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のほほん双六 #039 おはなし ブゥ家の三兄弟 08

第八話「鈴の音といっしょにやって来たのは」

遠くに聞こえていたはずの鈴の音が僕のそばからも聞こえると気が付いた時、焚き火の炎の明かりに映るそのヒトは微笑みを浮かべて僕を見ていた。

ボロボロの服は土と砂にまみれ汚れている。手には杖。杖に鈴が付いているや。どう見たって怪しいし、胡散くさいはずなのにそのヒトはうららかな日和を感じさせた。
さっきまでの焦りや恐怖がスーッとどこかへいってしまい、僕は不思議な心持ちの中でその場に立っていた。

うららかな日和のようなそのヒトは、カゴからヨツユを取り出し、
『トリ肉か…久しく食べていないねぇ。』
「ピーーッ」あわてるヨツユ。オタマを振り上げる僕。あれ?体が動かない。
「アタシを食べたら死ぬわよ!アタシには毒があるんだから‼︎」
『ふふ…知っているよ。冗談で言ったのさ、おや?怪我をしているね。』

ヨツユを包んでヒトの手が光る。
「ピピピッ」ヨツユが嬉しそうに空を舞っている。
突然身体がぐらついた。手にしていたオタマが無くなっている。
オタマはうららかな日和のようなそのヒトの手にあった。
『食事なんてどれくらいぶりかな。キノコの風味がいいねぇ。』

『お師匠さまっ!』
ふたりの妖精がうららかな日和のようなそのヒトに抱きついた。
さっきまでのダンマリはなんだったのか、大声で泣いている。

『やあ、今まで不安にさせてしまってすまなかったね。エライ、エライ、良くやったよ。おや?他の子たちはどうしたんだい?そうか、シルシを持ったものたちについて行っているのか。』
ヨツユが僕の頭に止まり、くちばしで軽く突つく。

「あの…あなたは一体誰ですか?」

『やあ、すまない。ワタシは妖精たちと縁のある者で、名前はーふむ、気に入った。「うららかな日和のような」という者さ。100年近く前に悪い魔女に出会って、この石に封印されてしまってね。その時にワタシの大事な力の一部をその魔女に盗られてしまって。ははは、油断したよ。』
そしてボロボロの服の中からひとつの石を取り出した。

エッ⁉︎僕の心の中がわかるの?怖っ。あの石…ツキカゲが僕をド突いた時の石かな。
「魔女…。」ヨツユがつぶやく。

『心当たりがあるのかい?瑠璃色の鳥さん。
力を取り戻したいのだけれど、魔女の気配がしなくてね。ん?ちょっとまった…この感じは、おっ!ワタシの盗られた力の気配は感じるよ。それも2つの場所からだ。』

「ふがっ」

目を開けると、あたりはもうすっかり日が落ちて夜になっていた。
頭がズキズキして身体中が苦しい…って縄で縛られて木に吊るされている。あとここはどこなんだ?木のきしむ音がしてブゥブブはドキリとした。

『目が覚めた?』
妖精の声が背中の方から聞こえた。
ブゥブが【災い】に連れ去られたことを思い出す。そのあと頭に衝撃が走って…

『オオカミが君を石でド突いて気を失わせ、ここまで来たところで縄でぐるぐる巻きにして木に吊るしたんだよ。』
「オオカミ…ツキカゲが。」

昼間のあの時、もっと強く反対しておけばよかった。
でなければブゥブがあんな目に会うことだってなかったんだ。
あふれ出てくる涙が下へポタポタ落ちて消えていった。  ーつづくー

イラスト(挿絵)

こんなところにアタシを閉じ込めるだなんて、あんまりよっ!

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