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《写真の保存修復を考えてみた vol.21》~写真保存修復の道具(手袋編)~ by タケウチリョウコ

今日4月5日の誕生花は「イチジク(無花果)」です。花言葉は「子宝に恵まれる」「実りある恋」だそうです。
新年度となり気分も一新!仕事モードにギアを入れ替えようと思いましたが、今日は「恋」に縁がある日のようです。桜を見ながら一息ついて〜春うらら〜を満喫しても良いかもしれませんねw
こんにちは。タケウチリョウコです。

本日は、写真の保存修復時に使用する手袋に注目をしていきます。

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写真を取り扱う時に一番最初に使用する手袋!(一番最初に注目すべきでした~w)手袋の素材も沢山ありますので、手袋の選択と使用方法について考えていきたいと思います。実際のところ写真の保存修復の分野では、手袋を使うor使わないという議論もあります。
手袋を使わず素手で取り扱う方々の考えに下記のような理由があげられます。

・素手の方が感触や力加減を正確に感じるため、安全に取り扱うことができる
・よく洗浄し清潔に保った状態であれば危険でない
・フィルムや薄い紙焼き写真は素手でないとハンドリングが難しい
etc...

確かに納得の内容です。正直なところ、取り扱い方法は所蔵者の意向によって変化して然るべきものです。
また何度も繰り返しになりますが、写真の保存修復の分野において、取り扱い方法の基準やマニュアルがありません。よって何が正しい、正しくないと断言できないのです。
しかし筆者はこう考えています。
写真は化学反応により画像が形成されたものですから、人間の手から出る水分や窒素化合物により、ある程度の影響を及ぼすため手袋は使った方が良いと思っています。
その影響はすぐに引き起こされるものではありませんが、実際に素手で写真画像に触ったことにより指紋の跡にそって銀鏡が生じている例などもあります。

『文化財としてのガラス乾板』p124の図より

では、どのような手袋を着用すれば良いでしょうか。
手袋の素材には布製やビニル製、ゴム製があげられます。

写真業界では長く布製の手袋が使用されてきた印象がありますが、保存修復の現場では医療用のニトリル手袋の使用率が多く、私も使用しています。
色は青、白などがありますが、汚れや資料の破片などすぐ探せるよう「白」を好んで使用しています。

医療用のニトリル手袋が選ばれている理由には、下記のような理由があげられます。

・人体に使用しても問題ない素材であれば写真画像への影響も少ないという考え
・ゴム製で指にフィットするので布製に比べハンドリングや感触などが素手に近い感覚で取り扱える
・使い捨てタイプなので常に清潔な状態をキープできる
etc…

最後の理由はSDGsを考えるべき現代において、ちょっと良い理由とは言えませんが…。
このような理由から、ゴム製のニトリル手袋が広く使用されている印象です。

そして出来ればパウダフリーのコンスターチなどを含まない手袋が良いと思いますが(写真作品に余計な物質の付着を防ぐため)、ゴムアレルギーの方もいらっしゃるかもしれませので、もし写真作品を取り扱う場合はお身体に無理がないよう対策や布製の手袋を使用するなどの選択をされてください!!

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それでは、またnoteでお会いしましょう。


タケウチ蛇足memo

トップ画像は曽祖父の絵葉書の一枚です。
1910年のブリュッセル万国博覧会で購入した際の一枚だと思われます。
春らしいカラフルな絵葉書だな~っと思いました。

private collection (front)
private collection (back)

ふっと裏を見てみると、「Union Postal Universal」の文字。
お恥ずかしながら…、今の今まで知らなかったのですが、「万国郵便連合」という機関があるのですね。

ちょっと調べてみると、二番目に古い国際連合の専門機関だとか。
1874年10月9日、万国郵便条約によって設立され、本部はスイスのベルンにあるそうです。
日本が加盟したのは1877年6月1日のことで、「6月1日」と言えば「写真の日」と最初に思う筆者なのですがw
この日は「万国郵便連合加盟記念日」でもあるそうです。


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