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”世界を良くするNGO”が暴走する時

年金ファンドや機関投資家に働きかけ株主の立場から企業と世界を変えようとするShareaction。Nestléが突きつけられた”行き過ぎた要求”とは。

🔹🔸イギリスの日刊紙から新鮮なニュース&トピックスをお届けします。国内メディアが扱わないニッチな情報や一癖も二癖もある英国目線を気軽に日本語で楽しみましょう。ポイントとなる単語は深掘りして解説してゆきますので、いつの間にか語彙力もアップしちゃうおまけ付です🔹🔸


◎”Confected Outrage(仕組まれた怒り)”

ShareactionというNGOが大手企業の株主総会を騒がせています。

彼らの手法は大企業の株主となっている年金ファンドの出資者や機関投資家にロビー活動をする事で株主の立場から企業行動を変えるというものです。その活動の対象は政治や環境だけでなく人々の健康に対する大企業の行動にも及びます。

今回ターゲットとなったのはチョコレート菓子大手Nestlé社。不健康な食生活や肥満と関連付けられる事や将来あるかもしれない規制のリスクなどもっともらしい理由で株主に働きかけ、株主総会で動議案件として検討を行う(①table)所にまで漕ぎ着けました。

極端な話チョコレート菓子だけ食べていたらバランスのとれた食生活にはならない事は繕い用のない(②sugar-coat)事実です。それは成分表示を読めば明らかな事であり、適度に楽しむ事が大前提です。ところが、Shareactionが突きつけたのは全体の売上に占める健康的な食品の比率を上げるという一元的な数値目標でした。ビジネスの前提を完全に無視した独善的なものと言えるでしょう。

Nestléとて世界的な大手企業であり、人々の健康に関する意識に疎いわけがありません。既に向こう6年間で健康的な食品の売上を5割増やす計画を掲げていましたが、Shareaction側は納得しません。企業全体の売上増が見込まれている事を織り込めば(③factor in)、その中で健康に良くない食品の売上も増えるので純減にはならないと反論したのです。

嗜好品であるチョコレートを作るビジネスをしている会社にチョコレートを作るなというのは些か度が過ぎた要求です。そんな要求がまかり通れば、適度に楽しむ事を前提とした商品は全て縮小しなければならない事になります。正しい目的の追求も、チョコレート同様に適度に行うのが最適解ではないでしょうか。

□本日のポイント■■■

①table/検討する、議題にあげる

議会のテーブルに載せる事から検討するという意味です。注意が必要なのは英国ではこの検討するという前向きな意味なのですが、米国では逆に棚上げするという後ろ向きな意味になってしまいます。英国では議場の中心にテーブルがあったのに対して米国の場合はテーブルは端っこに置かれており、それで逆の意味になったそうです。

🔳That the counterintuitive proposal was even **tabled **was the work of ShareAction,a campaigning charity
(試訳)この普通では考えられない提案がそもそも検討されたのは活動チャリティー団体、Shareactionの仕業だ。

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