Vol.57#挑め!Leading Article/先輩、トップギアって何ですか
今日のテーマは”消えゆくマニュアル車”です。
🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸
英国の2023年新車登録台数にマニュアル車が占める割合は約25%だったそうです。わずか4年前の2019年にはオートマとマニュアルの台数比は半々だった事を考えると、激減したといって良いでしょう。急速に普及しつつある電気自動車はほぼ全てがオートマである事も大きな要因となっているようです。自動車免許を取得する講習についてもオートマ専用を選択する人が25%と増加しています。車の購入はオートマでも念のためマニュアルも運転できるようにしておくという層も減少傾向にあるようです。
シフトレバーを華麗に操作し運転するという光景と共にマニュアル車に関連する語彙も過去のものとなっていくのでしょう。
これでもかとギアに関する語彙が出てきます。確認しながら読み進めていきましょう。
◎今日のLeading Article:Gear Shift
The manual transmission is going the way of music on vinyl: soon it will be something beloved by the aficionado, the collector, the niche nostalgia fan, but shunned by mainstream manufacturers and consumers. That is already the case in the United States. While classic Hollywood car chases call for endless dramatic stick-shifting, real-life American motoring has long kept both hands on the wheel. Almost three-quarters of new cars registered in the UK in 2023 were automatics. As recently as 2019, the split was 50-50. Electric cars are all automatics. Three pedals are set to become two, the clutch a gooseberry.
Given this, it is rational that more drivers opt to learn in automatics. Without the dreaded clutch control which bamboozled generations of beginners, automatics are easier to master. A decade ago, 100,000 new drivers passed in an automatic.
Last year, almost 325,000 did so. Two in five instructors now choose to train in automatics.
Purists argue that driving pleasure is more intense, more hands-on, literally, in a manual on an open road (if any still exist) in the countryside. Yet in the stop-go traffic snarl of a city, constant shifting between first, second and (rarely) third is tiresome, foot-aching and fuel-inefficient.
The big casualty of the change rushing up in the rear-view may well be intergenerational understanding.
The boss delivering a pep talk to her sales team will urge them to “get their brains in gear”, “find the extra gear” or “go up through the gears” only to be met with puzzled shrugs.
Youngsters enjoying repeat episodes of an old motoring show will ask each other, “Dude, why Top Gear?” And the first verse of the Friends theme won’t make sense to future fans, with no clue what it feels like to be “always stuck in second gear”. The terror of the first hill start is lost to them. They should be grateful.
□解釈のポイント■■■
①gooseberry/邪魔なもの
gooseberyはスグリですが、どういうわけか人の恋路を邪魔するものという意味に転じています。ちなみにgoosebery layと言えば洗濯物を盗む犯罪行為です。こちらはスグリの棘がなくもぎやすい性質からきています。
アクセルとブレーキが欠かすことのできない2人であるとすれば、オートマ普及でクラッチは役割を失い邪魔者となってしまったわけですね。
②bamboozle /困惑させる
すごい語感ですが、スコットランド語が起源だそうです。困惑させるという意味です。
マニュアル車の運転は初心者にとってはとても煩雑に思えるものです。クラッチを切って、ギアを入れて、ギアをあげていきながら、あれハンドルも切るんだっけ、と。
③ pep talk/激励
みんながんばれ!という感じの短いスピーチの事です。pepはpepperから来ています。ピリッと辛い唐辛子はやる気をださせるイメージです。
営業部のボスが表現で若手達に檄を飛ばすも、ジェネレーションギャップにより響かない(only met with shrug)という構図です。
■試訳
マニュアルトランスミッションの行末は音楽におけるレコード盤と同じだ。まもなく熱狂的な支持者、蒐集家、ニッチな懐古主義的ファンのみが好むものとなり、一般的なメーカー、消費者からは避けられようになるだろう。米国では既にこれが現実のものとなっている。ハリウッド映画のカーチェイスでは四六時中シフトレバーを操作しドラマチックに変速する事が求められているわけだが、現実世界のアメリカでは運転時には両手をハンドルを置くようになって久しい。2023に英国で登録された新車にオートマが占める割合は4分の3にもなる。ほんの少し前の2019年にはこの割合は半分半分だったのだ。電気自動車は全てオートマだ。ペダルの数は3つから2つになる事が確実で、クラッチも邪魔者となる。
これを踏まえるとオートマ専用を選択する運転教習者増も理にかなっている。恐怖のクラッチ操作は世代を問わず運転初心者を困惑させてきたわけだが、その心配のないオートマは習得が容易だ。10年前には10万人だったオートマ専用の新規免許取得者は32万5千人にも増加した。運転教習官の5人に2人がオートマ専用を選択している。
潔癖な人はマニュアルで田舎の(もしそんなものが未だ存在するとすればだが)幹線道路を走る方が運転は楽しいし、言葉のとおり自分の手で車を操作している感覚を得られるのだと主張する。しかし、停止と発信を繰り返す都市部のごちゃごちゃとした交通状況では、常にファーストとセカンド、そしてまれにサードを切り替えなければならないとなると、面倒くさいし、足も痛いし、燃費も悪い。
後方を見て急ぎギアを変えた事で死亡事故につながるケースは多く、この理解は今も昔も変わらない。
営業チームの責任者が課員に檄をを飛ばす際に、”ギアが噛み合った思考をしろ”とか”もう一回余計にギアをあげるつもりでいけ”とか”徐々にギアをあげていこう”などと言っても困惑したそぶりをみせられるだけだろう。昔の自動車番組が再放送されているのをみる若者達は仲間どうして”なあ、なんでトップギアなんだ?”といった問いかけをしているだろう。
フレンズの最初の一節は将来のファンたちにとって理解不可能だ。”いつもギアをトップに上げきれない”というのがどういう気持ちかは知る由がない。初めて坂道発進をする際の恐怖もなくなっているのだから、ありがたいと思うべきだろう。
◇一言コメント:フレンズとギア
タイトルのgear shiftはギアを上げていく事ですが、shiftには交代して去っていくという意味もあります。消えゆくギアという意味もあるのではないでしょうか。
最後に出てくる"フレンズのテーマ曲、第一節目"という言葉ですが、フレンズは2004年迄放映されていたsitcom(situation comedy)と呼ばれるジャンルのドラマです。
Sitcomの特徴として日常を描くという趣旨で、毎回場所と登場人物が固定されています。
ストーリーはニューヨークで生活する若者6人の友情を描く作品。
言及されているテーマ曲は”I'll be there for you”という曲で、歌詞をみると確かに"It's like you're always stuck in second gear"という表現が出てきます。セカンドギアから抜け出せないというのは、トップギアに入れてスピードに乗ることができないという事ですね。
90年に始まり10シーズン続いたのちに2004年におわったフレンズですが、令和の若者にとっては既に古典なんですね。辞書でもひきながら見たらいいんじゃないでしょうか。
未来の若者達の為にこれでもかと言わんばかりにでてきたギア関連の表現をまとめておこうと思います。
“get their brains in gear”
物事をクリアに考え結果を出す 空転しないようにという事ですね
“find the extra gear”
もう一段階頑張れ トップギアまであげた状態から更にもう一息 限界を突破しろという感じ
“go up through the gears”
ギアをあげていけ 一速、二速、続いて三速と徐々に調子をあげていこうという意味合いです
息子達が大人になる頃には使われなくなっているかもしれませんが。
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