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「むかし試した古典技法の話」Vol.7-ドライコロジオンの作り方5- by K

みなさんこんにちは。カロワークスのKです。
ついこの間10月に入ったばかりの記事を投稿したような気がしていますが、今回11月に入ったばかりの記事を投稿しています。。
もうあと2ヶ月弱で今年が終わるのだそうで…前回の記事でもこのような話題ではありましたが、時間の流れが速すぎて恐ろしくなってしまいます。
最近は一気に気温も下がりましたので、体調にも一層気をつけて日々励みたいですね。

さて、今回もドライコロジオンプロセスの制作についてのお話をさせて頂きます。
前回はコロジオンの塗布の方法についてのお話でした。

コロジオンを塗布した後は、すぐに”銀浴”という工程に入ります。
アナログでの写真制作に縁がないと耳慣れない言葉かもしれません。
ここでの銀浴は硝酸銀の溶液にコロジオン板を浸ける作業を指します。
この工程によって、硝酸銀がコロジオンの孔の中に入り込み、板に感光性を持たせることができます。
コロジオン塗布後、膜面は徐々に固まり始めます。板を傾けてもコロジオンが流れないことを確認できたら、いい具合に固まってきた証拠です。
また、画像に影響のない四隅のコロジオンが厚い部分(塗布の際に、余ったコロジオンを流した角部分が厚くなりやすいです。)を軽く親指で擦るように触ってみましょう。少しでも固まってきたことが確認できたら良い頃合いです。
固まりすぎてしまうとコロジオンの孔が閉じてしまい、感光性を持たせることができなくなってしまいます。
また、コロジオンが緩い状態のまま銀浴の工程に移ってしまうと、液の中でコロジオンが崩れ、剥がれ落ちてしまいます。
これまでしっかり板を作製しても、台無しになってしまう瞬間なので慎重に確認しましょう。

当初はバットに硝酸銀液を張り、板を浸けることで銀浴を行っていましたが、滑らかに入水させることが難しく、ムラの原因となってしまいました。
そのため、なるべくムラを作らないように銀浴専用のケースを使用することにしました。
下図のような木製の箱で、中には硝酸銀溶液のタンク(ガラスやアクリル製の容器)が入っています。
中央から出ている透明な細い板は先がT字になっており、
そこにコロジオン板を引っかけ、固定する形でゆっくりと入水させることが可能です。

スクリーンショット 2020-11-03 101007

[THE DRY Collodion process P17 図版]

銀浴には1.065g/cmの硝酸銀液を使用しました。
入浴の際には、途中で止めずに素早く全体を浸し、そのまま1分ほど置きます。途中で止めてしまうと、境界線のようなムラが出てしまいます。
その後一度水面からあげて表面を確認します。油が滑面を通ったように、液が筋状に流れていたら、銀浴が不足しているのでもう一度浸します。
しばらくすると、筋が消えて全面的にコーティングされたように変化します。その状態を確認したら引き上げます。
ウェットコロジオンプロセスであれば、この時点で急いで撮影用のホルダーに板を入れ、急いで撮影に行くという流れになりますが、ドライコロジオンプロセスでは焦る必要はありません。
蒸留水で2,3度流し、蒸留水を張ったバットにつけて2分間揺らしながら洗います。

水洗バットから取り出し、もう2,3回蒸留水をかけたのち、1分間給水紙を敷いた上に立てかけ水を落とします。
その後タンニン溶液を張ったバットに入れ、1分間揺らして浸けます。ここからタンニンコーティングの工程に移ります。
タンニンの量が多いほど影も濃くなるので、風景などコントラストが高い時、光が鮮やかな場所での撮影を行う際にはタンニンの量を減らしても良いでしょう。
以下はあくまでも基準のレシピですが、制作実験では風景が中心だったため、500mlにつきタンニン12gほどでコーティング液を調合しました。

●タンニン溶液
タンニン…16,4g
蒸留水…500ml
アルコール…5ml

蒸留水にタンニンを溶解し、2回コーヒーフィルターにかけ、その後アルコールを足したものを使用します。

最後に一度だけタンニン液を流し、下引きを乾燥させた時と同じように立てかけて乾燥させます。
完全に乾燥するまで2時間はかかりますが、表面からではなく、裏面からドライヤーを遠くから当てることで乾燥を早めることができます。
ホコリが舞うのを防ぐため、しばらくは自然乾燥で落ち着かせるのが望ましいです。
乾燥したタンニンプレートは光沢があり、手触りが滑らかになります。
これはアナログ写真”あるある"と言ってよいと思われるのですが、ダークバッグでホルダー等に入れ替え作業をする際、プレートの裏表がわからなくなってしまうことがあります。
シートフィルムでもよくやってしまっていたのですが、その場合フィルムのフチのギザギザとしている部分(ノッチコード)を触って判別が可能です。
しかし、自作の感光版ではわかりやすい目印をつけられず、何度か撮影を失敗したこともありました。
そのためドライコロジオン板は、滑らかで手触りが良い方が表で、裏面は大抵下引き処理の名残であるゼラチンが付着しているため、ぺたぺたとしていることを覚えておくと、その感触で判別ができるようになります。
この判別法もなんともアナログといいますか、これだけに限らず手先の感覚に左右される工程が多い古典技法ですが、たまにはシステマチックな感覚から離れてみるのも良いかもしれないな、と思います。

次回はいよいよ撮影のお話に入ります。どうぞよろしくお願いします。

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