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「手放し」の始まり

 「こと」の始まりは6年前に念願のマイホームを建てた時から始まっていたのだと思う。家を建てようと思った理由、それはどうしても自分のこだわりの台所が欲しかったから。
 その頃体調がいまいちと言うこともあり、食事に関してかなり調べて実践していた。だから台所に立つ機会も多く、仕事が休みで時間がある時に、一氣に作りためておく習慣ができた。

 そうなるとやはり使い勝手が良かったり、ある程度の広さがある台所が欲しくなるのは自然の成り行きだった。また時を同じくして、ちょっと「いい感じ」の戸建てデザインを見つけて夢を見てしまったのだ。そして建てようと決断してから1年半後には自宅に引っ越していたのだ。

 新しい「家」は心地よかった。想像と多少違いがあったとしても、全体的には自分のこだわりを詰め込んだ箱だけに毎日が楽しかった。しかしわたしは大変重要なことを見落としていた。

 家を建てると言うことはその「土地」に定住するということである。それはこの「土地」や「場所」が不便であっても、容易に替えることができないと言うことだ。思うに人には暮らし方の傾向と言うものがあると思う。「自分の居場所」を起点に考えると、定住が心地よいタイプと住む環境を替えながら暮らしていくタイプがいるように思う。そもそも自分の傾向を考えると、間違うことなく住む環境を替えながら暮らすタイプであるという衝撃の事実に後々氣づくのである。

 3年経過し何となく家があることの安心感よりも、重荷に感じることが多くなった。そして6年目に入る頃には家を手放した方がいいのか悩むようになった。しかしそれも背中を押してくれる方がいて、自宅売却の決心をしたのである。後で思えば自宅の売却も幸運が続いて結果オーライだったのだが、色々あったことは言うまでもない。

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