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Vol.82#挑め!Leading Article/英国のベアスキンとフランスのケピ

今日のテーマは”英仏関係の重要性”です。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

英仏協商(The Entente Cordiale)が成立120周年を迎えます。当初はアフリカやアジアの植民地政策の協調を目的とした殺伐としたものでしたが、気候変動やロシアのウクライナ侵攻など欧州が協力して行動しなければならない現代においては有用な政治的な枠組みとして機能しています。
協商という訳語は必ずしも商業的な内容のみを指すわけではなく、商という事には相談するという意味があるのだそうです。民族的にも文化的にも異なる部分が多いこの2つの国は何かとぎくしゃくしがちですので、こうした調整の場が機能する事は大事な事なのでしょう。
120周年を記念してお互いの近衛隊を派遣しあってお互いの政府官邸を行進させるというデモンストレーションが実施されたそうです。そこに込められたメッセージは”我々の守りは、貴国の守り”。ロシア、中国に対峙するにあたってアメリカを頼れない今の状況において、まさにそのとおりというところでしょう。

今はなき金髪の首相(ボリスジョンソン前首相ですね)を思い出しながら、読み進めていきましょう。


◎今日のLeading Article:Bearskins and Kepis

The Entente Cordiale must be upgraded to deal with the threats of a troubled world
There is nothing wrong at a time of hot and noisy wars with celebrating some amity between old, often grumpy neighbours. The original Entente Cordiale, 120 years old this week, was an unsentimental colonial carve-up between great powers — Egypt confirmed as a British client, Morocco under French control — but has mutated today into a useful, mature framework for aligning policy on Ukraine, for dealing with illegal immigration, for sharing intelligence and for jointly preparing a response to climate shocks.

The sight of the Coldstream Guards stamping their feet outside the Élysée Palace yesterday and the French Garde Républicaine marching into the forecourt of Buckingham Palace was designed to send a simple message: our defence is your defence. It hasn’t always worked that way during the tenure of President Macron.

The British were not the only ones to be baffled by his repeated attempts to persuade the President Putin to think again before invading Ukraine. Poised awkwardly on the edge of a chair at the end of a preternaturally long table in the Kremlin, Mr Macron appeared to many of his allies to be occupying a supplicant role rather than projecting strength. That has changed over the course of the war.

Mr Macron no longer refers unhelpfully to the Nato alliance as “brain-dead”. Britain no longer has the blond-haired prime minister who declared that the “jury is out” on whether the French president should be regarded as a friend or foe. Now the British and French are jointly deployed in Estonia, Nato’s front line, and they are both training Ukrainian pilots to fly jet fighters. London and Paris also quietly co-ordinate the delivery of the long-range cruise missile systems Storm Shadow and Scalp to Ukraine.

From Mr Macron there has been a notable hardening of tone towards the Kremlin. In part this may be to distinguish his policy from the muted tones of his German partner. It is also a way of marking himself out from the Moscow-friendly posturing of his far-right rival Marine Le Pen. And there is a sense that if the United States chooses Donald Trump as its new president in November Nato powers in Europe will have to be ready with a credible strategic posture. Britain, which is quite likely to have a new prime minister by the time America chooses the next occupant of the White House, understands that a warmer institutional relationship with France is not only desirable but vital.

The international system has shifted from a world of blocs into one that will depend on a range of coalitions. That demands more honesty about the real leverage commanded by nation states like Britain and France. The Ukraine war has brought the European Union and Nato closer together, on both Russia and China, and that endows the old entente with new significance. For a start Britain could back the French proposal (already supported by more than 100 states) to suspend the power of veto wielded by the permanent five members of the United Nations security council in cases involving mass atrocities. The obstructionism of Moscow and Beijing has eroded the authority of the UN.

A renewed entente is needed not only for closer co-operation on migration and climate change but also to strengthen the stabilising influence of Europe’s two nuclear powers in a fractious and uncertain age.

□解釈のポイント■■■

①client/保護国

お客様のclientではなく、属国という意味です。元々は"話を聴き従う"という意味だった言葉で、そこから専門家の話を聞く顧客という意味と他の国に従う属国の意味に分岐していったようです。

エジプトは英国で、モロッコはフランスという身勝手な話合いで、やられた方はたまったものではないですが、当時英仏協商はcarve-up(分割協議)をする場として機能していたわけです。アフリカやアジアの国々を次々に侵略してclient stateするというのが帝国主義ですね。

②supplicant/嘆願するような

supplicateは嘆願するという意味の言葉です。

プーチンに対するマクロン大統領の外交姿勢は当初融和に寄ったものでした。その様は対等の立場で話すというより、お願いをするという弱気なものに映ってたという事ですね。

③obstructionism /議事妨害

国連のような議事で意思決定をする場において自分の意に沿わない内容については決議に至らないように行動する事を指します。

中国とロシアは安全保障理事会の常任理事国なので拒否権(power of veto)を有します。これを使われると大量虐殺のような明らかに悪い行いも国連が介入して止める事ができないこととなってしまいます。フランスは内容によってはこの特権を保留すべきという提案をしています。

■試訳

英仏協商を拡充し難局にある世界の脅威に対処しなければならない
熱くうるさい戦争の時代において古くしばしば気難しい隣人との間に友好的な関係がある事を祝うのは極めて妥当な事である。英仏協商は今週120年周年を迎えるが、そもそもは情け容赦ない大国間先の植民地分割協定だった。エジブトは英国の保護国とであり、モロッコはフランスの統治下にある事を確認し合う内容だった。しかし今日においてはウクライナ政策の調整、違法入国者への対処、諜報活動での協力、衝撃的な気候変動に対する対応の準備を行う為の有用で成熟した政治的な枠組みとなっている。コールドストリーム近衛連隊がエリゼー宮殿の外を行進し、フランスの共和国親衛隊がバッキンガム宮殿正面の庭園に入場する光景。その意図はシンプルなメッセージを発信する事だ。我々の守りは、貴君の守りであるという。マクロン氏が大統領になってからは、なかなかこうはいかない事が常であった。マクロン大統領はプーチン大統領に対してウクライナ信仰を考え直すように何度も働きかけを行なってきたが、それに辟易していたのは何も英国だけではない。ロシア政府官邸には驚くほど長いテーブルがあるが、その奥に置かれた椅子の端にもたれかかるマクロン氏は多くの人にとって強硬な態度をとっているというよりかはへりくだっているように見えた。それも戦争の過程で変わってきた。マクロン氏もNATOの同盟を”脳死状態”と評する事はしていないし、英国にもフランスの大統領が味方か敵かは”まだわからない”と宣言するブロンドの首相はもういない。英国とフランスは共同でエストニアに出兵している。そこはNATOの最前線であり、両国がウクライナのパイロットに戦闘機操縦の訓練を提供している。また、英国政府とフランス政府は水面下で調整を行い、ストームシャドウ/スカルプと呼ばれる長距離クルーズミサイルシステムをウクライナに届けた。マクロン氏からもロシア政府に対する言葉遣いは目に見えて強硬なものとなっている。これには自らがドイツ大統領の抑えめな姿勢と一線を画す意図も含まれているのだろう。同時に、極右の対立派Marine Le Penの親露方針に距離を置く方法でもある。更に仮にアメリカで11月に Donald Trumpが新たな大統領に選ばれてしまった場合、欧州のNATO加盟国は信頼に値する戦略的な体制をもってこれにそなえなければならない。英国でもアメリカがホワイトハウスに入るのが誰かを決める頃には新たな首相が就任する見込が濃厚であるが、フランスとの関係を良好なものにする事は望ましいという所にとどまらず必要な事である。国際関係はブロックからなる世界から広い範囲での共同関係に依存する世界にかわってきている。そこでは英国やフランスといった国民国家が行使するレバレッジについてより率直である事が求められる。ウクライナ戦争によってEUとNATOの結束は強まった。ロシアに対しても中国に対してもである。これにより古くからの英仏協商には新たな重要性が付与される。まず英国ができるのは国連安保理常任理事5カ国が有する拒否権を大量虐殺が関わる場合には保留すべきとするフランスの提案を支持する事だろう(既に100カ国が支持している状況だが)。ロシアと中国の議事妨害は国連の権威を損なっている。新たな英仏協商の必要性は移民や気候変動に関する連携強化だけでなく。欧州の2つの核保有国として、脆く不確実な時代において安定に向かう影響力を強化する事にある。

◇一言コメント:

Bearskinは英国のコールドストリーム近衛隊が身につける黒毛の帽子を指し、Kepiはフランスの共和国親衛隊が被る帽子の事です。コールドストリーム近衛隊は通常このbearskinを身につけバッキンガム宮殿を警備しているわけですが、今回はフランスに赴きバッキンガム宮殿を警備するという趣向です。

フランス史上最もkepiの似合う男、ド・ゴールさんです
ベアスキン達ものせておきましょう

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