のほほん双六 #005 おはなし ブゥ家の三兄弟_04
第四話 そして、出会う
僕たちの背後の茂みがガサガサ揺れだした。リスたちは一斉に木の影へ隠れる。
「来たっ!」とリスたちの声。なにを連れてきたのかわからないままだけど、どうやらヤバそうだ。僕たちは木に登れないし逃げられない、この気配はもしかして…。
「ギャーーーーーーーーーーーーーーーッ」ブゥブブの悲鳴とオオカミの悲鳴が同時に森の中に響き渡る、ってオオカミの悲鳴?
僕らの前に現れた一匹のオオカミは身を丸めて震えている。好奇心で近くへ来たリスが「あのオオカミ、おびえている?」確かにそう見えるけど、油断させておいて僕らを襲うってこともありえる。オオカミの首の辺りのもっさりした毛がモゾモゾ動いて、そこから一羽の青い鳥がひょっこり顔を出した。わぁ、なんて美しい鳥なんだ。青い鳥は羽でオオカミの頭をひと撫でし、僕たちのほうを見た。
「アタシは瑠璃の鳥のヨツユ。あなたたちは?」
ブゥブブが小声で「無視だ、無視!」と言っているけど、聞かれたなら答えないと。
「僕はブタのブゥブブブ。こっちは兄さんのブゥブブ。」ブゥブブがため息をつく。
「ほらっ!あなたも!」ヨツユはオオカミの頭をつつくとオオカミは顔を上げ、僕と目が合った。瞳の奥に深い悲しみと孤独、優しさがあるように感じた。彼は不安げに声を、声は低くてガラガラだった。
「俺はオオカミのツキカゲ。」
そう言うと、目からひと粒の涙が流れ落ちた。
「驚かしてすまない。」
励ますようにオオカミの周りをヨツユが飛んでいる。
小声でブゥブブが話しかけてきた。「今なら逃げられる、逃げようブゥブブブ。」
「ピョルルル」ヨツユが僕の頭の上で止まった。ツキカゲが不安げに僕らの方を見ている。
「出会ったばかりだけれど、どうかツキカゲの話しを聞いて欲しい。彼は乱暴なことはしないし、なにも悪いことは起きないから。」
それを聞いたブゥブブが怒り出した。
「フンッ嫌だね。僕らの両親や仲間たちはオオカミの餌食になっているんだぞ!話しを聞いてくれって?この恥知らずめっ!」
「いいよ。僕は聞く。」
呆れるブゥブブ。ごめん、だって気になるから。ツキカゲは頭を下げ、僕らの近くに寄って来た。
「オレは君らのことを襲わないし、食べる事もしない、そもそも出来ないんだ。」
ブゥブブが僕の腕を掴んでこの場から離れようとしている。
「出来ないって、どうして?」
「意地の悪い魔女が呪いをかけた。オオカミの本能を奪う呪いを。魔女は怒ったオレの母親によって死を与えられた。でも、呪いは解けなかった。」
そう話すと、ツキカゲはモゾモゾと何かを取り出し、僕に手の中にあるものを見せてくれた。手のひらには木の実があった。
「熱が出たって聞こえたから…この木の実は熱を下げるのに役立つんだ。」
「彼は優しいのよ。」誇らしげなヨツユ。
「あ、ありがとう。」
ブゥブブは僕をひと睨みしたあと、ため息をついて頭を抱えちゃった。 ーつづくー
まちがいさがし
まちがいさがしの答え
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