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Vol.79#挑め!Leading Article/チェックの甘いプライベートジェット

今日のテーマは”チェックの甘いプライベートジェット”です。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

英国海峡を小型船舶でわたり不法入国する人々が政治問題となっており、現政権はその対応に四苦八苦しています。不法入国者数が過去最大を記録し更に世間の目が小型船舶に集中していますが、入国管理の抜け穴は小型船舶だけではないようです。
富裕層や大企業の経営者が利用するプライベートジェットで入国する人たちへの入国管理の甘さを指摘する報告書が公表されました。出発地や搭乗者の情報が”低リスク”と判断される場合、簡単な申請を行うだけでパスポートチェックや税関検査をせずに入国を許可する運用がなされており、その不公平さだけでなくテロリストや密輸犯罪者による悪用が懸念されます。
入国管理は国民の安全を守る防波堤で、公平かつ徹底して実施されるべきです。リスクが高低といった判断基準を介在させる事自体に問題があると言えるでしょう。

1度は乗ってみたい気持ちを隠さず、読み進めていきましょう。


◎今日のLeading Article:Small Jets

Like small boats, unchecked private flights should be a subject of concern

People are always trying to get into Britain, but not always legally. Those who risk their lives crossing the choppy waters of the English Channel tend to garner the most publicity when it comes to unauthorised entry. Indeed, their numbers have become a subject of the utmost political sensitivity. Rishi Sunak, who has declared small boats to be one of the five indices by which his premiership should be judged, will have been dismayed by figures showing that crossings since the start of 2024 have reached a record high compared with the same period in previous years. But there is another category of traveller that should be of concern — one as far removed from the desperate world of maritime people-smuggling as it is possible to get.

Every year thousands of private flights arrive at airports across the country — places like Biggin Hill in south London, a former RAF fighter station turned executive jet hub. Many of those who disembark will face none of the wearisome immigration and customs checks faced by scheduled and charter passengers.

These favoured few are spared if their flights are judged by Border Force to be “low risk” in terms of country of origin and passengers. By issuing the British authorities with a manifest before arrival, Gulf princelings, corporate suzerains and sundry wealthy foreigners are accorded a privilege closed to ordinary citizens of this country. This arrangement is unacceptable, not only because of its glaring unfairness but because of the risk that this route could be used to ferry in terrorists, other criminals, weapons and drugs.

The practice has come to light through the whistleblowing of David Neal, the former independent chief inspector of borders and immigration, who was sacked after publicising numerous defects in the country’s entry system. The Home Office, which manages Border Force, has been trying its best to minimise the fall-out from a clutch of reports authored by Mr Neal that lay bare its shambolic performance. Home Office officials attempted to neuter a report by Mr Neal on lax controls on business jet arrivals by redacting swathes of the document. This clumsy censorship served only to emphasise the scale of the problem.

Mr Neal’s report focused on London City airport, gateway to the nation’s financial centre. The former Royal Military Police officer disclosed that only a fifth of “high-risk” private arrivals were inspected. He rightly described this as a scandal. The Home Office said the disclosure was based on inaccurate information: a data error at London City had mislabelled low-risk flights as high-risk. This may account for some missed inspections but almost certainly not all. In any case, this low/high distinction is a red herring.Terrorists are not stupid. They know how to use assumed identities and third countries to evade detection. The revelation that hundreds of foreign nationals are swanning in and out of the country without even having to wave a passport will appal most Britons.

The Home Office says 100 per cent of high-risk flights’ passengers are checked. Not good enough. Polls show that many Tory voters who now back Reform would return if they thought the government was serious about getting migration numbers down. James Cleverly, the home secretary, should insist all passengers arriving by private aircraft are checked, with no exceptions. This dangerous fast-track perk for the jet set must end.

□解釈のポイント■■■

①indices/判断の指針

indexの複数形です。同じindexの複数形にindexesというのがあり使い分けが必要です。ざっくり言えば、本の索引の意味でのindexにはindexesのみしか使えない、今回のような判断の指針という意味や数学の累乗の場合はindicesしか使えないという感じです。中間にあるのが物価指数などの意味で使う場合で双方の複数形が使えます。

小型船舶の不法入国者数は膨れ上がり、現政権は威信をかけてこの問題に取り組んでいます。ところが、プライベートジェットでやってくる金持ちのチェックがずさんだったというスキャンダルです。不法入国は不法入国ですので同様にチェックがなされるべきですね。

②suzerain/宗主国

属国は他の国に影響下にあり従う国ですが、従われる方の偉い国を宗主国と言います。フランス語が期限で元々は大きな国の君主に従う各々の地域を収める領主を示す言葉でした。

corporate suzerainという言い方は、自社だけでなく国家や他の企業にも大きな影響力を持つビジネス界の有力者という意味になります。プライベートジェットで世界を飛び回る大企業の経営者達ですね。

③red herring /燻製ニシンの虚偽

赤いニシンは燻製にして身が赤くなったニシンを指しますが、いつのまにか本題や重要な出来事から注意を逸らす為の偽情報、ミスディレクションを指すようになりました。由来は18世紀の新聞記者ウィリアム・コベット使った例え話だそうです。ナポレオン戦争での敗北を勝利とした誤報を、ウサギを追いかける犬を惑わそうと臭いの強い燻製ニシンを使う事に例えたんだとか。

スキャンダルに対して内務省はリスクが高い搭乗者はもれなくチェックしているとか、リスクの判定を持ち出したり言い訳に必死です。しかし、リスクの高い低いの区別は本質ではなく不公平と管理の甘さが問題の本質なわけです。運用の良し悪しではなく、考え方を正し公平で抜けのない入国管理を検討すべきですね。

伝説のジャーナリストウィリアムコベット氏


■試訳

小型船舶と同様にチェックされていない個人旅客機も懸念すべきだ
英国に入国しようとする人は絶えないが、その全てが合法的な方法ではない。
不法入国というと、状況の変わりやすいイギリス海峡を命懸けでわたろうとするもの達が世間の注目を集めている。現状彼らの人数が最大の政治的関心事だ。Rishi Sunakは小型船舶問題は自身の首相としての実績を判定する5つの指数の1つであると述べているが、2024年年頭からの越境者数は過去の同期間比較で最高の値となっている。首相もこの数値を見ていたら、がっかりしている事だろう。しかし、もう一つ懸念すべき移動者の分類が存在する。必死になって海をわたる人々とは全く異なる世界の住人だがが、密入国が可能であることは変わらない。毎年、何千もの個人旅客便が英国中の空港に到着している。 ロンドン南部のBiggin Hill空港はかつて帝国空軍戦闘機の基地であったが改装され富裕層向けジェット機のハブとなっている。飛行機からおりる人たちの多くは航空会社が運行する便にのる通常の旅行者が直面するような面倒な入国手続きや税関検査を受ける事がない。国境警備隊がフライトを出発地と乗客の観点から”低リスク”として判断すれば、少数ながら面倒な手続きを免れる特別扱いを受ける人が発生することとなる。到着前に英国の各官庁に対し誓約書を提出する事で中東の王族や企業のオーナー、多種多様な富裕層外国人が英国の市民と同等の特権を得られるのだ。この運用は受け入れ難いものだ。とんでもない不公平であるだけではない。このルートがテロリストをはじめとする犯罪者や兵器、ドラッグを国内に運び込むのに使用されるリスクがあるからだ。この慣行が明るみに出たのは David Nealの警告がきっかけだった。彼は国境入国管理を対象とした主席捜査官であったが英国の入国制度に存在する多くの欠陥を公表した後に職を追われている。内務省は入国管理の監督官庁として報告書の余波を最小限に食い止めようとしてきた。Neal氏による一連の報告書はでたらめな運用が行われている事を公にしたのだ。内務省はなんとかしてNeal氏によるビジネスジェット機到着時の管理がずさんな運用に関する報告書を骨抜きにしようと、大量の文書を改竄した。このいびつな検閲行為は結果として問題の大きさを強調する事となった。Neal氏の報告書は英国経済の中心への玄関口であるLondon City空港に注目している。英国軍警察出身の捜査官が暴いた内容によれば、”高リスク”と判定された個人旅客機到着で調査が実施されるのはわずか5分の1でしかない。これをスキャンダルとする報告書の表現は誤りではない。これに対して内務省この暴露は正確性を欠く情報にもとづくというものだとコメントしている。LondonCity空港のデータエラーが”低リスク”のフライトを”高リスク”と分類してしまったのだとか。これによって行われなかった幾つか検査について説明がつくが、それが全てではない。いずれにせよ、この高リスク/低リスクという区分が問題の本質を見えなくしている。テロリストもばかではない。彼らは偽の出自情報や第三国を使って捜査を回避する方法を弁えている。何百人もの外国人がパスポートを提示することさえせずに英国を出入りしていたという事実が明らかになり、大半の英国人は驚いているのだ。内務省はリスクの高いフライトは全数検査していると述べているが、それでは不十分だ。
世論調査によれば、改革を支持する保守党有権者は政府が移民数を減らすのに真剣であると思えるのであれば支持を考え直すとしている。内務大臣のJames Cleverlyは個人旅客機で到着する旅行者も全数が検査を受けることを主張すべきだ。個人ジェットへの危険な優先特権の付与は廃止しなければならない。

◇一言コメント:

入国管理は公平になされるべきと思いますが、プライベートジェットなんて一回は乗ってみたいものです(単純)。

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