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【カンボジアニュース】国連による北朝鮮制裁の抜け穴になり得る帰化問題


アメリカにおいて特定国への輸出が禁止されている軍事製品の、中国への輸出を目論んだとして2015年にハワイで逮捕された男性は、カンボジアのパスポートを所持していました。彼の名前はMr. Kim Song Il、朝鮮系の名前に思えます。調べてみると、2008年9月17日付の勅令NS/0908/1045によって、北朝鮮国籍で平壌出身の1973年9月23日生まれの同名の人物に対して、カンボジア国籍が授与されていることがわかります。

Mr. Kim Song Ilにカンボジア国籍が授与された2008年9月17日付の勅令NS/0908/1045


同氏はカンボジアにおいて、プノンペン都内中心部の75番通り2番地を登記地としてGreen Pine International Co.,Ltd.を設立、2009年の5月には、香港においても同名のGreenpine International Co.,Ltd.が、カンボジア国籍(パスポート番号N0630354)の同名の人物によって設立されています。2012年の7月には香港の同じ住所に同名の人物(パスポート番号N0755974)によって、新たにRich Lead Trading Ltd.が設立されています。

2009年国連決議1874号に基づき設立された専門家パネルの報告書によると、北朝鮮の武器関連輸出の半分近くに、Mr.Jun Hak Bum社長率いるGreen Pine Associated Companyという会社が関わっているとされ、その仲介や代理人として関連の可能性があり得る企業のリストには、Greenpine International、Green Pine Internationalの社名も記載されていました。

写真は、国連決議に基づき設置された専門家パネルの報告書で、Greenpine International社名が記載されているページ

カンボジア国内における関連先はないかと思い、カンボジア王国商業省においてRich Lead Tradingに類似の社名を調べてみると、Richland Global Co.,Ltd.という法人が、Mr.Kim Sovannというカンボジア人によって登記されているのが確認できました。この名前はカンボジアにおいては一般的なものですが、過去の帰化情報を調べてみると、2008年4月24日付の勅令NS/0408/428によって、北朝鮮国籍で平壌出身のMr. Kim Song Cholに対し、カンボジア名Mr.Kim Sovannへの改名とカンボジア国籍の授与が認められています。Mr.Kim Song Ilよりも4ヶ月早くカンボジア国籍を取得している北朝鮮人である点や、会社名の類似性などから見ても、この人物がなんらかの関わりを持っている可能性は高いのではないでしょうか。Richland Global Co.,Ltd.の登記住所はプノンペン都のデポー市場付近の1562通りとなっていますが、付近で聞き込みをしても所在地どころか、その道路番号すら見つけることができませんでした。

またMr. Kim Song Ilは、北京に居住所のあるKo Pok Namという人物と共に Rich Abunding International Trading Co., Ltd. という会社も作っています。この人物の素性や近況についても不明です。

国連決議に従い、カンボジアにおいても北朝鮮人による事業が禁止されていますが、その規制はカンボジア国籍を取得し帰化した人物には及びません。こういった帰化した人物等が、現在カンボジアでどのような事業を営み活動をしているのか、興味深いところです。

さて、カンボジア国籍を取得しているのは北朝鮮人だけではありません。今回の再調査において、日本国籍を有する人物がカンボジア国籍を取得した勅令も複数見つかりました。日本の法律においては二重国籍は禁止されています。これらの人物がどのようなバックグラウンドを持ち、カンボジアにおいて何を行っているかも、今後調査を行いたいと思います。

(2015年に執筆した文章をもとに、追加調査の結果を加筆修正したものです。)


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