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【名盤伝説】 "Led Zeppelin / In Through the Outdoor" 6種類のジャケットの噂を実際に検証してみる

お気に入りのミュージシャンとその作品を紹介しています。
今回は問答無用の世紀のロックバンドLed Zeppelinの第8作目のアルバム『In Through the Outdoor』 (1979)のご紹介です・・・が、先ずは以前からずっと気になっていて実際に確かめたことのなかった、このアルバムジャケットについてのお話から。

アートワークはヒプノシス。このアルバムには6種類のジャケットが存在し、店頭では茶色の包装紙で隠されているので、購入しないとどのジャケットなのか分からないという、今時のどこかのアイドル歌手のような販売手法でした。当時かなり話題になりましたが、実物を確かめたことはありませんでしたし、多分どこかの音楽雑誌では特集も組まれていたのかもしれませんが、私もそこまでは追いかけていませんでした。

ただ6種類もあるというのであれば、変わったことをするなで終わりますが、その写真は、実はそこに写る人物のそれぞれの視点から撮られた連作だと聞くと、がぜん興味が沸きます。いつかは確かめたいと思いながらも月日は流れます。

noteを始めてネタを考えていた時にこのことをフッと思い出し、この積年の疑問に決着をつけるのは今だ(笑)と調べてみました。今のご時世、WEBを一巡すると関連の資料は揃うものです。凄い世の中になりました。

Special Thanks:
https://ameblo.jp/shibainutomato/entry-12618320697.html
https://thecmr.forumotion.com/t11571-40-years-ago-today-led-zeppelin-released-in-through-the-outdoor

確かに6種類のジャケットがあります。便宜的に(1) ~ (6)とします。薄暗いバーのカウンターに座る白い帽子とジャケットの男性が主人公です。この男性を中心にして、周囲にいる6名の視点で撮影されているということになりますが、番号順に検証してみましょう。

(1)  白服の男の右側から→ (5)のカウンターの隅に座る黒人女性の視点

(2)  カウンターの女性の足元が写る→ (4)の右に写るピアノ奏者の視点

(3)  ピアノ奏者のさらに先から→ (6)でジュークBOXにもたれる女性の視点

(4)  白服の男に向かって左後ろから→ (2)の右に写る小太りのドアマンの視点

(5)  白服の男の左前から→ (3)に写る壁にもたれる女性の視点

(6)  白服の男の正面から→カウンターの中にいるバーテンダーの視点

実際に確かめてみると、この男をめぐる周囲の人物が、それぞれどのような設定でバーに居て男を見つめているのか想像が無限に広がりますね。そもそもこの男は何者で、何を燃やそうとしているのか・・・。

ZEPのアルバムはジャケットに様々な嗜好が凝らされています。『III』のクルクルや『Physical Graffiti』の中ジャケの出し入れで表の絵柄が変わるというのはお馴染みです。この連作写真の嗜好も、その流れといえます。実物を飾ればLPサイズならではのアートな体験が出来ますしね。
とはいえLPが良いと礼賛するつもりは全くありません。CDならCD、配信なら配信ならではの嗜好をどんどん凝らして、リスナーを楽しませてほしいものです。

アルバムのジャケットも作品の一部だという拘りを感じます。
さすがです。


ここからようやくアルバムの内容についてのお話です。

収録は全7曲。ほとんど神がかりのようなペイジのプロデュースの才能全開の出来だと私には感じます。

M1「In the Evening」。アルバムの出だしから、一体何が始まるのだろうかというSEが流れ、続いてボンゾの破壊力抜群のドラムと天空を切り裂くかのようなペイジのギターが鳴り響きます。こんな曲でステージが始まったら、もうそれだけで逝っちゃいそうですね。

M6「All My Love」は、切ないシンセのイントロから語り掛けるようなプラントのボーカルが心に響くスローナンバーです。全編キーボードがフューチャーされつつも要所に絡むペイジのギターが、実は目立ちます。
この曲はリリース当初は大変評判が悪かったそうです。確かに「Heartbreaker」や「Whole lotta Love」の魅力に取り憑かれた往年のファンには物足りなさを感じるのも仕方の無いことだと思います。しかし改めて聞き直すと、ペイジのアレンジ能力の凄さを過小評価しているなと感じます。実はこうした多様性もバンドの魅力だと思うのです。

そしてラストM7「I'm Gonna Crawl」は荘厳な作風から、ボンゾに捧げる鎮魂歌かのようにも聞こえるブルージーな曲・・・後付けですけど。

当時バンドの周囲は激動の時期でした。1977年のツアー中にトラブルでボンゾが逮捕され、その直後にペイジの息子が急死するなど、そのような事態に遭遇し、当然ツアーは中止になりバンドの解散説も流れます。
78年になってメンバーは再び集まり、その流れでこのアルバムの制作準備に入ったのだそうです。

そしてこのアルバムのリリースが79年8月。その後特段の活動も無いまま、80年9月にボンゾが急死し、バンドそのものの活動が終焉を迎えまてしまいます。実質彼らの最後のアルバムとなります。

以降、未発表曲集やリマスター盤など様々なアルバムがリリースされます。
そのような中で、このアルバムの評価もリリース当初よりも徐々に高まっていきます。リアルタイムリスナーにとっての宿命ですね。

実はそんな哀しくて切ないアルバム・・・大切に聴き続けましょう。

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