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たった1冊の本で小さなつながりを感じる

あ、やっと誰か1冊借りてくれたんだ。
うれしい。うれしい。飛び上がるほどうれしいよ。

ご近所とのつながりがほしくて「きんじょの本棚※」を開設したのが今年の2月。晴れた日は1週間に2,3回道路際に本を10冊ぐらい並べた本棚を出す。私の家は住宅街の人通りの少ない場所。今のところ本は1冊も借りられた様子がない。
(※本棚があるところなら、いつ借りても、返してもよい取り組み。町田市内を中心に今では240店舗もある。本棚の主は店主と呼ばれる)

こんなことやっても意味がないのかも、と心が折れそうになる。しかし、先日の店主交流会で出会った方が言っていた。
「私も、何か月か外に出してから、やっと人が本を借りていったのよ。はじめの頃は、『今、自転車の人が本棚をちらっと見ているな』とか。今ではご近所の人が本を寄付してくれることもあるのよ。ここまで何か月もかかったわ。ゆっくりやってみたらいいのよ」とのこと。

「そうなんですね、あきらめずにやってみます!」

今朝は家の周りの草むしりをしていて、お隣さんに聞かれた。
「(道路前に出している)本棚どうしたんですか? この前Aさんと、これ何だろうねと話していたんですよ」
あ、見ている人いるんだ。そこで、「きんじょの本棚」の説明をし、「いつ返してもいいので、よかったら借りてみてくださいね」と答えた。

その会話があって、夕方本棚を見たら、1冊誰かが借りてくれた。
はじめて! やはりお隣さんだろうか?
たった1冊私の本が人に借りられただけで、こんなにうれしいなんて。
誰かと心のつながりができたよう。あきらめないでよかった。

子どもが大きくなると隣近所の人ともあまり顔を合わせなくなり、共通の会話がなくなっていた。お互いに何をやっているか、ほとんど知らない日々。
この本棚をきっかけに、また本の話題でも話せればよいな。
自分が読んだ本だから、どこがよかったかなどの感想も言いやすい。

言葉には出さないけど、案外近所の人に見られているのかも? いつも同じ本だと、見ている人も飽きてしまうかな。
小さなつながりがこの通りにも広がっていったら、と思うだけで、こんなにも心がワクワクしてしまう。

明日はどんな本を並べよう。
ほんのささいなできごとでも、私の心がぽっと明るくなる。


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