ、そして鬱屈をそのまま叩きつけるようなメロディと歌詞。まさに「オルタナティブであること」を、そのまま具現化したような、絶妙なバランス感。現在までに4枚のEPをリリースしているが、この「シャーロット」は2月に発売した最新作『Kiss The Element』の収録曲。
https://seapool-band.tumblr.com/

7)Why/Annapurna

ポストパンク的な鋭角&クールなグルーヴで、ファンク/ダンス/サイケデリックサウンドを展開するバンドが、東京にはいくつかいるのだけれど、このAnnapurnaはWool & The Pantsと並んで、今後が楽しみなバンド。メンバー募集サイトで出会ったベース&ヴォーカル、ギター&コーラス、ドラム&コーラスからなる3人組。去年5月に最初のリリースを出した後、今年4月にこの「Why」を含むニューシングルをリリース。トロトロのサイケデリックとヒップホップビートに野太いヴォーカルが襲いかかる「Why」のように、先がまったく読めない曲展開が面白い。
https://www.instagram.com/annapurnaband8091/?hl=ja

8)おやすみグッドナイト/ステレオガール

高校の軽音楽部で出会ったメンバーにより2014年に結成。2018年に「未確認フェスティバル」で準グランプリに選ばれると、サマーソニック2018にも出演。翌年にはSXSWで渡米するなど、すさまじい勢いで注目を集める男女混成の5人組。無表情でぶっきらぼうに歌うヴォーカル・毛利安寿、ハイキックを決めながらカッティングする宇佐美莉子とその横で黙々とすさまじいリフを繰り出す吉田奏子の2本のギター、そしてベース・大塚理玖とドラム・立崎ゆかのタイトなリズム隊。バラバラのようで、でも奇妙な一体感のあるステージでの立ち姿がカッコいい。6月には待望の1stアルバム『Pink Fog』をリリースしたが、この「おやすみグッドナイト」はその先行カット曲。
https://www.instagram.com/stereogirl5/

9)セゾン/カネコアヤノ

彼女については、それほどくだくだと書き連ねる必要はないだろう。2012年に発表した自主制作盤「印税生活」でデビュー。その後もリリースを重ねつつ、気鋭のシンガーソングライターとして一目を置かれる存在に。しかしなんといっても驚かされたのは、2018年に発表した3rdアルバム『祝祭』。踊ってばっかりの国の林宏敏らを迎えて、初めて挑戦したバンドサウンドは、それまでのどこか閉じた印象の弾き語りから一転、晴れやかにまっすぐ伸びるボーカルとともに、まったく新しい表情を見せてくれた。この「セゾン」は、『祝祭』と同じくバンドセットで録音された4thアルバム『燦々』の収録曲。ZOMBIE-CHANGとは「ミモザ」繋がりだったりする。
https://kanekoayano.net/

10)Crush On You/Rainyday

ヴォーカルとギターを担当する東シンと、ヴォーカル&ベースのシルヴィによる、北海道・旭川を拠点に活動中の男女2人組。この「Crush On You」は、今年3月にリリースしたアルバム『モノクロームの日々』の収録曲だが、青臭く、でも少しだけ湿り気を帯びたメロディラインが素晴らしい。本人たちのウェブサイトに掲載されたアルバム紹介に「日本のグラスゴー?から届いたPure Guitar Sound」と書かれているのも納得。素っ気ないほどシンプルなギターポップなのに、つい繰り返し聴いてしまう。
https://rainydaywebsite.weebly.com/

11)ロマンス/羊文学

2012年結成というから、今回のプレイリストのなかでは古株になる。もともとはヴォーカル&ギターの塩塚モエカを中心にした5人組だったが、何度かのメンバーチェンジを経て、2016年からは今の体制に。翌2017年には初の全国流通盤『トンネルを抜けたら』、さらに2018年には初のフルアルバム『若者たちへ』をリリースして知名度を上げた。この「ロマンス」は、2019年に発表した3rdアルバム『きらめき』の収録曲で、彼女たちにしては珍しく(?)ダンサブルな1曲。今年2月にはニューアルバム『ざわめき』をリリースしたが、こちらも素晴らしい仕上がりだった。
https://hitsujibungaku.jimdofree.com/

12)Cool Me/The Fax

掴みどころがなくてユーモラスで、しかもトンでもなくポップ。という、離れ業のようなサウンドを実現してみせる京都発のスリーピース。メンバーは、カニオ(Vo,G,Syn)、みなみオンジアース(Dr,Cho)、タクミ(Ba)。いわゆるロックサウンドの枠に収まらない……というか、そんな枠なんか知ったことか!とばかりに、素っ頓狂に明後日の方向に飛んでいく盛りだくさんなアイデア群と、それをスルッとまとめるチャーミングなボーカルの絶妙なバランス。この「Cool Me」から始まるミニアルバム『GOLD MATE』を去年11月にリリース。京都は本当に不思議なバンドが多い。
http://the-fax.com/

13)銀河鉄道の夜明け/時速36km

時速36kmを初めて知ったのは、去年11月に公開された「素晴らしい日々」のMVだった。中央線で山梨まで出かけるメンバーの様子をタイムラプスで捉えた映像に乗せて「起きて食って働いて食って寝て起き」る日々が歌われる。その叫びだしたくなるような切なさ。「銀河鉄道の夜明け」は、そんな「素晴らしい日々」も収録された2ndEP『最低のずっと手前の方で』の1曲。「パンクロックと黄色い月 銀河鉄道が排ガスを吐いた」。アップテンポに繰り出されるメロディから、零れ落ちる叙情が印象深い。今年6月には新曲「優しい歌」を公開したばかり。
https://36kmperhour.jimdo.com/

14)Concrete Jungle/ODDLY

京都の大学生によって結成されたシューゲイザー/オルタナティブ・バンド、browned butterで活動していたメンバーが、2019年に新たに結成した3人組。メンバーは、ギター&ヴォーカルのnaoko yutaniとtomoyuki watanabe、そしてドラムのkeita kishimotoという男女ツインボーカル体制。いかにも「オルタナ」的なサウンドだけれど、どこか人懐こいところがあって(特に女性Vo)、チャーミング。この「Concrete Jungle」は、今年3月にリリースされた4曲入りの1st EP「Loaded」の中の1曲。
https://oddlyband.jimdofree.com/

15)Imagine Sibling/No Buses

彼らもilliomoteと同様、音源の公式リリースより前から話題を呼んでいたバンド。2018年4月に1stシングル「Tic」のPVを公開するや否や、すさまじい勢いで拡散し、注目の的に。精力的にライブを重ねるのと並行して、去年初めてのフルアルバム『Boys Loved Her』を発売。こちらも各所で絶賛された。バンド名がアークティック・モンキーズの曲から採られていることからもわかる通り、UKのガレージロック(クリブスとか)からの影響が強いが、今年3月に発売した3曲入りシングル「Imagine Siblings / Number Four or Five / Trying Trying』は、そこからさらに一歩踏み出した感がある。またバンドと並行して、ヴォーカル&ギターの近藤大彗が発表しているソロ作(宅録)も、独特の佇まいがあってまた楽しい。
https://www.instagram.com/nobusesband/

16)キラーチューン/アフターアワーズ

2016年に大阪で結成。ショーウエムラ(Vo,Ba)、上野エルキュール鉄平(Dr,Vo)、タミハル(G,Vo)からなるスリーピースバンド。ソングライターであるショーが公言している通り、Theピーズからの影響を感じさせるサウンドだが、なんといっても抜群の曲のよさ。3人組というミニマムなバンド編成から、ちょっぴりオンボロで情けないけど、でもポップなサウンドが飛び出してくる。2019年には『ヘラヘラep』と『ガタガタep』という2枚のEPに加え、今年4月にはベルマインツとのスプリット盤『どッぷらあ』をリリース。書く曲すべてが名曲というのは、ちょっとすごい。
https://afterhours3.amebaownd.com/

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