小説制作のコツ
全体像
おおよそ下の順に前後しながら制作します。上から「文章」以外を、大まかに概要から決めていきます。そして徐々に細かい部分の作り込みをします。
1. キャラクター
2. 精神的な葛藤
3. 一般的な葛藤(ストーリー)
4. 謎・情報の提示
5. シーン
6. バックストーリー
7. 文章
1. キャラクター
下の三つが必須要素です。
・特徴
・欲求
・決断
- 特徴
初登場で印象づける、一言で人物を言い表せる特徴が必要です。五月晴れのようにすっきりした青年、ヒマワリを思わせる美少女、公園の便所みたいに陰気な男、カーニバルみたいに陽気な女、など。
外見の、二言三言で言い表せる特徴が必要です。「竹竿みたいに長身な女で真っ黒のワンピースを着ている。ショートヘアにくくられた真っ赤なリボンが印象的だ」など。細かい特徴は適宜つければいいですが、一度にたくさん書くと理解できない人がいることに注意が必要です。
性格・精神面での特徴は他のキャラクターとの対比で見せます。欲求、動機、背景、目標、態度、価値観の違いを鮮明にすると面白くなります。
- 欲求
ストーリー上の欲求を持っていないといけません。この欲求によって物語が進むようにしないと、キャラクターと無関係な話になってしまいます。他社との競争に勝ちたい、偽の恋人役をうまく演じたい、平穏な毎日を過ごしたいなど。
- 決断
キャラクターには決断させなければいけません。追い詰められたときの決断がキャラクターの性格・価値観を如実に表し、面白さが生まれます。大小様々な決断をするのが理想ですが、クライマックスで最大の決断をするようにします。
2. 精神的な葛藤
キャラクターが乗り越える精神的な葛藤を作成します。大会での対戦やビジネス上の駆け引きである「一般的な葛藤(ストーリー)」と比べると個人的・内的な葛藤で、主にコンプレックス克服の過程を指します。
- コンプレックス
気を遣い過ぎること、劣等感、失望されることへの恐怖感、対人関係の苦手意識、傲慢さなど。
- 父親・母親との問題
コンプレックスの中でも父親・母親との問題は大きいです。男性の主人公の場合は古代ギリシアの悲劇「オイディプス王」のころからある古典的なテーマです。父親との軋轢は精神の成長過程で必ず見られ、現代においても変わることのない重大なテーマになっています。
3. 一般的な葛藤(ストーリー)
キャラクターが乗り越える一般的な葛藤を作成します。魔王討伐であるとか想い人を射止めるといった、いわゆる「ストーリー」です。
キャラクターがこの一般的な葛藤を乗り越える際には、まず精神的な葛藤を乗り越えるように作ります。キャラクターは、コンプレックスに邪魔されて一般的な葛藤で立ち止まりますが、コンプレックスを克服することで一般的な葛藤を乗り越えて目的を達する、というのが物語のスタンダードです。
例えば。バスケット選手の主人公は実力がありますが個人主義でチームワークを軽視しています。ここでは傲慢さがコンプレックスです。大会で強敵と対戦してこのままでは勝てない状況に追い込まれます。そこでマネージャーであるヒロインが大切な一言を言います。主人公はこの言葉でチームワークの重要性に気付きます。コンプレックスが克服されました。そしてチームは試合に勝つことができました。という具合です。
4. 謎・情報の提示
謎は読者の興味をそそり作品に引き付けます。大小様々なものがあるのが理想で、大きいものは最後になって明かします。魔王を倒したとき主人公の出生の秘密が明かされる、競合他社を出し抜いて勝利を得たとき黒幕と主人公の関係が明らかになるなど。
「謎」と言ってしまうと大げさに聞こえますが、これは「情報をどこで提示するか」という問題でもあります。主人公の必殺技、奥の手は格好良く登場させたいですから、この情報提示をどこで行うかは考えどころです。また、キャラクターが克服すべきコンプレックスをどの時点で提示するかも重要です。冒頭ではキャラクターのいいところを提示して好きになってもらう必要がありますから、悪いところであるコンプレックスは少し後になって提示することになります。
それから、伏線になる情報を提示する場所も考えなくてはいけません。ピンチを乗り切る鍵となる主人公の特技は、ピンチより十分に早い時期に提示することになるでしょう。
5. シーン
シーンとは小さな物語です。出会いの物語、デートの物語、恋を阻む問題の物語、問題を解決してゴールインする物語が連なって大きな恋愛の物語を作ります。
他方、物語とは、何かしら問題・議題がありそれを解決するために右往左往する様子です。つまり物語とは葛藤・対立の顛末です。
このことからすると全てのシーンには葛藤・対立が必要です。葛藤・対立のないシーンは事情説明しているだけで小さな物語とは言えません。例え重要な情報が示されたのだとしても、読者としては「ふうん」とスルーするのみで感情が揺さ振られないのです。
シーンとは、小さな葛藤・対立が解決される経緯を示したものと言えます。
6. バックストーリー
バックストーリーはキャラクターや状況・環境の背景にある物事です。物語に深みを与えたり、伏線のベースになったりします。主人公のトラウマの理由、ヒロインが日記を付けるようになった経緯、かつてあった倒産の危機を救った出来事など。
「4. 謎・情報の提示」と深く関わってきます。効果的な場所で提示することで大きな意味を持ってくるからです。主人公が不正に強く反発する理由が明かされたとき、ヒロインは主人公を理解して恋に落ちるのかもしれません。
クライマックスに絡めると効果が絶大です。孤児である勇者が魔王と対峙したとき親子であることが明かされる(スター・ウォーズがそれですね)、誰にも心を開かなかったヒロインが主人公にだけ素直になった理由が悲恋の決定的瞬間に明かされる、など。
7. 文章
視覚メディアではなく文章だからこそ得られる感情を与えないといけません。比喩の「ゲリラ豪雨のような視線を浴びせられた」「祐子の心は天国と地獄の間をさまよった」などは分かりやすい例でしょう。
比喩を含むレトリック(修辞法)が文章術として代表的です。いくつもの種類があり、普段何気なく使っているものや、使い所を問われるものもあります。使い過ぎるとうるさくなるなど、注意が必要です。
一文の長さをコントロールするというものもあります。単純なことが言い回しや言葉の使いようで長い文になっていると、ゆっくりとした時間が流れます。端的に短い文ばかりで語るとせわしなくなります。徐々に文が短くなっていくとクライマックスに向けて緊張が高まります。
また、注意点があります。
- なるべく二重否定を使わない
理解しやすさのために、なるべく「伸二は学校を休まないわけではない」ではなく「伸二は学校を休むこともある」とする。なるべく「この料理は美味しくないわけじゃない」ではなく「この料理は不味くはない」とする。
- なるべく副詞は使わない
すっきりシンプルに、なるべく「飛行機はとても速い」ではなく「飛行機は速い」としてしまう。なるべく「奈々子は少し焦った」ではなく「奈々子は焦った」としてしまう。
考えたり思ったり気がついたりしたことを皆さんに提供していきます。サポートしてくださるとノート作成の励みになりますので、是非おねがいします。