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人助けの話

今日、人助けをした。
と言っても、大したことではない。
暗い夜道で落とし物をした女性に声をかけて、二人で落とし物を探しただけだ。
その後、Twitterを見たら僕のことが書かれていた。
どうやら女性は同じ大学だったらしく、Twitter上で僕のことを人格者だとかカッコいいだとか言って褒めてくれていた。
高校以来恋人がいない僕にとって、その言葉自体はとても嬉しいものだった。
しかし、その子の言葉により、僕は高校の時の苦い思い出が呼び起こされたのだった。

僕は、高校の頃もしょっちゅう人助けをしていた。
困っている人を見かけたら放っておけない性分なのである。
と言っても、お人好しなのではない。
僕はただ、困っている人が直面している事件に興味があるだけなのだ。
どんな事件が起きて困っているのか、そしてそれをどう解決したらいいかに興味があるのだ。
そう、ミステリー小説の読み過ぎなのである。
とにかく、高校生なのにミステリー小説の探偵に憧れる痛い僕は日常的に人助けをしていた。

そんなある日、担任との二者面談があった。
別に悪行を重ねたからではない。
一年に一回あるただのイベントとしての二者面談である。
そこで、僕は担任の先生に「君は人助けしてて偉いね」と褒められた。
僕はその言葉を聞いた直後、大泣きした。

悔しかったのである。
僕にとって、人助けは趣味でしかないのに褒められて悔しかったのだ。
なんとなく、馬鹿にされたように感じた。
「レゴで遊んでて偉いね」と言われた気分だった。
もちろん、僕が捻くれていて穿った見方をしただけなのだろう。
しかし、だとしても僕は悔しかった。
だから泣いた。
人目も気にせず泣いた。

そんなことがあったからか、人助けしたことを褒められると僕は複雑な感情を抱いてしまうのである。
だから、今日助けた彼女が僕のことを運命の人か何かのように褒めちぎっているのを見ても、笑顔にだけはなれそうもないのである。

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