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【街角探訪】 街の記憶

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日々の徘徊のなかで街の記憶を探ります。文京区本郷編をまとめました。
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【街角探訪】 文京区本郷(1) 東京大学本郷キャンパス 安田講堂

文京区本郷と言えば東京大学。私が勤務している会社が本郷キャンパス正門前(赤門ではありません)から徒歩1分の場所にあるので、この周辺をよく徘徊しています。大学キャンパスには不審な様相でなければ自由に入構できます。時には近所の保育園の園児達もお散歩しています。 正門を入ると堂々の銀杏並木の先に安田講堂があります。安田講堂といえば、まだ私が小学生だった頃(昭和44年)、友人の家の白黒テレビに映し出された何とも騒々しい光景を思い起こします。講堂に立て籠った全共闘の学生が屋上から投石

【街角探訪】 文京区本郷(2) 忠犬ハチ公の待ち人

私が勤務している会社が都内文京区本郷にあるので、この周辺をよく徘徊しています。この街にまつわるお話をしたいと思います。 日本人なら誰でも知っている忠犬ハチ公の物語。渋谷の駅前で帰らぬ主人を待つ健気な秋田犬ということは知っていても、それでは誰を待っていたのかは私も知りませんでした。 関東大震災の後、当時は駒場にあった東京帝國大学農学部で教壇に立っていた上野博士がその主。ハチ公を大変に可愛がり、渋谷の自宅からの通勤に送り迎えをさせていた博士は、大正14年5月に講義中に脳溢血で

【街角探訪】 文京区本郷(3) 本郷弥生 弥生時代の命名の地

私が勤務している会社が都内文京区本郷にあるので、この周辺をよく徘徊しています。この街にまつわるお話をしたいと思います。 東京メトロ南北線の東大前駅から東大本郷キャンパス正門に向かう途中に「本郷弥生」という交差点があります。ここから本郷台地を東側に向かう下り坂の途中で、明治時代に遺跡調査が行われていました。その発掘調査で、いくつかの貝塚と土器の破片が発見され、従来の縄文式土器とは明らかな相違が認められたことから、現場の地名にちなんで弥生式土器と命名されたのだそうです。これが古

【街角探訪】 文京区本郷(4) 旧森川町周辺 明治の文豪達の生活空間

私が勤務している会社が都内文京区本郷にあるので、この周辺をよく徘徊しています。この街にまつわるお話をしたいと思います。 昼食後の徘徊を日課としている私は、この日、東大に面した本郷通りとは反対の西側の住宅街に向かいます。以前は神社があったとされる謎の三角地帯を抜けて、縄文時代からある台地の西端から後楽園方面に通じる、江戸時代に名付けられた新坂という平均斜度10度の急坂を下りてみます。 この辺りはかつて森川町と呼ばれていて、この地に居住していた東京帝國大学の教授だった金田一京

【街角探訪】 文京区本郷(5) 本郷通り 学生街の喫茶店

私が勤務している会社が都内文京区本郷にあるので、この周辺をよく徘徊しています。この街にまつわるお話をしたいと思います。 歴史のある東京大学の周辺だけに、その門前にあるお店の歴史も半端無いです。 「COFFEEこころ」は1955年開業の老舗の喫茶店。夏目漱石の作品にちなんで名付けたとのこと。この場所は実は新宿中村屋の発祥の地なのだそうです。学生街として賑わっていたこの周辺も、567禍で授業がリモートとなり人通りが無くなり、軒を連ねていた古本屋や飲食店も、店主が高齢化するなかで