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Vol.84#挑め!Leading Article/敏腕経営者には高給を

今日のテーマは”製薬大手アストラゼネカCEO、Pascal Soriot氏”です。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

AstraZeneca社はイギリスのケンブリッジに本拠地を置く大手製薬会社で、Pascal Soriot氏はその最高経営責任者です。同氏がCEOに就任したタイミングは主力製品の特許が失効し、売上が低迷した時期であり同社にとっては非常に苦しい時期でした。そんな中での同業他社Phizer社による買収交渉はまさに企業としての危機であったと言えるでしょう。これに対してPascal Soriot氏は拠点再編、研究開発拠点の新設、新製品立ち上げといった攻めの経営を行い見事に業績を回復させました。また、コロナ禍においては短期間でワクチンを量産化し沈静化に多大なる貢献をした事も記憶に新しい所です。それにも関わらず、Pascal Soriot氏の報酬は同業他社のCEOに比べると控えめなものにとどまっています。敏腕経営者も優良企業も業績に見合った報酬がなければ、あっという間に他国に移転してしまいます。英国経済の将来を考えれば貰いすぎだなどとケチな事を言っている場合ではないでしょう。

会社に関連する語彙を確認しながら、読み進めていきましょう。


◎今日のLeading Article:Worth Every Penny

Pascal Soriot deserves his generous pay package for transforming AstraZeneca
When Sir Pascal Soriot took over as chief executive in 2012, AstraZeneca was in poor health, with patents nearing expiration and a lack of blockbuster replacements in the pipeline. In 12 years on his watch, AZ’s share price has increased by 268 per cent, compared with an average gain across the FTSE 100 of 36 per cent. It has successfully launched a series of next-generation oncology medicines, partnered with Oxford University in bringing out a Covid-19 vaccine in record time and built an R&D campus in Cambridge employing 2,300 scientists. No one doubts that Sir Pascal is the chief architect of this stupendous success story.

One of Sir Pascal’s first tasks as AZ boss was to fight off a takeover bid by the US pharmaceutical giant Pfizer. He succeeded, and AZ is now a bigger concern than its rival. Yet last year he earned about £5 million less than his opposite number at Pfizer. Even after the company succeeded in raising his pay this week, despite a shareholder revolt, his pay is at the lower quartile of its peer group globally, including in the United States.

Vastly well remunerated by almost anyone’s standards, in the rarefied market for global business hotshots, this French-Australian businessman remains relatively underpaid.

Those seeking to limit elite salaries in the UK for presentational purposes are misguided. Such labour is intensely mobile. So, indeed, are whole companies. In recent years, the primary listings of the building material group CRH and the plumbing and heating equipment supplier Ferguson have migrated from London to New York. Shell considered moving in 2021. BHP, the mining group, has decamped to Sydney. Next month, Flutter Entertainment, formerly Paddy Power Betfair, will vote on switching from London to New York. If the City is to remain a blue-chip financial centre, its top talent must be fully incentivised to stay put.

□解釈のポイント■■■

①concern/企業

この場合は企業を意味します。自分が関わっているもの、気を使っているものという所から転じて事業や企業を意味するようになったそうです。会計用語のGoing concern(継続企業の前提)はこの使い方です。

窮地を脱したアストラゼネカ社は同業他社を超える規模となったという流れです。こうした反転攻勢を支えたのがPascal氏の手腕でした。まさに敏腕経営者(hotshot)だったわけです。

②opposite number/同じ立場の人

同じ職種、同じ立場の人を意味します。counter partという言い方もありますね。言葉自体は反数という意味で、3に対する➖3のように正負を逆にした数を指します。

AZ社のPascal氏はCEO、ここでのopposite numberはPhizer社のCEOという事ですね。同じくらいお給料をもらっていて然るべきなのに500万ポンドも安いよ、これじゃどっか他に引き抜かれちゃうよという懸念です。
そもそもPascal氏も生え抜きではなく他社からの引き抜きですし、そうやって実績を積んで年収をあげていくのが彼らのような敏腕経営者の在り方であり、けちな考えをおこせば優秀な人材は去っていきます。

③stay put/同じ場所に止まる

あちこち動かず同じ場所にいる事を指す口語表現です。Stay put!と言われたら動くな、じっとしていてという事です。

そこに止まる動機づけが充分になければ有能な人材は引き抜かれ優良企業は移転してしまいます。

■試訳

AstraZeneca再編の立役者Pascal Soriotは高給高待遇を得る資格がある。Pascal Soriot卿が2012年に最高経営責任者に就任した際、AstraZenecaの経営体質は健全さを欠き、特許も失効が近づく中でその代わりとなるような大型の新薬も準備がままならない状態であった。彼の在任期間であった12年間、AZの株価は286%上昇した。これに対してFTSE100社の値上幅は36%であった。同社は次世代型の腫瘍治療薬を次々と立ち上げた他、オックスフォード大学と共同でCovid19ワクチンを最短で投入したり、ケンブリッジに研究開発施設を建設し2300名の科学者を雇用する事などを成功させてきた。Pascal卿が中心となってこの著しいサクセスストーリーを設計した事は誰の目にも明らかだ。Pascal卿がAZトップに就任後最初に取り組んだ仕事はアメリカの大手製薬会社Pfizerによる株式公開買付を退けるために戦うことであった。彼はそれに成功し、AZは今や競合よりも大きな企業となっている。それにもかかわらず昨年彼が稼いだ金額はPfizerの同じ地位の人に比べ500万ポンド程少ない。今週AZ社は株主の反対を押し切って彼への報酬をあげる事に成功した。しかし、それでも彼への報酬は米国を含め世界で同じ立場で仕事をしている人たちの中では下の四分位に属する。いかなる水準からしても少なくない給与であるものの、グローバルビジネスの腕利きをめぐる市場は競争が激しい。フランスとオーストラリアにルーツをもつこの企業人の給与は比較的低いものとなっている。みせしめにUKでのエリート賃金を制限しようとしている人たちは間違っている。そうした労働力は極めて流動的であり、実際のところ会社まるごとがそうなのだ。近年では建材を扱うCHRと配管と暖房設備を供給する企業であるFergusonが主たる上場市場をロンドンからニューヨークに変更した。Shellは2021年の移動を検討中だ。鉱山事業のBHPは既にロンドンを去り、シドニーに移ってしまった。来月は元Paddy Power Betfair のFlutter entertainment社がロンドンからニューヨークに上場先を切り替えについて投票による決議を予定している。シティが第一線の金融中心地でありつづけようとするのであれば、トップが心から残留したくなるように働きかける事が不可欠だ。

◇一言コメント:

タイトルのworth every pennyはかかったお金の1ペニーに至るまで価値があるという事でお値打ちという感じでしょうか。良い経営者とその実績に対して支払う報酬は更に大きな利益につながるもので、決してもったいない等と考えてはいけないものでしょう。

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