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図工の先生が「写真は写すだけだから」と言ったこと。

娘と佐藤秀明さんの写真展に行きました。写真家の佐藤さんはサーフィン雑誌を中心に活躍し、その後、北極、アラスカ、チベット、ポリネシアなどの辺境を中心に撮影活動を続け、数多くの作品を発表されています。

ギャラリーでは、佐藤さんの写真が販売されていました。どれも素敵な写真ばかりでしたが、ちょっと娘のお小遣いでは手が出ない。ギャラリーの方とも少しお話させていただきました。その方とのお話で印象に残ったのは、作品の値段のこと。

「お客さんが『なんでこんなに高いの?』っておっしゃるんです。」

「えっ、そうなんですか?でも海外で撮影しているし、経費もそれなりにかかるし、きっとものすごい量を撮った中の数枚だろうし、額装もされているし、決して高いとは…。」

「写真を撮る方にはわかってもらえるんですけど、いまどきは携帯でも手軽に写真が撮れるじゃないですか。だから、みんな簡単に、しかも同じように撮れるって思うようで…。ただシャッター切っているだけなのにこの値段?って思うみたいです。それに、いくつでもプリントできるから複写も簡単じゃないかって。絵画だと1枚がオリジナルで、その他は複製ってことになるんだけど、写真はプリントすればみんな同じだって考えるらしくてね。」

確かに、1枚の写真を撮るためには1回のシャッターを切ればいい。でも、最高の1枚を撮るためには、練習や試行錯誤も含めて、何枚もの写真を撮らなければなりません。もしかしたら、プロのカメラマンは、撮る枚数そのものは少ないのかもしれない。でも、プロになるために切ったシャッターの枚数は、膨大な数ではないかと思うのです。

帰り道、娘が話していました。

「お母さん、さっき、ギャラリーの人と話していたけどさ、そういう考えの人いるよ。学校の図工の先生がさ、『写真は、ただ単に写すだけだから、絵とは違う』って。」

「どういうこと?」

「絵を描く時の説明で、『色とか形とかを工夫しましょう。写真は単に写すだけだけど、絵は工夫次第でいろいろとやれることがあります』とかって言ってた。」

「それ言われて、どう思った?」

「むかついた。」

「なんで?」

「写真を撮る時だってさ、アングルとかホワイトバランスとか光とか考えて撮ってるし、作品が出来るまでは失敗もたくさんあるから、枚数もたくさん撮るでしょ?試行錯誤ってやつ。まあ、先生はみんなに分かりやすく説明するために、写真を例に出しただけかもしれないけどね。」

少しだけ想像力を働かせれば、気がつくこともありますよね。そういうこと、すごく大事だなって思います。作品にしても、食べ物にしても、ものづくりにしても、それをつくった人が必ずいるわけです。たまには、そういう人達の思いを、お子さんと一緒に想像してみるのも、悪くないのではないでしょうか?

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