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夏の読書はオーソドックスな教会スタイルで決まり!?現役ローマ教皇が選ぶこの夏マストな名作10選

夏休みは普段とれない読書時間を確保する絶好の機会です。少し俗世のあれこれに距離を置いて名作を読み耽る時間をとるのも良いですね。良い本はないかと迷っておられるあなたに、世界で最も俗世から距離のあるあの人がおすすめの本を公開しています。なんと第266代教皇フランシスコさんの登場です。正真正銘、正統派の読書案内をお届けします。

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◎”Catholic Tastes”(偏りのない趣味)

”教皇フランシスコ”はアルゼンチン出身、史上初アメリカ大陸出身者として就任時に話題となりました。鉄道職員の父を持ち、貧困や社会不安が身近な南米の環境で生まれ育った経歴から、これまでにない視野の持ち主です。そんな彼が若い駆け出しの神父達に向けて発表したのが今回の読書案内で、8ヶ国語に翻訳され配信されています。

そもそもローマ教会は書評に関してあまり評判が良いとは言えない組織です。悪名高いのが”禁書目録”(①Index Librorum Prohibitorum)です。これはキリスト教徒が読むことも印刷する事をも禁じた書物のリストです。禁書という考え方自体が中世的なわけですが、1966年までは記載された本を手に取る事は破門を意味する厳しい運用がなされてきました。時代とともに本を読む事だけでは破門にしない等、運用は緩和されてきていますが廃止されたわけではなくローマ教会の基本的な姿勢に変化がない事が窺われます。

そんな中で教皇フランシスコの推薦図書は一味違ったものでした。同じアルゼンチン人Jorge Luis Borgesの著作が含まれているのはご愛嬌ですが、アングリカンに改宗した経歴があり、作中で宗教の危機を描いた事で名前が挙がっている(②name-checked)TS Eliotの作品も含まれており、懐の深さと偏りのなさ(③eclectic)が伺われます。特にProustの失われた時を求めては2度に渡って言及されており、教皇の一押しであるようです。ただこの作品めちゃくちゃに長い。なんと110万文字、7巻に渡る大著。今回9連休になった人もご安心ください。読むものが足りないという心配は皆無です。またその重量は安定感抜群で、ドアストッパーとしても役に立ってくれるでしょう。

圧倒的な読書家でいらっしゃる教皇フランシスコですが、案内の中で”義務感からの読書ほど非生産的なものはない”と実に寛容な事をおっしゃっています。

また聖書は良い本である事は当たり前として、それ以外にも良書はあるという姿勢からも俗世とは距離をおきつつも否定しない21世紀のあるべきカトリックの姿を考えさせられます。

以下が教皇おすすめの10冊だそうです。そこら辺の本屋に日本語版が置いてありそうなのはドストエフスキーの地下室の手記くらいですね、、、

https://www.rachelsherlock.com/post/papal-seal-of-approval-10-books-recommended-by-popefrancis

The Lord by Romano Guardini
Lord of the World by Msgr Robert Hugh Benson
Notes from the Underground by Fyodor Dostoevsky
The Spiritual Exercises of St. Ignatius by Louis J. Puhl
Gerard Manley Hopkins: The Major Works by Gerard Manley Hopkins
Selected Poems and Fragments by Friedrich Holderlin
The Betrothed by Alessandro Manzoni
The Diary of a Country Priest by Georges Bernanos
The Divine Comedy by Dante Alighieri
Adam Buenosayres by Leopoldo Marechal

□本日のポイント■■■

①Index Librorum Prohibitorum/禁書目録

ラテン語ですが英語にするとIndex of Forbidden Booksという意味です。今はもうこれを読むと破門されるというような厳しい運用ではない様です。他にもカントやヴォルテールなど有名どころの著書も含まれています。

🔳Until as recently as 1966, the notoriousIndex Librorum Prohibitorum, a list of proscribed books, outlawed works by the likes of Émile Zola, John Milton and Jean-Paul Sartre for their sacrilegious content.

(試訳)何と1966年に至るまで悪名だかい禁書目録、禁じられた本のリストでは Émile Zola, John Milton and Jean-Paul Sartreによる作品が冒涜的な内容として禁じられていた。

② name-check/名前を挙げる

雑誌やインタビューで名指しする事を言います。あのけしからん本を書いたTS Eliotのやつ!というように過去にローマカトリックから名指しディスられた人もちゃんと包括していく懐の深さです。TS Eliotが中道の精神(via media)を求めて走った先のイングランド国教会について過去に取り上げた内容もぜひ読んでもらえたら幸いです。

🔳 His fellow Argentinian Jorge Luis Borges is approvingly alluded to, as — a little more surprisingly — is the great modernist poet and later Anglican-convert TS Eliot, whose verse is name-checked for having “perceptively described today’s religious crisis”.  

(試訳)彼と同じアルゼンチン人のJorge Luis Borgesが肯定的に言及されているが、驚くべきことに後にアングリカンに改宗したTS Eliotも偉大な近代の詩人と位置づけられている。”今日の宗教が危機に瀕している事を洞察し描写した”詩人として名指しされた経緯があるにもかかわらずだ。

③eclectic/偏らない、多様な

様々なルーツのものを偏りなく集めているという意味のポジティブな意味の言葉です。カトリックや聖書だけでなく色んな本を読んで広い視野を持っていますという感じです。

これと同じ意味で使われているのがタイトルとなっているcatholic tastesという言い方です。ローマカトリックと掛け言葉になっているわけですが、こちらも偏らない趣味という意味です。

🔳Though sensibly cautious of being too prescriptive in his recommendations,Pope Francis’s celebration of the canon includes a few hints of his own eclectic literary leanings.

(試訳)推奨にあたってあまり指図がましくならないように注意が払われているが、お墨付きを与えられた本からは法王Fransisの幅広い読書の学びが伺われる。

◇一言コメント

教皇フランシスコは初のアメリカ大陸出身の教皇であったわけですが、もう一つ”初”があります。それは初のイエズス会出身の教皇であったという事でした。イエズス会は世界中に優秀な宣教師を送り、キリスト教の布教に実績を残してきたローマ・カトリックの一派ですが先進的で過激な所もありメインストリームからは若干外れた組織でありました。ローマカトリックも改革の時代、新しいリーダーが求められていたのでしょう。まさかのイエズス会からの選出だったそうです。

教皇フランシスコが来日された際も様々な日程の合間を縫ってイエズス会の神父たちが生活するSJハウスを訪れミサを行ったそうです。

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