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新型コロナと超過死亡についての都道府県比較(代表例による検証)

日本の超過死亡について、全国、東京圏から東京都、地方部として茨城県、関西圏から大阪府、地方部として和歌山県の過去5年余の推移を見ながら、昨今の超過死亡の多さがどのような理由によって大きな数字となっているのか探ってみた。

なお今後、趨勢と言う言葉を多用する。
高齢化の進展に合わせて、毎年亡くなる人の数が増え続けている。そのことを考慮しないと、データの解釈を誤る可能性がある。
死亡予測値や、閾値上下限は実態に照らして妥当なのか、趨勢との乖離はないのか、このような観点からグラフを読み解いていきたい。
このため、コロナ前の趨勢を示す赤点線による補助線や、趨勢を考慮した場合の閾値上限値などをオレンジのカーブで図上に表示した。

どうも補助線には傾きがあるようだとか、2020年以降は直線上に乗らないとか。オレンジのカーブって何を表しているのか、何故実態と違うのだろうか。
そのような視点でグラフを読み取っていただけたら幸いである。なお、計算して図化したものではなく、図上作図であるため、あくまで参考とされたい。

※趨勢等に関しては筆者のもう一つの記事をご参照ください。

まずは日本全体のデータから。

なお、各グラフの右下にコメントを記載したが、文字が小さいためグラフの下に転載した。

※グラフを見るときは画面いっぱいに拡大してご覧ください。細かいところがよく分かります。

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次に東京都と茨城県の比較

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次は大阪府と和歌山県の比較

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まとめ

趨勢を考慮すると、第7波で一部大きく生じているものの、基本的に各自治体とも特別大きな超過死亡が発生しているわけではない。
しかし、このグラフに用いられている予測値、閾値上限の計算方法では大きな数字が算定されてしまうのだろう。

また、大都市を抱える自治体では新型コロナの流行に合わせて超過死亡が発生しているが、地方都市では超過死亡が余り発生していない。
ただし、2022年当初からの第7波オミクロンでは地方都市も含めて全ての都道府県において多少なり超過死亡が発生している。その数字は新型コロナの感染者数(死亡者数)と概ね比例しているようだ。

最近、コロナ死の人数より超過死亡が非常に多いことに不自然さを感じている人が多いようだが、2020年に死亡数が大きく減少し、超過死亡の元になる死亡予測線が実態と合わなくなってしまったことが要因の一つになっているようだ。その点を少し掘り下げてみる。

2020年の死亡者数が減少した理由は、色々な方が各方面で説明されているが、例えばインフルエンザが2020年初めは歴史的暖冬で2月以降は大幅に減ったこと。その後、2020年はコロナ感染予防が功を奏し、インフルだけでなく様々な感染症が軒並みほぼゼロとなったこと。
初めての新型コロナに対する恐怖心から出控えが徹底していたことや多くの企業でリモートが導入され、外出機会が減って感染症や不慮の事故などが減少したであろうこと。高齢者施設でも厳重な予防策が取られていたことなどが例として挙げられている。

これらの結果、2020年は死亡者数が対前年比で8千人減であった。死亡者が2万人~2.5万人程度の毎年増加している近年の傾向(趨勢)を考慮すると、趨勢より3万人程度少なかったのである。

2021年の予測死亡者数は2020年のこの異常値に引っ張られて少なめの値となり、予測閾値上限(超過死亡の基準線)も少なくなっている。
このことで、当然ながらその後の超過死亡数は多めに算出される結果となった。

つまり、超過死亡数に本来カウントすべきでない「趨勢との乖離分」も含まれる結果となっているのである。

これは予測値の算定方法の問題であり、可能なら実態を反映していない数字は修正されるべきだと考えられる。

なお、2021年の死亡者には、2020年に幸いにも感染症に罹らず⾧生きした超高齢者が寿命を迎え、例年より一年遅れで亡くなった方も含まれているだろう。
そう考えると、いわゆる繰り越しのような概念だが、2021年は2020年に計上されなかった分が上乗せされて、趨勢以上に多くなってもおかしくないと考えられる。

現時点では具体的に個々の数字を示していないが、こういう統計数字を使って物事を言及する時は「数字のマジックみたいなもの」も含めて、広い視野で俯瞰する必要がある。
単純な足し算引き算ではないものを持ち出してセンセーショナルな主張に結びつけた記事などを見ると、その人の数学力も見えてしまう。ぜひじっくりと数字を読み解いて欲しいものである。

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