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Vol.42#挑め!Leading Article/水質汚染の厳罰化

今日のテーマは”水質汚染の厳罰化”です。水質汚染を防止する新聞社の取り組みを取り上げます

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

水道事業者による河川への排水放出の慣行が環境汚染である事はあきらかです。ところが大気汚染など他の環境汚染に比べて世論の反応や罰則が徹底していないのが現状です。The Times紙は昨年から"Clean It up(清流化)"と称して実地調査を含めた報道キャンペーンを展開してきました。

大気であれ、河川であれ環境を破壊する行為には変わりはないのですから、他の環境汚染と同様に扱われるべきものですが、そうした方向に社会を動かすにあたってジャーナリズムが積極的な役割を果たしている例といえるでしょう。


◎今日のLeading Article:Water Pressure

What other sector has been allowed to fail in such an appalling way as the water industry? If a chemical company released a cloud of toxic gas into the atmosphere, blanketing housing estates and schools, the outrage would be immediate. Compensation would be enormous, executives would go to jail and the government would find itself on the rack for dereliction of duty in failing to provide effective regulatory oversight. Yet, for decades since privatisation, the water companies have been allowed to get away with the slow murder of Britain’s waterways, allowing untold amounts of sewage to flow into streams, rivers and coastal waters, killing fish, destroying habitats and blighting areas of outstanding natural beauty. And they have done this while rewarding their executives and shareholders with vast sums, a bonanza of personal enrichment (£65 billion in dividends since privatisation in 1989) bought with the environmental impoverishment of this country.
(中略)
In terms of filthy water, light is the best disinfectant. Pollution incidents are now harder to hide. Following our coverage highlighting the abuse by water companies of discharge permits, monitoring is meant to be in place for all but one of the 15,000 storm overflows that act as relief valves for Britain’s sewer network. These pipes should release raw sewage into waterways only in times of heavy rainfall, to prevent waste backing up into homes and workplaces, but there is evidence of water companies allowing discharges on dry days. Based on this comprehensive monitoring, future data should at last present a true picture of reality, if a disturbing one.
(中略)
Cleaning up our waters, inland and coastal, is of fundamental importance. As the election approaches, this newspaper will continue to campaign to that end. We will interrogate the manifestos of the political parties, holding policies to the light. The cause of clean water cannot be allowed to ebb away.

□解釈のポイント■■■

①dereliction of duty /職務怠慢

derelictという言葉は見捨てるという意味のラテン語が語源ですが、責任や役割を放ってしまっているという感じで怠慢を意味します。逆に世の中から見捨てられるという意味で廃墟やホームレスを示す意味でも使いますね。

大気汚染の場合は自治体が環境汚染には対応できなかった事を苦悩する(on the rack for)のに、水質汚染に反応しないのはおかしいじゃないかという流れです。

② all but one of/およそ全数の

butはexceptの意味で、1箇所以外の全てという事になりますが、ここではほぼ全数のというくらいの意味です。

言葉のとおりにとれば1500箇所ある排水口のうち1499個を調査したということになりますが、上記のとおり一箇所できなかったという所に重点はなく、基本全数だけど調査できなかった所もいくつかあるよという意味合いですね。あとにでてくる”漏れのない監視(Comprehensive monitoring)"という言い回で言い換えられています。

③ ebb away/衰退する

ebb and flowは潮の満ち引きの事です。flowの方が満潮、ebbは引き潮です。そこからebb awayは引き潮のように海の方に後退してしまうという意味です。

活動は23年一定の成果をあげたけども、引き続き圧力をかけ続けて改善していくぞという事ですね。排水は河川だけでなく海洋にも行われており、あえて潮に関わる言葉を持ってきています。

■試訳

水道事業は他の分野に類をみない体たらくである。化学関連企業が有毒なガスを大気に放出し、そのガスが住宅やが学校を覆ったとすればすぐさま大騒ぎとなる。賠償金は巨額なものとなり、経営陣は刑務所行き、自治体は自らが有効な規制監視を提供できなかった職務怠慢に苦悩するであろう。ところが民営化してから数十年間、水道事業者は英国の水路を緩慢な死に追いやっているにも関わらず、お咎めなしで放置されている。大量の下水が大小の河川、沿岸に放出され魚を死なせ生態系を破壊し、圧倒的な自然の美しさを誇る地域を荒廃させてきた。その傍で経営幹部と株主には多額の報酬が支払われているのだ。1989年の民営化以来実施した配当は650億本度に上り、彼らが私腹を肥やすにはうってつけの金ずるとなっている。そして、その金は英国の環境を悪化させる事で賄われているのである。
(中略)
汚れた水(水道事業者)にとって光は最善の消毒剤である。環境汚染を引き起こす事故は隠蔽しにくくなっている。水道事業者による放出許容規定濫用を糾弾する報道に続いて、排水口の監視を実施する事が予定されている。英国には1500箇所の河川への排水口があり下水ネットワークの調整弁となっており、そのほぼ全数が対象だ。これらの排水口から下水を河川に放出するのは大雨などの場合に各家庭や事業所への逆流を防ぐ目的にのみ限定されるべきだ。ところが、水道事業者が雨の降っていない日にも排水を許可していた証拠がある。この様に漏れなく監視を実施すれば、仮に問題となるような状況になればそのデータがその実態を明らかにするだろう。
(中略)
内陸であれ沿岸部であれ我々にとって水を綺麗にするのは根本的に重要なことだ。選挙が近づくにあたって、本紙はその目的の下で活動を継続する。政党のマニフェストを精査し、政策を明るみにだすのだ。綺麗な水という大目標を引き潮のように後退させるわけにはいかない。

◇一言コメント:

規定に沿わない排水があった場合でも罰金には25万ポンドまでという上限が設定されていましたが、それでは罰金を払った方が経済的には得であるということになり兼ねません。上限を撤廃し経営問題になりうる額とする事で抑止力を担保しようということですね。タイトルのwater pressureは水圧ですが、水道事業者に対し圧力をかけるぞという意味にもなっています。

引用していない部分ですが、この活動は勝ち負け(battle)でなく何十年も継続する運動(campaign)だという言葉が印象に残ります。調査費用なども自腹なのだと思いますが、まさに社会正義というやつですね。

この問題はvol.24でも取り上げています。テーマについて知識が深まるだけでなく、記憶の定着の面でも効果的です。あわせて読んでいただけたら幸いです。


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