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俳句マガジン 「ランタン」

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小生の処女句「ランタンはゆつくり灯る秋の雨」より。これから俳句を始める人や、句作に悩んでしまった人たちの、道を少しでも照らせたらと思う。
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2020年11月の記事一覧

俳句 雑詠5句

やがて入る棺の底の冷たさよダイアモンドダスト吸い殻にまだ幽かな火生も死も給わるものや星冴ゆる流星群ひたすら土下座する俺に下の名を呼びたいポインセチア買う亀山こうき

【句集紹介】花詞 鍵和田秞子句集を読んで

・紹介令和2年6月。小生は一つの訃報を目にする。 鍵和田秞子。 今回は、平成期を代表する女流俳人であった彼女の句を、哀悼の意を込めて紹介したい。 彼女の句の特徴についてであるが、彼女の句にはいつも少女がいる。真っ白な衣服を纏い、長く透き通るような黒髪を持っている、どこか物憂い感じの少女だ(小生のイメージです)。そして17音の中で描き出される美しい光景の中に、諸行無常が匂っている。彼女の句の根底には「命」に対する尊厳がいつも見え隠れしているように思われる。「人間探求派」と

【句集紹介】池畔 草間時彦句集を読んで

・紹介噛めば噛むほどおいしい句。 草間時彦の句は「美味しい日常」なのである。 時彦の句には、久保田万太郎のような俗っぽさと軽さがある。故に気負うことなく平易に読むことができる。しかし、その洒脱した雰囲気の中に、仄かに死への想いが匂ってくる。若くして結核を患ったこと等、時彦の近くにはいつも死が顔をのぞかせていたのだろう。だから、それらの句は、シンプルな素材を使いながらも、微妙に味の奥行きを生み出す。噛めば噛むほど旨味が出る、そんな句なのである。 小生短歌にはあまり詳しくは

【句集紹介】花行 高橋睦郎句集を読んで

・紹介修辞について、高橋睦郎は下記のように、インタビューで答えている。 リアリティ(真実性)ではなく、アクチュアリティ(現実性)があって、どこででも起こりうることでないとね。そうではないと、馴染まないですよ。 この言葉は俳句においても如実に、表れている。というより、浅学なる小生、高橋睦郎氏のことを存じなかったが、高橋氏は俳人であり、歌人であり、劇作家でもあられる、多才の人だ。 道理で読了後に寺山修司の句を思い出してみたり、シェイクスピアの悲劇の一場面みたいなんて感じたわ

【句集紹介】雪山 前田普羅句集を読んで

・紹介前回紹介した、三橋敏雄が海の俳人なら、山の俳人は前田普羅と言えるであろう。 前田普羅は大正から昭和前期にかけて活躍した俳人である。ホトトギスの四天王の一人として活躍をした。 しかし、普羅の俳句のほかにも、詩や紀行文、戯曲などの文筆もこよなく愛していた。だからだろうか、その句の多くは、堅実な写生句であるが、季重なりの句も多く目につく。 彼が主宰していた辛夷の理念には「わが俳句は俳句のためにあらず、更に高く深きものへの階段にすぎず」とある。 前田普等にとって俳句はあ