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記憶しておいた方がよいことはふたつ。ひとつは、とてもにがい経験で、もう二度としないと誓…
仏陀はきのこを食べて死んだとされている。 いろんな死に方があるが、キリストはものすご…
本の表紙というのは大切です。建物でいえばファサード、人でいえば顔といったところでしょう…
僕の愛読書のひとつ、「侏儒の言葉」より引用する。 この文章に初めて触れたときの驚き、…
不幸について考える時に、まず思い出すのは渡辺一夫というフランス文学者が書いた文章のこと…
街を歩いていると街路樹というものが植えられている。自動車の窓から見える街路樹の幹はささ…
ある春の朝、街路樹は緑に燃えていた。都会の雑踏に建つその産婦人科医院は、昭和の思い出に浸り続けているような出で立ちであったが、日々新しい命と向き合ってきたせいか、決して古びた印象を与えなかった。 指折り数えて待つ、という確かな経験をそれまでしてきてこなかった僕は狼狽気味に一階の待合で看護婦の到着を待った。コロナの検査をしたのちに陰性とわかれば二階の分娩室に案内されるのである。数分の間であったが途方もなく長く感じられた。陰性、スリッパをしっかり履きなおして階段を登る。 妻