見出し画像

白いワンピースの女の子

この部屋に越して来てから、朝は必ず5時15分に目が覚める。
目覚ましもかけていないのに。
よく眠れているからだろうか。
自然と目が覚めるのはいいことなんだろう。

1週間ほどが経った頃、通勤電車の中で白いワンピースを来た人を見て思い出した。
そうだ、昨日夢を見たんだった。
白いワンピースの女の子だった。
それ以上は思い出そうともしなかった。

次の日は目が覚めてすぐ思い出した。
夢を見ていた。
やっぱり白いワンピースの女の子だった。
どんな夢だったのかは覚えていない。
ただ白いワンピースを着た女の子が近くにいたことだけ覚えている。

次の日もその次の日も5時15分に目が覚めて、その直前まで白いワンピースの女の子が近くにいた夢を見た。

そうだ、明日は5時に起きよう。

アラームのおかげで予定通り5時に目が覚めた。
夢は見ていなかったようだ。
このまましばらく横になっていよう。
目を閉じた。

すると閉じている瞼が黄色くなったので目を開けてみると、玄関のセンサー付きライトがついていた。
何かに反応したんだな。
もしかしてゴキ!?やだやだ。
時計を見ると5時15分だった。
いつもの時間だから起きることにしよう。

次の日、私はやはり5時15分に目が覚めた。
体が重い。
白いワンピースの女の子もやはり直前まで近くにいた気がする。

毎日、同じことの繰り返しだった。
日に日に体がだるくなっていた。
寝不足かもしれない。
そしてその女の子は毎日少しずつ私に近づいているような気がしていた。

そして

その日も5時15分に目が覚めた。
目も体も気だるく重い。
関節に力が入らない。
息をするのも辛い。
白いワンピースの女の子はやはりさっきまですぐそばにいた。

なんとか体を起こすと、枕元には白いワンピースがたたまれて置いてあった。

ああ、そうだ、これを着るんだ…
これを着ればいいんだ…

それ以来もう白いワンピースの女の子の夢を見なくなった。

ただ

私は毎朝5時15分にこの部屋を彷徨うようになった。
白いワンピースを着て、
次の住人を待っている。


山根あきらさんの企画に参加します。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?