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メディアリテラシー:信頼性のある情報社会を築くための鍵


はじめに

 現代社会では、情報が簡単にアクセスできる時代になりました。インターネットとソーシャルメディアの普及により、情報を入手する手段はますます多様化しています。しかし、一方で、誤った情報やフェイクニュースが広がりやすくなり、信頼性のある情報を見極めることが難しくなっています。そこで、本記事では、フェイクニュースの広まりとその影響について考察し、メディアリテラシーの重要性を理解することで、信頼性のある情報を見極める力を身に付け、メディアリテラシーの向上に向けた具体的なアプローチについて解説します。

第1章:メディアリテラシーとは何か?

 メディアリテラシーとは、情報を適切に理解し、判断し、効果的に使用するためのスキルや能力のことを指します。これは、単に情報を受け取るだけではなく、情報の信頼性や偏りを見極めることができる能力を含みます。

 Wikipediaは固有的なメディアリテラシーを以下のように定義しています。

メディア・リテラシーとは、メディアの機能を理解するとともに、あらゆる形態のメディア・メッセージを調べ、批判的に分析評価し、創造的に自己表現し、それによって市民社会に参加し、異文化を超えて対話し、行動する能力である。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 広義のメディアリテラシーには、固有の意味のメディアリテラシーだけでなく、情報リテラシーやニュースリテラシー、デジタルリテラシーも含まれる。メディアリテラシーを持つことは、個人だけでなく社会全体の持続的な発展にとっても不可欠です。

広義のメディアリテラシー

第2章:フェイクニュースの脅威

1.1 フェイクニュースの定義

 フェイクニュースとは、事実に基づかない情報や意図的な誤情報を含む報道内容のことを指します。意図的に誤った情報を拡散し、人々の意識や判断を歪める手法の一種でもあります。これは、政治的な目的で利用される場合もあり、社会の不安を煽ることで混乱を招くことがあります。フェイクニュースは、ネット上で迅速に拡散されるため、その被害は大きく、社会の信頼性や結束を弱めるリスクがあります。

1.2 フェイクニュースの現状

 ソーシャルメディアやオンラインニュースプラットフォームの普及により、フェイクニュースは爆発的に広まるようになりました。情報の拡散が容易になった反面、信憑性を検証する仕組みが追いつかず、未確認の情報が拡散されることが増えています。

1.3 フェイクニュースの事例と影響

 フェイクニュースは社会に深刻な影響を及ぼします。虚偽の情報に基づいて政治的な判断がなされることや、企業や個人の評判が毀損されることなどが挙げられます。

アメリカのドナルド・トランプ前大統領は、新型コロナウイルスの治療に消毒剤の注射が有効か研究するよう提案した

 また、健康に関する誤った情報が拡散されることで、人々の生活や安全にも悪影響を及ぼす可能性があります。2020年初頭から広がったCOVID-19(新型コロナウイルス)パンデミックは、フェイクニュースの拡散に大きな影響を与えました。疫学的な知識が不十分な中で、偽の治療法や予防策に関する情報が急速に広まり、混乱を招きました。

 例えば、消毒剤の摂取や紫外線の使用、特定の薬剤の効能など、科学的根拠のない情報がソーシャルメディアを通じて広まりました。これらの偽情報により、多くの人々が不適切な行動をとる可能性が高まり、重篤な健康被害が発生しました。

 さらに、パンデミックに関連する政治的な陰謀論や偽の死亡率や感染者数に関する情報も広まりました。2016年のアメリカ大統領選挙前、ワシントンD.C.にあるピザレストラン「コメット・ピンポン」が、フェイクニュースの標的となりました。インターネット上で拡散された陰謀論によれば、ヒラリー・クリントン元国務長官が、同店を拠点とする児童売買のリングを運営していると主張されたのです。

児童性的虐待に関わっているとされたピザ店、コメット・ピンポン

 このフェイクニュースは、ハッキングされた民主党全国委員会の電子メールがインターネット上に流出したことをきっかけに広まりました。一部の陰謀論者や極端な保守派メディアが、そのメールの内容を歪曲し、ピザレストランに対する根拠のない告発を行いました。

 結果として、陰謀論が拡散されたことで、数々のネットユーザーが店に対して脅迫や攻撃を行い、店舗や従業員に対して深刻な被害をもたらしました。この事件は、フェイクニュースが現実の世界に深刻な影響を及ぼす例の一つとして挙げられます。

 これらの情報は、社会の信頼を揺るがし、疑心暗鬼を生み出し、公衆衛生の対策に対して混乱をもたらしました。

第3章:メディアリテラシーの向上に向けて

3.1 教育への導入

 学校や大学でのメディアリテラシー教育が重要です。情報の正確性を評価する方法や情報源の確認方法を教えることで、学生たちが情報を扱う能力を向上させることができます。

 教育機関と協力し、カリキュラムにメディアリテラシーを組み込むための指導案や教材を開発することも大切です。学年や年齢に応じた適切な教育プログラムを設計し、学生たちが情報リテラシーのスキルを習得する手助けをします。

3.2 フェイクニュースの特徴の理解

 フェイクニュースは、意図的に誤った情報を拡散することを目的とした情報です。これらの情報は常に人々の感情や意見を刺激し、誤った判断や行動を促すことがあります。フェイクニュースを見抜くために、以下に挙げる特徴を理解することが大切です。

フェイクニュースの特徴
  • 根拠のない主張
     フェイクニュースはしばしば根拠のない主張を含みます。信頼性のある情報は事実やデータに基づいており、根拠のない主張や根拠が不明瞭な情報は慎重に見る必要があります。例:「特定のサプリメントを摂取すると、がんが治癒する」と主張する記事がある場合、その根拠や科学的な裏付けを確認する必要があります。信頼性のある医学的な情報や研究結果がない場合、この情報はフェイクニュースの可能性が高いです。

  • 偏った情報の提示
     フェイクニュースは情報を歪めることで特定の意見や立場を頻繁に強調します。事実を選択的に提示することで、読者の意見を操作しようとします。例:政治的な記事である場合、「政党Aの政策は経済を壊す」と主張する一方で、「政党Bの政策は経済を活性化させる」という対立する情報を無視している場合、この記事は偏った情報を提供している可能性があります。

  • 匿名の情報源
     フェイクニュースは、情報の信頼性を示す明確な情報源を提供しないことがよくあります。匿名の情報源を引用している場合は、情報の真偽を疑う必要があります。例:匿名の「政府高官」や「業界関係者」といった情報源が、特定の政治的なスキャンダルについての情報を提供している場合、その情報源の信頼性を確認することが重要です。

  • 疑わしいウェブサイトやソース
     多くの場合、フェイクニュースは信頼性の低いウェブサイトやソーシャルメディアの投稿から拡散されます。信頼性のあるメディアや情報源ではなく、怪しいウェブサイトや情報源を利用している場合は注意が必要です。例:見覚えのないウェブサイトや、信頼性の低い情報を拡散している個人のソーシャルメディアアカウントからの情報は、真偽を疑う必要があります。

  • 情報の拡散速度
     フェイクニュースは時折驚くほど速く拡散します。このような急速な拡散は、情報の信頼性を確認する前に拡散されてしまう可能性を高めます。例:事件が発生したばかりの時点で、「目撃者による衝撃的な映像」として拡散される動画がある場合、情報の正確性を確認する前に拡散を控えることが要となります。

 これらの特徴を理解し、情報を慎重に評価することで、信頼性のある情報とフェイクニュースを区別するスキルを身につけることが重要です。メディアリテラシーの向上を通じて、健全な情報社会の構築に寄与しましょう。

3.3 偽情報の拡散を抑制する

ニュースをファクトチェックする 5 つの方法

 ファクトチェック機関や専門家の役割は重要です。フェイクニュースの拡散を防ぐために、事実確認を行い、信頼性のある情報を提供することが必要です。これらの機関や専門家の存在と活動を広く知らしめることで、人々が情報を検証する意識を高めることができます。
 
 個人の行動も重要です。情報に感情的に反応することなく、情報を拡散する前に、冷静に情報の真偽を判断し、ファクトチェック機関が運営する事実確認サイトを活用し、拡散する情報が事実に基づいているかどうかを確認します。

 また、拡散する情報が信頼性のあるメディアや公式機関から発信されたものかどうかを確認し、信頼性のある報道機関や専門家の意見を参照することで、情報の正確性を確保できます。一方、1つの情報源だけでなく、複数の信頼性のある情報源を参照して情報を検証する必要もあります。複数の情報源から情報が裏付けられる場合、その情報の信頼性が高まります。

まとめ

 メディアリテラシーは、現代社会において不可欠なスキルであり、個人と社会の発展を支える要素です。フェイクニュースの脅威に対抗するために、教育、フェイクニュースの特徴の理解、信頼性のある情報源の利用、拡散の抑制が重要です。メディアリテラシーを高めることで、健全な民主主義の構築と社会的な結束力の強化に寄与し、信頼性のある情報社会の実現を目指しましょう。

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