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残り物には懺悔がある | 毎週ショートショートnote

その日が憂鬱で仕方なかった。

1週間前から告知されていた体育の授業。ペアを組んでのダンス練習だ。

「今日の出席人数は35人か。ペアは好きに組んでいいぞ。
1人残った人は先生が一緒になるから手を挙げて」

私はこの先生が大嫌いだ。

生徒たちが2つのまとまりに収束する中、私は残された。
17組が完成し、あぶれた私はおずおずと手を挙げる。

「お、絵里か。悪いな。じゃあ先生と一緒にやろう」

【残り物には懺悔がある】

周囲から失笑と侮蔑の視線が襲う。目の前が滲んで揺れる。
私はその場から逃げ出したくなり校舎に目をやった。

その時、校舎から一人の女の子が私めがけて走ってきた。

香澄だ。

ダンス練習が発表された日から彼女は高熱で学校を休んでいた。
私の目の前で立ち止まり、両ひざに手をつき肩で息をしながら香澄が言う。

「私は絶対に絵里とペアを組むって決めてたんだ…!
ずっと休んでてごめんね」

残りものに懺悔なんて…しなくてもいいんだよ。
ほろほろと涙がこぼれた。

(410文字)


たらはかにさんの企画に参加させて頂いております。

お題はこちら。

#小説 #ショートショート #毎週ショートショートnote #残り物には懺悔がある



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