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マネキンを使ったライティング調整

ブツ撮りでは、商品などの静物を、決まったライティングの中で撮影する。
ライティングはある程度の定石に従って組み立てるわけだが、どんな商品であっても必ず正面となる「顔」があるので、その「顔」がうまく写るように微調整せねばならない。場合によっては、数時間かけて納得するまで調整したりする。

<静物では時間をかけてライティングを調整できる>

ところがポートレート撮影では、そういう悠長なことはできない。
なぜならば、ポートレート撮影は時間でコストがかかるうえ、モデルさんを待たせて色々と試行錯誤するわけにはいかないからだ。モデルさんが来た時にはもう撮れる状態であるべき。

<モデルさんが来た時はもう撮れる状態にしなければならない>

レンタルスタジオでは照明器材も現場のものが使えるのだが、行きつけのスタジオでもないとどんな器材がセッティングされているかは分からず、不確定な要素をあてにできないため自前の照明器材一式をスタジオに持ち込むことにしている。

その際、事前に計画しておいたライティングを再現するのだが、実際に撮影を始めてみるとイメージ通りでなかったりすると焦る。主張しないはずのエフェクトライトが妙な影を落としていたりしていた時など、小手先の手当てでは埒が明かず、まずは撮影を続行することを優先してエフェクトライトは無しとしたこともあった。

<レンタルスタジオ>

だがそんなことを続けていると、いつまで経ってもポートレートライティングが向上しない。ジックリとライティングを検討するプロセスがどこにも無いからだ。
本来ならば、事前に様々なライティングを試して検討しておき、自分の中でライティングの型として構築しておくことが必要だろうと思う。それが無いから、現場での予想外な結果に適切に対処できず、新たな試みも活かせない。

ライティングの検討では、試行錯誤をしていると、1つの問題を解決するために多灯化しすぎることがある。しかしその状態をあらためて組み立て直すと、意外にも1つのライティングでまとめられるということもあった。そういうことは本番撮影時ではなく、その前の段階で経験しておくべきだろう。

そこで、モデルさんの代わりとなる練習用の被写体を検討してみた。
顔の立体を想定してビーチボールに布を被せて撮ってみたりしたが、照明効果はよく分からない。キャッチライトや髪のツヤなど、全く予想がつかない。

結局のところ、人間の顔の形を撮る意外に方法は無いと悟った。
そういうわけで、マネキンをポートレートライティングの練習用として導入することとした。

<マネキンを使って気兼ねなくライティング調整>

これならば、何時間でも何日でも我慢強くそこに居てくれる。完全に動かないので、ライティングを変えた比較もやりやすい。

<同じポーズをずっとキープできるのはマネキンしかない>

時間にとらわれなければ、多灯ライティングの分解も可能になる。
これは1灯1灯の役割を明確にし、どう表現したいのかということを再確認させてくれる重要なプロセスだろう。

<多灯ライティングの分解>

もちろん、人間の顔はそれぞれ違うので、同じライティングを現場で再現すれば同じように写るとは限らない。重要なのは、どういう調整がどういう結果になるかということを理解し、自分の中に型を作るということである。

ライティングに正解は無い。
ただ、自分のイメージがそこに投影されるのみ。

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