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感染呪術と遺伝子

突然ですが、皆さんはTRPGを嗜みますか?
TRPGとは何かは調べてもらうとして、僕はTRPGが好きです。特にクトゥルフとかシノビガミが大好きです。
そういったこともあって、人文学について興味を持ってたまに調べたりするんですよ。
今日は、その過程の中で知った感染呪術について再定義した後に、あえて科学的なアプローチで説明を試みたいと思います。

感染呪術とは?

感染呪術というのは、金枝篇の著者であるジェームス・フレイザーが定義した呪術の分類に関する言葉です。ちなみに金枝篇はクトゥルフのTRPG的には魔導書ですが、普通に図書館にありますしAmazonで買えます。

ここで、感染呪術についてWikipediaを見てみましょう(情報のソースとして些か信憑性に欠けるがそれはさておき)。

ジェームス・フレイザーは初期魔術の典型である「共感呪術」の一種として、一度接触したものあるいは一つのものであったもの同士は、遠隔地においても相互に作用するという「接触の法則」を提唱している。感染呪術ではその法則に基づき、ある個人に対してその着衣や、爪、髪の毛、歯などを呪術に用いることで、その元の持ち主に影響を与えられるか、影響を受けることができると考えられている[1]。

Wikipediaより引用

つまり、接触したもの同士は呪術的な繋がりが生じるという考えに基づく呪術のことを感染呪術と言います。
この呪術の例は色々とあるのですが、変わっているものに足跡を使うものがあります。
それは、呪いたい相手の足跡に釘を打ち込むことで相手の足を害するという呪術です。
この呪術では、足跡と足は接触していた(というか接触しないと足跡ができない)という過去に着目し呪術的な繋がりを見出しています。

類感呪術とは?

実は、感染呪術に対する概念として類感呪術というものが存在します。感染呪術とは対極をなすものであるこの呪術を類感呪術と言います。
例によって例のごとく、Wikipediaを参照すると以下のようにあります。

類似したもの同士は互いに影響しあうという発想(「類似の法則」)に則った呪術で、広くさまざまな文化圏で類感呪術の応用が見られる。

フレイザーによると、呪術の要素は、この類感呪術と感染呪術の二つに分類できるとされる。

Wikipediaより引用

つまり、似ているものには呪術的な繋がりが生じるという考えです。
例えば、お祓いや呪いで人形を使う場合はこれに当てはまります。人形と対象者を同一のものとみなし呪術的な繋がりを見出すことで行なっている儀式であるからですね。

つまり、感染呪術は「接触したもの同士に繋がりを見出す呪術」、類感呪術は「似ているもの同士に繋がりを見出す呪術」であると言えるでしょう。

感染呪術を再定義してみる

ここで、感染呪術を再定義してみたいと思います。このように考えた背景として、名前を使う呪術の存在があります。
世界には、名前を使う呪術が存在します。例えば、名前を知られることで呪術師や精霊から害を及ぼされるという考え方を聞いたことないでしょうか?魔術師が名前を名乗らないやつです。そう、カッコいいアレです。
名付けるという行為は、事物を型に当てはめて規定するという点で呪術的に重要な行為です。なので、名前に呪術的な価値が生じるのは自然なことであると言えるでしょう。

では、名前を使う呪術を分類するとしたら、感染呪術と類感呪術のどちらになるでしょうか?
率直に言ってしまうと、名前を使う呪術は感染呪術に分類されるというのが僕の結論です。
類感呪術が類似性に着目している呪術である以上、名前を使う呪術が類感呪術に分類されるのは違和感が生じますよね。であるならば、感染呪術の方が名前を使う呪術との親和性がある気がします。

そこで、僕は感染呪術を「一部から本体への繋がりを見出す呪術」と再定義しました。
髪の毛や爪、足跡。そのいずれにしても本体から分離した部分とみなせる物ですね。逆に本体について考えてみると、本体という物は髪や爪や腕や血や皮膚などの部分にわかれたパーツの集合体と見なすことができます。
このように考えた時、血や皮膚や髪といったパーツは本体を本体たらしめていたものと考えられます。
また、足跡などの生きていく上で世界に刻まれる痕跡というのも、その人の人生を語る上で外すことのできないパーツであると言えますよね。その人の辿った歴史の一部というのもまた、その人をその人たらしめている物であると考えられます。
このように考えると、名前というのは個人を個人たらしめている最たるものでないでしょうか?
そう考えると、名前を使う呪術が感染呪術に含まれるのは当たり前な気がします。

感染呪術の応用

せっかく感染呪術を再定義したので、感染呪術の応用を考えましょう。
ここで僕が目を付けたのは遺伝子です。
「髪の毛や爪の遺伝子のことか?だったら元々接触してただろ!再定義した意味がないじゃないか、良い加減にしろ!」という声も聞こえてきますが少し落ち着いてください。僕が目を付けたのは遺伝子そのものです。

ここで、遺伝学について少しだけ説明をします。
一般的には混同されていますが、遺伝子とDNAというのはかなり違う物です。
まず、遺伝子というのは情報です。例えば、「皮膚を作ってください」という情報があった時に、この情報のことを「皮膚の遺伝子」と呼びます。つまり、情報である遺伝子は物質としての実態がないのです。
それに対して、DNAというのは遺伝子を記録している物質の名前です。デオキシリボ核酸という分割払いしてそうな名前がDNAの正式名称なのですが、これは物質名です。酸素、二酸化炭素、メタルメルカプタン(都市ガスに付けられているニオイ成分)、テトロドトキシン(フグ毒のアレ)、DNAと並べても問題ないただの物質名です。
つまり、本に例えると紙やインクがDNAにあたりそこに記されている情報が遺伝子となります。

話を戻すと、僕はこの遺伝子が感染呪術に使えるのではないかと考えました。名前という概念的なものが呪術に使えるのなら、その人の身体を作るための情報である遺伝子も呪術に使えると思いませんか?
むしろ、遺伝情報の方が髪の毛などよりもダイレクトにその人を指し示せる訳なので、対象を間違えるわけにはいかない呪術的な儀式において重宝されるのではないでしょうか?デスノートも名前と顔を思い浮かべる方式にしてましたけど、遺伝子じゃ申請されませんかねアレ。個人を指し示す点でめちゃくちゃ優秀だと思いますけど。
また、このように考えると「一族郎党にかけられた呪い」に対して一つの説明がつきます。
この呪いは、一族に特有の遺伝子に反応して害を及ぼす物なのではないかという解釈です。
実は、実際にこのような機能を持つ物質が存在します。制限酵素と呼ばれる物質は、ウイルス等の遺伝子を検出し破壊することで知られています。
このことを踏まえると、呪いというのは制限酵素のような物質、又は制限酵素を持つ生物であると考えられます。
これを無理矢理クトゥルフ的に捉えてシナリオを書くなら

  • インスマス顔は遺伝子疾患である。地球外の生物から流入した遺伝子は、たまたま地球の生物の制限酵素により改変されてしまうものであり、その結果としてインスマス顔が生まれる

  • 山に降臨した邪神により齎された呪いは制限酵素のような物であり、DNAを破壊されることで遺伝子疾患を引き起こす

といったシナリオが生まれるのではないでしょうか?

終わりに

皆さん、いかがだったでしょうか?「長い!簡潔に言え!」ですか?おっしゃる通りです。ここまで約3100文字。原稿用紙8枚を書き切ろうとしています。いやぁ、長いですね。これだけの文章量が書けるのにどうして大学のレポートはいつまでも終わらないんでしょうね。
というかこれ書くの大変だったんですよ。最初は「これは自明である」とか「と考えられるであろう」とか書いていたのを最後で修正かけたんですよ。あまりにもとっつきにくすぎて。完全にレポートの文体でしたからねアレ。
それはさておき、これからも毎日投稿を頑張っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

ここまで読んでくださりありがとうございました!!

参考文献

Wikipedia (2023.11.9閲覧)
感染呪術 https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9F%E6%9F%93%E5%91%AA%E8%A1%93
類感呪術 https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E9%A1%9E%E6%84%9F%E5%91%AA%E8%A1%93

カクヨム (2023.11.9閲覧)
海野しぃる著 初めてでもよくわかるクトゥルフ講座 https://kakuyomu.jp/works/1177354054880900124/episodes/1177354054881171321

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