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【息ぬき音楽エッセイvol.25】Motoramaと肋骨レコード by 村松社長

みなさまこんにちは。カロワークスの村松社長です。
爽やかな初夏の風を感じる日々もつかの間、なんか梅雨が来るっぽい不穏な気配がしてきましたが、皆さまお元気でお過ごしでしょうか。
実はまた番外編で切り抜けようかと考えたほどちょっとバタバタしているのですが、いくらなんでも社長が3回続けてお茶を濁すのは忍びない…ということで、今回はずっと温めていたテーマを蔵出ししようと思います。



社長には長らく好きな音楽ジャンルがいろいろとあるのですが、ロシアのポストパンクもその一つ。
Human Tetris、Ploho、Buerak、Холодный звонок (Holodniy Zvonok)、небо над головой (nebo nad golovoy)、Кофе (Coffee)などなど英語やロシア語、新旧たくさんのバンドがあるのですが、ジョイ・ディヴィジョンなどから影響を受けたような少しの暗さと、心に刺さるメロディアスな曲調が共通しているところでしょうか。
ロシア民謡しかり、ロシア人のメロディーセンスは日本人と似ている気がします…。

Human Tetris「Things I Don’t Need」2010

небо над головой「Я хотел быть космонавтом」2020

Ploho「Закладка」2019

なかでもロシアにとどまらず、ヨーロッパやアジアでも人気なのがMotoramaというバンド。ロシアのロストフ・ナ・ドヌー Rostov-on-Don
出身で、2019年には来日もしています。(関係ないですが初めて聞いたよ、ロストフ・ナ・ドヌー)

多くの人がそうかもしれませんが、社長も2010年に出たアルバム「Alps」というアルバムですっかりハマってしまったクチでして、特にこの曲〜!
ちょうど先週までの爽やかなお天気にぴったりじゃありませんか…。

Motorama「Wind In Her Hair」2010

さて、ここまで読んでいただいたみなさま全員が考えていることと思いますが、ロシアは現在戦争の只中にあります。
つまりウクライナや周辺国はもちろんのこと、上にあげたようなロシアのバンドがいま作る音楽もまた、戦時下真っ只中の音楽であると言えます。

ロシアと音楽を考える上で忘れてはならないのが、肋骨レコードの歴史。テレビ番組や書籍、展覧会にもなっているのでご存知の方も多いですよね。
1940年代から1960年代、当時のソ連で密かに作られ流通していた、X線フィルムを再利用したレコードのことで、X-Ray AudioやBone Musicとも呼ばれています。病院から格安で手に入れた撮影済みのX線フィルムを使っているので、レコード盤に肋骨などの人間の骨格がうっすら見えるわけです。

The x-ray pressing of Ella Fitzgerald’s Lullaby of Birdland. Photograph: Paul Heartfield

当時ソ連では音楽の流通が完全に国によってコントロールされており、「お国推薦」の音楽しか生産できない状況でした。アメリカやヨーロッパの音楽はもちろんのこと、国内でも政府の承認を受けられない歌手は公式に録音ができなかったそうです。
見つかると禁固刑…という厳しい監視のなか、若者たちはコートの中にレコードを隠して、すれ違いざまに受け渡しをしたとか。

現在、戦時下で音楽を作り続けている人たちに深い尊敬の念を感じると同時に、社会的にも精神的にも辛い状況のなかで、人間はどんな音楽を生み出したい・聴きたいと思うのか、明日は我が身…という気持ちも込みで考えてしまいます。

社長はもちろん断固として戦争反対なので、いますぐ終わって欲しいですし、今回ロシアが行っていることには大変な疑問と怒りを感じます。ロシアに関わるものは見たくも聴きたくもない、という方がいるのもわかります。
しかしながら、Motoramaを始めとするロシアのミュージシャンにも数多くの誹謗中傷などがあったと聞いて、ちょっとそれは違うんじゃないかな…と悲しくなりました。

社長も早くロシアのバンドを激推ししたいので、一刻も早く平和な日々が戻るように祈ります。それではまた次回!


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