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【名盤伝説】”Bob Dylan / Desire” 破天荒な録音スタイルでディランの魅力を100%詰め込んだNo.1アルバム。

MASTER PIECE フォークの神様ボブ・ディラン17枚目のアルバム『Desire (邦題:欲望)』(1976)です。

反骨の吟遊詩人、唯一無二の音楽スタイルで活動を続けるシンガー・ソングライターのディラン。彼は1961年に大学を中退してNYで音楽活動を始めます。ハリー・ベラフォンテとのセッションでレコード・デビュー。その後62年にメジャー契約を得てソロデビューを果たします。

その後様々な芸術家との交流に触発されて創作活動を続け、そのメッセージ性から社会派フォークシンガーとして絶大な人気を得るようになりました。

60年代半ばにはUS国内だけでなく、時代のビートルズ旋風の中でUK出身のミュージシャンとも交流するなかで、従来のアコースティック・オンリーの作風からエレキギターを含むバンド編成でのライブを行うようになり、旧来ファンから猛烈な反発をくらったと言われています。

そんな世間の風評はどこ吹く風と、社会批判と内省的な作風はますます深みを増していく中で、次々とアルバムをリリースし、シングルヒットも飛ばします。

66年のバイク事故をきっかけに一時期活動を休止。その間に復活に向けてデモテープ作りに勤しむ一方で、制作をともにしたメンバーがバンドとしてディランと活動をともにするようなります。後のザ・バンドです。

70年代になるとアルバム制作やツアーにも復帰して活動も本格的に再開。75年になるとローリング・サンダー・レヴューという小規模なホールなどでゲリラ・ライブを行うという、ある意味原点回帰のように活動します。このツアーに先駆けて録音されたのがアルバム『欲望』です。

レコーディングはNYで行われ、制作にあたっては有名無名問わずNYに在留していたミュージシャンに片っ端から声をかけたのだそうです。スタジオは何事かというほどの人で溢れ、エリック・クラプトンなどの有名どころのミュージシャンは参加を見合わせたと言います。残ったのはデビューしたてのエルミー・ハリス(後にグラミーを受賞するSSW。この録音に参加したおかげでジョーン・バエズやリンダ・ロンシュタッドなどとも交流することになったといいます)くらいで、後は全て無名新人のミュージシャンばかりでした。

アルバムはUSチャートで5週連続1位を獲得。UKチャートでも3位になり、RIAAのダブル・プラチナ・アルバムに認定されるなど、ディランのスタジオ録音盤としては最も売れたアルバムとなりました。

この録音に参加したメンバーから、ローリング…ツアーのバンドが選ばれます。特に盤全編に渡って聴けるスカーレット・リヴェラのバイオリンは印象に残るどころの話ではありません。ずっと弾いているんですものw。ツアーのライブ盤も同様。このあたりの事情に詳しいサイトがありました。「止めちゃダメ」というのはディランの指示だったようですね。

収録曲
M1 Hurricane
M2 Isis
M3 Mozambique
M4 One More Cup of Coffee
M5 Oh, Sister
M6 Joey
M7 Romance In Durango
M8 Black Diamond Bay
M9 Sara

M1は8分を超える大作。殺人の冤罪で投獄された悲劇のボクサーの無実を訴えたプロテストソング。事実誤認があるとして歌詞を差し替えて録音をし直し、先行シングルとしてリリースされます。


M2 ルーズなディラン節に絡むスカーレットのバイオリン…このアルバムの典型的な作風です。


M3 最もフォーキーな曲。エルミーとのデュエット、ディランの音楽理論を超えた主旋律にハモリを付ける・・・プロの技ですね。


M9 ディランのブルース・ハープが楽しめるスロー・ナンバー。ディラン節を心ゆくまで楽しみましょう。


ほぼ全曲(9曲中7曲)劇作家で臨床心理学士のジャック・レヴィとの共作。この方はジョー・コッカーやカーリー・サイモンとも交流があり、詩に物語性を加えるとの評がありますが・・・ディランの歌詞って、英語はもちろん(苦笑)訳詞をみても解釈は私にはハードル高すぎ。どなたかの解釈をご参考になさってください。

このアルバムはほぼリアルタイムで聴きました。ディランのアルバムは、初期はあまりにフォーキーで饒舌な歌いまわしに付いていけませんでした。初めてまともに?聞けたのはジョージ・ハリスンのバングラデシュ・コンサート出演の時。そして何よりも衝撃だったのは、このアルバムの前年にリリースされたザ・バンドとのツアーのライブ盤『偉大なる復活』。このアルバムはザ・バンドの名曲が余計に感じられるほど。まさにライク・ア・ローリング・ストーンのパフォーマンスにやられました。

基本ロック好きなので、アコギが主だと飽きてしまいますが、ちゃんとバンド入っていれば大丈夫。この『欲望』も何度聞いたことでしょう。

ディランの盤の紹介をするのなら、きちんと歌詞の背景まで調べないとダメですよね。もうこんな年頃ですが、精進させていただきます(^^;。


1970〜80年代を中心に洋物ROCK系のミュージシャンやアルバムを紹介しています。どうぞお立ち寄りください。



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