見出し画像

【カンボジア生活】不動産購入時のリスク管理となるポイント

昨年1年間ブログ投稿をしてきた中で、アクセス数の上位を占めたのは反社の動向や特殊詐欺について書いたものばかりでした。その中で1つだけ例外だったのは、カンボジアの不動産についての投稿で、現在でも多数のアクセスがあります。多くの方が興味を持っているようです。

今までは対面で質問されたときのみ私見をお話ししていましたが、私の発言が歪曲して噂されることもあると聞き及びました。良い機会ですのでこちらでカンボジアの不動産投資についてもう少し書いてみたいと思います。

まずは、昨年の投稿をご覧ください。カンボジアの不動産について、昨年の時点で私が感じていたことは以下の通りです。

さて、昨年執筆した上記の投稿のほかに、複数の方からのご相談で気になった点がいくつかあります。まず第一は、デベロッパーによる情報公開の不備です。

Q デベロッパーが情報をあまり公開しておらず、購入するコンドミニアムの現在の土地の所有者や建設会社が確認できません。不動産エージェントからは「実績があるから大丈夫だ。個人情報や取引情報は公開できない。」と言われたのですが、カンボジアではこれが普通なのでしょうか?

これに類似したご相談を複数いただいています。デベロッパーが土地の権利を保有しているのか不明な状況では、いくら立派な宣伝をしていようが、契約をし前払いをするのはやめたほうが良いと思います。カンボジアでのコンドミニアム開発においては、デベロッパーが開発する土地を所有している登記簿(ハードタイトル)を公開するのが当然です。契約をしてお金をお預かりするのですから、開発する土地の権利を公開するのは至極当然のことだと思います。それがなされてないという事は公開しない理由があると推察され、土地が第三者の所有でプロジェクトが頓挫したらといったような懸念も生じてきます。

また、建物が立つ前に顧客を募集するプレビルドであっても、個別の顧客からの前金だけでは、プロジェクトは成り立たないでしょう。建設が途中で頓挫しないように、銀行や投資会社などの大口の資金調達源も重要になるかと思います。そういった資金的基盤が公開されているかどうかも重要です。また、マネーロンダリングなども取り沙汰されるカンボジアでは、プロジェクトやその資金の透明性の確認も大事です。

建設会社の確認も重要です。パンフレットの美辞麗句とは別に、実際の建設がどのような品質で行われるのかを確認することも大事です。技術力のある信頼できる建設会社が請け負っているか、そしてその会社がコンドミニアムのような高層建築を行う技術力と、ライセンスを保有しているのかの確認も大事かと思います。

カンボジアのコンドミニアムの多くは、たとえ数十階建ての高層であっても鉄骨を使わず、下記写真のように鉄筋と生コンやセメント、レンガで作られています。日本基準で行われる日本のゼネコンによるODA工事ですら、生コンの安定した品質の確保が大変だと聞いています。現場でミキサー車の品質チェックを行い、規定外だった車を返しても、中身を入れ替えずに1周回ってまた戻ってくる。そんなことが日常的にあります。建物の耐用年数は生コンの質によっても変動するようです。これはあくまでも一例ですが、建設に責任を持つ建設会社の役割は非常に重要だと言えます。

左は旧東横イン、右は中国系サービスアパートメントの建設当時の風景
建設現場で待機する生コン車

さてここで、中国系デベロッパーによるBKK1地区最大級のプロジェクトのパンフレットを例に、私が指摘した情報が公開されているかを見てみます。ルコンデと呼ばれるこの物件は2020年から販売され、コロナ禍の影響を受けたにも関わらず、ほぼ計画通り2024年完成予定です。敷地面積は他の物件の2-3倍と大変大きなものですが、それでも工期はほぼ予定通りに終わりそうだとのことです。

資金を提供している投資会社、建設を行う建設会社などが公開されています。
土地がデベロッパーのものであることを証明する土地権利書も公開されています。


こちらの中国系プロジェクトでは、このように私が指摘した情報を開示していました。これらの情報が開示されているかどうかは、そのプロジェクトのバックグラウンドや信頼性を確認する上でも大変重要です。またショールームでも下記の写真のように権利証や許可証が掲示され、パンフレットにはなかったコンドミニアムのライセンスも追加で確認できました。

ついでにお話を聞いてきましたが、例えば外壁材は石材塗装を採用するなど、品質にこだわっているとのことです。よくあるラテックス塗料は1平方メートルあたり5ドルと低コストですが、雨の跡が残ってしまい汚損するため、長期的価値を考え高価な石材塗装を選択したとのことです。安普請の価格競争ではなく、BKK1という立地条件からも、高級で長期間資産価値のある物件をつくるとのことでした。また安全にも配慮し、火災などの際に避難経路となる階段も複数設置されていました。

ショールームでの権利証や許可証の公開風景
コンドミニアムのライセンス


さて、第二は不正な価格表示がされていないかです。

Q 安くて広いと思って買ったのですが、完成して、実際に部屋に行ってみたら、想像以上に狭かったです。疑問に思って、自分で部屋のサイズを測ってみたら、広告に掲載されていたより面積が少ないのです。これは詐欺では無いですか?

A カンボジアでは、コンドミニアムのユニットについて、「ネット面積」と「グロス面積」という2つの表示方法があります。ネット面積は専有面積のことを指します。住戸内の面積とバルコニーの面積との合計がネット面積です。我々日本人が面積と言えばネット面積になります。

その一方でグロス面積とは、建物の延床面積を戸数で割り戻して計算されます。建物の延床面積には、共用廊下や階段なども含まれているため、実際の住戸面積を表すには不適切であり、グロス面積と実際の住戸面積とは乖離していることも考えられます。カンボジア不動産を購入する時には、住戸のネット面積を確認することが必要です。

ネット面積と誤解させ、異なる数字を利用して廉価なm2単価を偽装する事例には注意してください。日系のエージェントやデベロッパーであれば、本来は日本の法律や日本人の常識に準じた表現を行うべきですが、残念ながらそうではない事例も散見されます。

ここでまた先程のBKK1最大級の中国系プロジェクト、ルコンドの事例を見てみましょう。

グロス面積だけでなく、ネット面積も明示されています。m2単価がグロスのものであることも明示しています。

もう一つ、既に完成しているプロジェクト、ピカソ1を確認してみましょう。

やはりグロス面積だけでなく、ネット面積も明示されています。

カンボジアでは不動産投資の現況について悲観的に考えている人が多数な中で、日本語ではインターネット上で景気の良い発信も飛び交っているようです。そんな状況の中で、出来る限りリスクの少ない投資を行うのであれば、不動産エージェントや物件の選定は慎重に行う必要があります。以上、カンボジアに長く住む日本人の私見ですが、この投稿が投資の一助になれば幸いです。

不動産に限らず何か情報がありましたら、匿名でも結構ですので、cambodiatarojapan@gmail.com まで情報のご提供をお願いします。

追記:執筆に使用した資料は、いずれも公開されているものを独自に収集し、利用しています。


当ブログは「にほんブログ村」のランキングに参加中です。1日1回のクリックにご協力ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?