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カリフォルニアワインの記憶とその澱

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晩酌の記憶で綴る、個性と多様性のカリフォルニア・ワインについての雑感。
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2024年9月の記事一覧

幸運

幸運

先入観を変えるほどのワインに出会うことは、稀で幸運なことだ。

2000年代の中頃、「カリフォルニアでまともなピノ・ノワールなど、作れる訳がない。」という論調が、国内外で広く信じられており、カリフォルニア・ワインの愛好家の中でも懐疑的な意見は少なくなかった。Kistlerなどは良い意味で例外だったが、「カリピノ」に対するイメージを転換するほどではなかった。

当時、筆者はカリフォルニア・ワインに傾

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過剰

過剰

最近、円安で価格が高騰しているとはいえ、レストランやショップがこだわりのワインを揃えることは珍しくない時代になった。店としては、自身が表現したいことを体現できるワインを探すことが求められている時代とも言える。ヴァン・ナチュール・ブームの後は、北海道を始めとする国産ワインが人気のようだ。

他方、カリフォルニア・ワインの人気はそれほど高まっていない。どうやら、エレガントな味わいのイメージが持てないこ

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時の人

時の人

「舞台に立つ役者は、観客に鍛えられる」

役者の成長には観客が欠かせないという意味だが、聴衆が見識に欠けていれば相応の役者しか生まれないとも取れる言葉だ。

今、Napaの生産者達には厳しい視線が注がれている。世界的な高級ワインの価格高騰の中にあって、同地域は特に値上げが激しい産地の一つであり、高価格帯のワインが売れなくなっているという。

消費者も鵜の目鷹の目で価値のあるワインを探している。Na

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生産者と評論家

生産者と評論家

新しい生産者の情報を探すときには、専門家のレビューが掲載されている専門誌は役に立つ。ここのところ、Antonio Galloni氏が創設したVinousを購読してるが、同誌には様々なレビュアーがいて、世界各地のワイン産地に関する記事を公開している。

購読期間が長くなってくると、好きなレビュアーが分かってくる。中でも、Josh Raynolds氏はお気に入りだった。同氏のレビューは、簡潔だが必要な

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