消化酵素と食物酵素①
ヒトの体内では約６０兆個の細胞が常に活動して生命維持を行っています。この細胞が活動する上で重要な役割をしているのが酵素と呼ばれる物質です。
日常生活で酵素という言葉はよく聞きますが、「酵素とは何ですか？」と聞かれた場合、スラスラ答えられる人はそう多くはないと思います。酵素の本質を知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。酵素は、目に見えるものではないので、その働きも良く分かっていないと思います。
体内にある酵素は、食物を消化する段階から吸収・分布・代謝・排泄に至るまでのあらゆる過程に関与し、生命活動を助けています。生命をつなぐ食物に含まれる有機化合物や無機化合物を消化・分解し、細胞内に取り込み、細胞が栄養素として吸収するための必要な化学反応を引き起こす役割が酵素にあるのです。
酵素は細胞とは異なり核がなく生命体ではありません。タンパク質を中心とした細胞よりも極小な有機化合物です。また、種類も数多く（千種類以上が発見されている）、まだ未発見の酵素もたくさん存在すると考えられています。
酵素の生理的化学反応の役割が分かる例として、発酵の触媒効果もあります。発酵は、菌類などの微生物によって起こされますが、実は微生物がいなくとも、ヒトから取り出した酵素を食物原料に加えることだけで発酵が起きることが分かっているそうなのです。如何に酵素が重要な物なのか分かります。
最初に発見された酵素はジアスターゼ（アミラーゼ）であり、1833年にA・パヤンとJ・F・ペルソ（Jean Francois Persoz）によるものである。彼らは麦芽の無細胞抽出液によるでんぷんの糖化を発見し、生命（細胞）が存在しなくても、発酵のプロセスの一部が進行することを初めて発見した。
酵素について、酵素栄養学という立場で最初に研究した学者が、米国のエドワード・ハウエルです。
ハウエルは、人が一生のうちで使用できる酵素（潜在酵素）には限りがあり、成人以降は年齢を重ねる度に体内で生成できる潜在酵素はだんだん少なくなることを提唱しています。
そこで、食物から食物酵素をたくさん摂ることで、体内の潜在酵素の使用料を減らせば、より健康的で老化の進み方も緩くなり寿命も伸びる旨の主張をしています。目から鱗が落ちる内容で驚きでした。
ハウエルの主張は、「キラー・フード（あなたの寿命は「酵素」で決まる）」という本で紹介されています。この本の内容をベースにハウエルの主張する酵素栄養学についてまとめてみます。
ヒトの体内にある酵素は、いろいろな種類がありますが、基本的には食物を消化し、消化された栄養分を各細胞に運び、細胞の新陳代謝を行っています。ハウエルは、酵素を大きく代謝酵素と消化酵素の二種類に分けています。
◇消化酵素
消化を司る酵素は現在発見されているもので２４種類しかありません。代表的な消化酵素の種類は次です。食物を糖、タンパク質、脂質に分解する酵素です。
・アミラーゼ ・・・唾液、膵液に含まれ糖を分解
・プロテアーゼ・・・胃液や腸液に含まれタンパク質を分解
・リパーゼ ・・・体内全体に含まれ脂肪を分解
◇代謝酵素（消化酵素以外残りの千種類以上の酵素）
ハウエルの主張で最も重要な事は、消化酵素と代謝酵素、大きく二種類に分けた体内にある酵素は、生きている間、常に作らていく（これを潜在酵素と呼んでいる）が、潜在酵素の量は無限ではなく、限度があるということです。
ヒトを含めた動物の体内で、一生の間で作られる潜在酵素の量は決まっていて、潜在酵素が尽きた時、寿命が来る、というものなのです。
人間が高齢化すると病気になりがちになるのは、潜在酵素の不足が大きな原因の一つだと主張しているのです。
ハウエルが調査した結果、若者と高齢者の間では、体内酵素の量が明らかに高齢者の方が少なく、酵素の種類によっては３０倍若者の方が多いケースもあったそうです。老化の主要因が体内酵素の減少と主張しています。
従いまして、消化酵素や代謝酵素を、若い頃に平均以上に使用すると病気になりやすく、寿命が短くなる、とも主張しています。スポーツ選手が引退後休息に体力が衰えることにも通じているのかも知れません。
ところが、人間と異なり野生の動物は、感染症を除けば人間のように成人病等の病気でなくなるケースは少なく寿命もほぼ一定なのは何故なのか？、と疑問を投げかけています。
これに対するハウエルの回答が、食物酵素の存在です。
食物酵素とは、野菜や肉などの食物に含まれる酵素のことで、ハウエルは体外酵素とも呼んでいます。
この食物酵素の使用形態の違いにより、人間と動物の健康、寿命に違いが出てくると主張しています。
食物酵素については、次の記事でご紹介します。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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