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言葉  尾崎喜八

  

  言 葉

私は言葉を「物」として選ばなくてはならない。
それは最もすくなく語られて
深く天然のように含蓄を持ち、
それ自身の内から咲いて、
私をめぐる運命のへりで
暗く甘く熟するようでなくてはならない。

それがいつでも百の経験の
ただひとつの要約でなくては――
一滴の水のしずくが
あらゆる露点のみのりであり、
夕暮れの一点のあかい火が
世界の夜であるように。

そうしたら私の詩は、
まったく新鮮な事物のように、
私の思い出から遠く放たれて、
朝の野の鎌として、
春のみずうみの氷として、
それ自身の記憶からとつぜん歌を始めるだろう。
                  (同)

尾崎喜八 おざききはち
明治二十五年、東京に生まれた。
白樺派の影響をうけて理想主義的立場にたち、
おだやかで平明な詩風を開いた。
詩集に『高層雲の下』『曠野の火』『空と樹木』
『高原詩抄』など。昭和四十九年、八十二歳で没した。
愛の詩集 鈴木亨編 偕成社

読んで頂いて、どうも有難うございました。

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