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創作の糧(皆様の気になった記事を紹介)

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ライティングや創作のヒントになるような記事。特に再読したい記事をスクラップしています。素晴らしい記事を集めています。ご参考になれば幸いです。
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#本

大島幹雄 『日本の道化師/ピエロとクラウンの文化史』

☆mediopos-2385  2021.5.28 西洋のクラウン(道化師)の歴史を辿りつつ それが日本にどのように受容され展開してきたのか それを現在に至るまで概観したのが本書だが たしかに日本ではクラウンではなくピエロであり それは西欧におけるピエロのことではない ピエロのルーツは イタリアのコメディア・デラルテの召使役である ペドリーノがフランスへと渡り ジャン・バチスト・ドビュローという 天才的なピエロ役者によって永遠の存在となったという マルセル・カルネ監督の映

長谷川櫂『俳句の誕生』

☆mediopos-2373  2021.5.16 正岡子規が唱えた 俳句の方法としての「写生」は 「対象への凝視、精神の集中を要求する」ものだが 著者の長谷川櫂によれば 「集中ではなく」 「心を遊ばせること、いわば遊心こそが重大」だという 「人間の心は遊んでいるとき、自分を離れ」 「はるか昔に失われた言葉以前の 永遠の世界に遊んでいる」からだ 矛盾する表現になってしまうが 写生は「言葉によって失われた永遠の世界を 言葉で探ること」だというのだ さて子規の後継者を名

『最後の文人 石川淳の世界』

☆mediopos-2360  2021.5.3 石川淳を読み直しはじめたのは 数ヶ月前に『狂風記』を 古書店の店頭で安く見つけたからだ 思い出深い三十年来の再会でもある (刊行当初は学生だったが 学費にも事欠くほぼ無一文状態でもあり 高価な大作には手がでなかったが 種村季弘の解説にもあるように そうした境遇のなかでこそ 石川淳は読まれるべきだったともいえる) その後あらためて石川淳を 再読・新読していたところ こうしてその数ヶ月後 『石川淳の世界』が 偶然(であるかの

「なるほど、本か!」

 英国の代表的なロマン派詩人ワーズワース(William Wordsworth)の"The Tables Turned"(邦訳「発想の転換をこそ」)は、本を捨てて自然に出ようというメッセージを力いっぱいに押し出した痛快な詩である。岩波文庫の『イギリス名詩選』(平井正穂編)に収録されているこの詩に出会ったのは学生時代だったが、生活が苦しかったうえ、本分たる研究(の真似事)のための文献解読にも四苦八苦し、文字通り書物の海に圧倒されている若きわが身を朗らかに笑い飛ばしてくれたものだ

自分の感受性くらい自分で守ればかものよ。

詩人茨木のり子氏の詩、「自分の感受性くらい」の一節。 自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ 初めてこの詩に触れたとき、衝撃を受けた。 自分が鈍くなっていくこと、 ぎすぎすしていくこと、 目指すところと離れていくこと、 すべてを「何か」のせいにするな、という詩。 厳しい… 厳しいけども。 納得。 人のせいにしたり、環境のせいにしたり、時代のせいにしたりして、「仕方がない」って言いがちだけれど。 何を「感じ」て、何を「感じない」かは、自分で選べることなんじゃないだ