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Vol.47#挑め!Leading Article/缶パエリア許すまじ

今日のテーマは”缶パエリヤ”です。アメリカを中心に流行しているようですが…

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

英国人がスペインを訪れた回数は年間1500万回とのことで、次点のフランスに大差をつけスペインは英国人に最も人気のある旅行先となっています。英国人のスペインに対する想いは非常に強いものがありますが、その思いの強さの余りやや常軌を逸してしまう場合もあるようです。今回の話は最近アメリカを中心に流行しているパエリヤの缶詰の存在が許容できず、ディスり倒すというものです。日刊紙の社説に載せる内容なのかどうかはよくわからないですが、これはイギリス風のユーモアなのかもしれませんね。

こういう缶詰です 20分で調理可 なんと二人前30ポンド!

英国人のスペインへ愛を感じながら、読み進めていきましょう。


◎今日のLeading Article:No Can Do

Convenience is all very well, but paella in a tin is a step too far

Britons make about 15 million visits to Spain on holiday each year, twice as many as journey to France, the next most popular destination. About 300,000 UK citizens live permanently in Spain.

What attracts these huge numbers is not just the unholy trinity of sun, sand and sangria, but also the superb national cocina.

It is a myth that Brits on the costas insist on fry-ups and fish and chips; the vast majority prefer chorizo, churros and calamares. But the most celebrated Spanish dish, of course, is paella. Once tasted, an authentic paella Valenciana or paella de marisco is not easily forgotten.

The key word there is “authentic”, which is why El Paeller, a cook-at-home paella kit marketed by the Valencian chef Rafa Margós, can only be a poor imitation of the real thing. A very poor imitation, according to experts unlucky enough to have sampled it. Classic recipes require strict adherence, fresh ingredients and patient cooking for a reason.

Nonetheless, the cans are sadly proving popular, particularly in the United States. Yet, while it is permissible to explain an American consumer’s bad judgment on the basis that he might never have enjoyed the real thing, the kits are also selling well in Spain, where natives have no excuse: not even price, with the kits (broth and rice) retailing at £30 to serve two. Just as the abominable full English breakfast in a can experiment once traduced a British institution, so the Spanish are trashing their culinary heritage by indulging this fad.

There is nothing wrong with canned food per se.

Baked beans, tomatoes and varieties of soup all survive lengthy incarceration in tin-coated steel fairly well. Some flavours even prosper, with the contents maturing like vintage wine. As for paella, however, it beggars belief that such a proud country can subject its national dish to such a fate.

□解釈のポイント■■■

①unholy trinity /俗世の三位一体

聖なる三位一体(holy trinity)はそもそもはキリスト教の信条で、イエスキリストは神であり子であり精霊であるという考え方です。ただし、ここではunholyがつきます。聖なる〜の方ではない、つまりキリスト教と関係ない酸味一体という言い方です。

異国のまぶしい太陽、美しいビーチ、美味しいお酒の3つと世俗感たっぷりですね。そんなエキゾチックなスペインに英国人は夢中です。

ちなみに料理におけるholy trinityというとルイジアナ州の郷土料理(ケイジャン料理)における玉ねぎ、ピーマン、セロリです。ルイジアナ州はローマ・カトリックの強い地域であった事も背景にあるようです。日本でも知られているジャンバラヤなどもこのケイジャン料理の一つです。

② per se /〜自体

by itselfにあたるラテン語で、しばしば否定文と一緒に用いられ何かの性質自体の問題でないという意味になります。他にも問題があって、そっちが主だよという言い方ですね。

文中の内容に沿えば、この社説でディスっているのは缶詰自体ではなく神聖なレシピを冒涜し、国の文化たるパエリヤを缶に詰めてしまう事です。缶詰にも良いものはあるとして英国式朝食の缶詰を引き合いにだし奇怪な議論な展開されていきます。英国式朝食一式の缶詰の場合はさながらヴィンテージワインのごとく熟成によって風味を増すんだそうで。いまいち食欲が湧かないのは私だけではないでしょう。

③it beggars belief that/信じ難い

乞食のbeggarを動詞で使うと〜できないという意味になります。It beggars beliefで信じ難いになりbeggars descriptionで筆舌に尽くし難い。

大事な国の宝パエリヤを缶詰にするなんて信じられん!という感じですね。なんでここまで正統派パエリヤに肩入れするのかわかりませんが、そんだけ美味しかったという事でしょうかね。

■試訳

便利なことは結構だが、パエリヤの缶詰はやりすぎだ。

英国人の休暇でスペインを訪れる数は年間約1500万回。次点のフランスの2倍である。英国籍をもちながらスペインに永住する者も約30万人に達する。

これらの大人数を惹きつけるのは、何も太陽、砂浜、サングリアから成る俗世の三位一体だけではない。卓越した食文化なのだ。

英国人がスペインの港町で英国式の揚げ物、フィッシュアンドチップスを注文するという話は根も葉もない作り話。大多数はチョリソー、チュロス、イカを選択しているわけだが、もっとも賞賛を受けているスペイン料理といえば勿論パエリヤだ。一度味わったら正統派のバレンシア風パエリヤやシーフードパエリヤは容易に忘れ難いものだ。

そこでのキーワードは”正統派”である。バレンシア人のシェフRafa Margósが売り出している家庭で調理できるパエリアキット、El Paellerが本物の残念な模造品にしかならない理由がそこにある。不幸にも試食をしてしまった専門家によれば、この商品は実際非常に残念な模造品である。伝統的なレシピには厳密に内容に従う事、新鮮な材料、我慢強く調理する事が求められる。各々にちゃんと理由がある。

しかしながら、この缶詰がアメリカを中心に流行しているのだ。嘆かわしい事である。アメリカの消費者は本物を味わった事がないことを踏まえれば、分別がつかない事の説明ができるだろうが、なんとこのキットはスペインでも売れゆきが良い。スペインの地元民は言い訳のしようもない。価格でさえも言い訳にならない。スープと米の小売価格は二人前で30ポンドだ。かつての英国式朝食を缶詰にする忌まわしき試みが英国の慣わしを愚弄するものであったのと同様に、スペインはこの流行に流される事で自らの食の伝統を台無しにしている。

缶詰食品自体が悪いわけではない。ベイクドビーンズ、トマト、様々なスープは長い間ぶりき缶の中に閉じ込められても少しも劣化しない。中にはより豊かになる風味もある。中身がさながらビンテージワインのように熟成するのだ。しかし、パエリアについてはかくも高貴な国が国を代表する料理をそのような運命に委ねるとは信じ難い。

◇一言コメント:

タイトルの"No Can Do"はスラングでそいつは無理だという意味です。例によってこのCanに缶詰のCanがかかっているわけですね。

別段アメリカで何が流行ろうが、それがスペインのものであろうが英国人には基本影響がないと思うんですがね。なぜかパエリヤに対する極めて保守的な主張でしたね笑

缶詰の話を読んでいたら鯖缶買い忘れた事を思い出しました。我らが山形には是が非でも缶詰を用いなければならないNational Dish、”ひっぱりうどん”というものがあります。なんてことはない太めのうどん(乾麺)を大鍋で茹でて、鯖缶とネギ、鰹節、納豆、生卵を混ぜて作ったつけだれで食べる素朴なものですが、寒い時期に最高です。そして、その主役とも言える鯖缶は何がなんでも缶でなければならないです。

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