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《写真の保存修復を考えてみた vol.7》~写真の種類と特徴6~ by タケウチリョウコ

今日11月10日の誕生花は「ブットレア」です。花言葉は「魅力」「恋の予感」だそうです。
木々の紅葉も楽しめる良い季節になりました。「恋の予感」を感じながらウキウキ過ごしたいものです。
こんにちは。タケウチリョウコです。


本日は「写真の種類と特徴」の最終回となる【カラー写真】編です。

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私が物心ついた頃はすでにカラー写真で溢れていました。家族写真と言えばカラー写真ばかりです。
祖父が丁寧にアルバムを作って残してくれていました。トップ画像の写真がその一部です。

「カラー写真」と一言で表してしまいましたが、その種類は様々です。
技法としては前回記事にお話をしました銀塩写真にも含まれます。プリント、ネガフィルム、ポジフィルムと様々です。
Vol.5の記事でも紹介したゴム印画もカラー写真と言えば、そうです。
そして現在のデジタルカメラや携帯電話で撮影した写真もカラー写真ですね。


カラー写真の定義を「『写真用語辞典』(写真工業出版社) 1976」 より抜粋します。

被写体の色と明暗の調子を再現する写真。被写体からの光と同じ波長成分の再現をはかる直接法(リップマン法など)もあるが、実用されたのは、3原色の理論による加色法か減色法の3色写真である。
現在一般的に実用されるのは、シアン、マゼンタ、黄の色材により色画像をつくる減色法カラー写真である。(以下省略)

写真を学術的に説明すると上記のような説明になります。3原色の理論で表現された写真はカラー写真と言っていいのでしょう。
ここではプリントにフォーカスをして、その種類と特徴について探っていこうと思います。

カラープリントも種類が沢山あります。色再現の原理や材料、生産元の製造方法や処理工程によって、その特徴も変わってきます。
下記に代表的な技法とその解説をご紹介します。


◾️ダイ・トランスファー・プリント Dye transfer process (1950年代~1990年代)

通常カラー写真を三色分解して、画像をレリーフでつくったマトリクスと称される支持体に染料を染み込ませ、専用の紙などに転染してカラー写真をつくる方式。クリアな発色と保存性にすぐれているとされ、カラー作品のオリジナル・プリントを制作する技法として使われたが、公害問題が発生し現在は行われていない。
*東京都写真美術館『写真の技法解説』引用


◾️銀色素漂白方式印画 Silver dye breach print (1960年代末~現在)

カラー・ポジから直接にカラー印画をつくる方式の総称で、これまでは、1963年にスイスのチバガイギー社が開発した商品名である「チバクローム・プリント」と通称されていました。 色素をあらかじめ含んでいる三つの感光乳剤層をもつ印画紙で、補色にあたる部分を漂白してカラーの画像をつくります。光が全くあたらなかった余白は黒くなってしまいます。
*東京都写真美術館『写真の技法解説』引用


◾️発色現像方式印画 Chromogenic print (1940年代~現在)

カラー・ネガからカラー印画をつくる方式の総称で、これまではコダック社の商品名である「タイプCプ リント」と通称されていたものです。発色剤(カプラー)を含んだ感光材料を三層にした印画紙で、現像をする過程で発色させてカラーの画像をつくるものです。
*東京都写真美術館『写真の技法解説』引用


◾️拡散転写方式印画 Diffusion transfer process (1950年代~現在)

エドウィン・ランド(米)が、1947年に発明した「インスタント写真」の方式の総称。この原理にもとづき、 現在はアメリカの「ポラロイド」、富士フイルムの「フォトラマ」などの製品があります。
*東京都写真美術館『写真の技法解説』引用


技法説明はGeorge Eastman Museumが公開しているYouTubeチャンネルを。

【主な劣化】
黄変:硫化や酸化によって画像が黄色や茶褐色に変色する現象。
退色:画像の濃度が低下する現象。
破損:破れや変形が生じ、画像が損傷しているもの。
亀裂:湿度の変化によって画像層が膨張と収縮を繰り返し生じる。
カビ:カビが画像に付着し、画像の欠損を引き起こす。

カラー写真の代表的な劣化は退色です。光の影響を受けやすく、早いもので10年もせずに画像が消えていくものもありました。
プリントとして安定した画像を保持できているのかと言えば、決してそうでもありません。その材料や生産元の製造・処理工程に依存するところが多くあります。そのため、どの印画紙でプリントされた写真であるのかを見極める事が重要です。
1950~1980年頃は世界中の企業が新しい製品を開発し、激しい技術革新がありました。そのため種類が多く、今では手に入らないものもあります。
そして印画紙のレシピも知りたいところですが企業秘密の部分が多く、さらには多くの企業がこの事業から撤退しているため詳細を知る事が難しいのが現状です。

*参考資料:
『Lifetime of Color Photographs in Mixed Archival Collections』, Ann Fenech, UCL Bartlett School of Graduate Studies Center for Sustainable Heritage, 2011
『銀塩プリント材料とその画像保存性』, 梅本眞著, 日本写真学会誌81巻1号, 2018年

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さて次回はコーナーが変わり「写真の劣化」について探っていきます。

今回記事までは、それぞれの技法による劣化を簡単にご紹介しました。
次回はなぜ劣化が起きるのか?その理由や事例を、私が所有する写真などを参考に掘り下げていきたいと思います。
それでは次回またお会いしましょう。


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