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Vol.77#挑め!Leading Article/雨天に効く祈り

今日のテーマは”史上最高の降水量の解決方法”です。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

2023年3月からの12ヶ月間は英国史上最高の降水量を記録しました。元々晴天が多くない英国の気候ですが、来る日も来る日も芳しくない天気予報に辟易している人も多かった事でしょう。
かつて同程度の降水量を記録したのは1872年の事ですが、当時驚くべき解決方法が実施されている事が取り上げられています。
その解決方法とは、なんと祈りだそうです。イングランド国教会の典礼を定める祈祷書(Book of common prayer)には確かに晴天を神に望む祈りが記載されており、1872年にも実施されたとされています。因果関係には疑問符がつきますが、翌1873年は史上最も降水量が少ない年となっており、その効果実績ありという論になります。
せっかくイースターでお祈りしてるのだから、ぜひ昔にならって晴天の祈りをお願いしたいものだという軽口ですね。

晴れへの想いが行き過ぎて猛暑にならぬ事を祈りつつ、読み進めていきましょう。

◎今日のLeading Article:Remedy for Rain

Prayers for better weather have a record of success

Warnings by weather forecasters of heavy rains and strong winds across these islands will have been borne with fortitude by our readers, not least because they are accustomed to so dismal an outlook. According to the Environment Agency, the 12-month period from March 2023 was the wettest on record in England. For a comparably sodden precedent, meteorologists need to go back as far as 1872, when we reported on the “atmospheric caprices” that had left large tracts of rural England underwater.

Our forebears found a remedy for foul weather, and it bears reprising. On Christmas Eve, 1872, the Archbishop of Canterbury at the time, the Most Rev Archibald Campbell Tait, observed to his archdeacons that despite the deluges he had “heard, with some surprise, that the clergy have not used the prayer for fine weather which our liturgy prescribes in case of excessive rain”.

Indeed, the Book of Common Prayer does contain a prayer that, “although we for our iniquities have worthily deserved a plague of rain and waters”, the weather improves such that “we may receive the fruits of the earth in due season”.

Theologians have long debated the notion of petitionary prayer (that is, prayer for specific empirical outcomes), and whether it is compatible with God’s omniscience. Yet the historical evidence is clear. Throughout the country at the end of 1872, parishes prayed for fine weather. And 1873 proved to be among the driest years on record.

Sceptics may claim that mere autocorrelation is not the same as causality, and that our brief survey of the evidence exhibits time-period bias. Perhaps so. But as the present Archbishop of Canterbury, the Most Rev Justin Welby, leads worshippers over this Easter Day, he may wish to recall the example of his eminent Victorian predecessor and pray that the rain clouds at last disperse.

□解釈のポイント■■■

①fortitude/不屈の精神

長い期間にわたり困難に耐える事を指すポジティブな言葉です。雨の予報に慣れているので、凹まないという事ですね。

来る日も来る日も雨の1年間だったわけですが、どうりで過去最高の降水量を記録していたわけです。

②the Most Rev/尊敬する〜師

The Most Reverendの略ですが、Reverendは聖職者への尊称です。教会によって色々な意味合いがありますがイングランド国教会ではThe Mostを伴うReverendはトップの大主教専用の敬称です。その他の偉い聖職者にはThe Right Reverendという敬称を使うそうです。

当時の大主教はイングランド国教会の典礼集に記載されている晴天への祈りを執り行い、驚く事に翌年は史上最低の降水量となったという驚きの展開です。キリスト教の精神性と雨乞いやら雨除けやらの実利的な効能はいまいち整合しないきもしますが、とにかく晴れました。

歴史に残る晴れ男 Archibald Campbell Taitさん

③iniquity /不正、不道徳

人の業というか世の中の不正を指すネガティブな言葉です。そんな悪い我々ですが、どうぞお救いくださいという祈りの文言です。


■試訳

天候回復への祈りは成功した実績がある
天気予報の警戒情報によれば英国中で豪雨と強い雨が予測されており、読者の皆様は毅然とした態度でこれに望むことになるだろう。とりわけ、憂鬱な予報に慣れてしまったからだ。環境庁によれば、2023年3月からの12ヶ月間は英国で最も降水量が多かった。これほどまでに降水量の多かった前例を探すとなると、気候学者達は1872年まで遡る必要がある。”大気の気まぐれ”が英国の広範囲を水浸しにしたのがこの年であった。我々の先人達によりこの悪天候への解決策は発見されており、再びそれに訴える事ができよう。1872年のクリスマスイブの日に当時のカンタベリー大主教、Archibald Campbell Tait様は助祭長達にこう言った。洪水の話を聞いた際は確かに驚いたが、祭司達はまだ雨が過剰な際の礼拝で行う事になっている晴天への祈りを使っていないではないかと。実際、聖公会祈祷書には”我らは不徳により雨と水害の苦しみを受けて当然でありますが、天候が回復し然るべき季節には大地の恵みを受け取ることができますように”という祈祷が記載されている。神学者達は長らく請願の祈り(すなわち特定の経験的な結果を望む祈り)という考え方について、またそれが神の全知全能さと整合するのかどうかを議論してきた。しかし、史実は明確だ。1872年の末に英国中で祭司達が晴天を求め祈った。そして、1873年は史上最も降水量の少ない年となったのだ。懐疑的な見方をする人ならば、ただの自己相関は因果と同義ではないし我々の簡単な史実の調査には時期のバイアスがあると主張するであろう。おそらくその通りであろう。しかし、現代のカンタベリー大主教、Justin Welby様はこのイースターの日に祭司達を指揮されるにあたって、素晴らしいビクトリア時代の先駆者の実例を思い起こし雨雲が晴れるように祈って頂いてもよいのではないだろうか。

◇一言コメント:

イングランド国教会は実にわかりにくい組織です。ローマ・カトリックとは別の組織でありながら、教義や典礼は極めてカトリック寄りです。大主教をトップとした聖職者の組織がありながら、その首長はイギリスの君主たる国王が務め、Defender of the Faith(信仰の擁護者)を名乗ります。

歴史の紆余曲折やプロテスタント運動を乗り越え、ローマ・カトリックとも付かず離れずの関係を維持し独自のプレゼンスを保っています。何か抜け目ない組織です。
21世紀になってからは、聖職者への女性の登用も行っており初の女性主教の誕生も話題を集めました。

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