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【街角探訪】 文京区本郷(5) 本郷通り 学生街の喫茶店

私が勤務している会社が都内文京区本郷にあるので、この周辺をよく徘徊しています。この街にまつわるお話をしたいと思います。

歴史のある東京大学の周辺だけに、その門前にあるお店の歴史も半端無いです。
「COFFEEこころ」は1955年開業の老舗の喫茶店。夏目漱石の作品にちなんで名付けたとのこと。この場所は実は新宿中村屋の発祥の地なのだそうです。学生街として賑わっていたこの周辺も、567禍で授業がリモートとなり人通りが無くなり、軒を連ねていた古本屋や飲食店も、店主が高齢化するなかで次々と閉店してしまいました。このお店もご主人が亡くなられてからは、昼過ぎから夕方までの時短営業になりました。まさに昭和な店内は、時間が止まっています。

正門周辺で有名な喫茶店といえばこちらも。カレーが名物の「喫茶ルオー」。元々は赤門前で画廊喫茶として営業していたそうです。移転してから何と80年!当時からの家具が未だに現役で使用されているそうです。何度か利用しましたが、私が現役学生だった頃に入り浸っていた喫茶店とは違い、とても落ち着いた雰囲気のお店です。ま、私の通っていた学校とはレベルもラベルも違いますけれど・・・。

左・右上「こころ」 右下「ルオー」

そして今は閉店してしまった喫茶「万定」は、前職で私がキャンパス内の仕事をしていた時にはまだ営業していました。

初代店主が表通りに面した店舗で果物屋を開業したのは大正3年(1914年)。その奥にある関東大震災(1923年)の後に改装したというカフェの店構えはただものではありません。当時から使われていたかのような巨大で真っ黒なレジスターも現役で稼働していました。こちらもご主人が亡くなられて、奥様が一人で営業されておりましたが、気付くと店内の明かりは消えて、店の周囲も荒れ果てて放置状態になってしまいました。数年前の街歩きのテレビ番組で、かの養老孟司先生が医学部助手として働いていた頃によく通ったと紹介されていました。給料が出た時には先生も食べたというハヤシライスの味が懐かしいです。

「万定」左は現在の様子。朽ちた感満載です。右から3枚は営業していた当時のもの。

いずれのお店も、かつては学生や教授などに愛されて今に至っているのですが、キャンパス内の飲食施設も充実して学外で過ごすことが少なくなり、感染症対策のあおりで個食を強要された今の学生の気質も変わり、喫茶店文化は転機を迎えている気がします。意味もなく集うことの尊さを知る世代からすると寂しい限りです。


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