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子どものプレイに怒らずに、分かりやすくアドバイスを伝えるいくつかのコツ



 今回の記事では子どものプレイに対して、怒って「怖さからの逃避による一時的な行動変化」をさせるのではなく、いかに落ち着いて、分かりやすく伝えることで「深い理解に基づく長期的な行動変化」を促すか、その方法論について書いてみたいと思います。

 そもそも怒ることで、子どもは恐怖からの逃避モードになることを前回の記事で説明したのですが、これって行動変化が一時的で限定的なだけがデメリットではなくて、大人が伝えたいことを、子どもが聞くための受け入れ態勢が無くなってしまう、という要素も大きいのです。

 子どもが(実は大人も同じなのですが)、じっくり考えて、理解するためには、創造的に思考する必要があります。創造的に思考するには、安全で落ち着いている状態が必要です。「怖い」となっている子どもに、どんなに考えさせても「怖い、とにかく逃げたい」という感情が先行するので、思考が深まりません。大人の顔色を見て、間違えないように、怒られないように回避することでいっぱいになってしまいます。これでは、子どもの理解につながりません。

 さらにサッカーに関して言うと、他のスポーツ(例えば野球など)に比べて、状況が常に流動的なので、その分プレイヤーの判断の自由度が高く、自主性、積極性、創造性が求められます。創造性が求められるからこそ、どのプレイを選んでも怒られない(少なくとも怖い思いはしない)という、心理的な安全性が重要になります。7褒め3アドバイス方式を勧めているのも、こうした考え方がベースにあったりします。積極性のベースには、心理的安全が必要です。

 前回の記事で「単に他に方法を知らない」ように見えると書きましたが、実際に「怒るなと言うが、じゃあどうすれば良いのか」と話す保護者も、児童相談所の経験で多い印象です。そうした方向けに、ごくごく簡単にお勧めの方法をいくつか書きたいと思います。基本的にはペアレントトレーニングの考え方を、そのままスポーツに持ってきているだけです。

 まず、とにかくシンプルに「具体的な行動」について伝えます。コーチであれば「こうプレイして欲しい」という感じでしょうし、保護者であれば、基本はコーチが指示を出しているので、子どもが混乱することを避けるために、コーチの指示をかみ砕く程度で「こうしてみたら?コーチの言っているのは〇〇ということじゃないかな?」という感じでしょうか。

 避けたいのは、あいまいな指示です。「ちゃんとやれ」「よく考えろ」などは、一見アドバイスに見えますが、実際には子どもに、ほとんど伝わらない場合が結構あります。でも、こうしたあいまいな指示は、すごくやりがちです。あいまいな指示をしている時は、大人が子どもに具体的にアドバイスをするための、頭の整理を大人自身がつけられていない可能性が高いです。ですので、自分があいまいな指示をしたことに気が付けたら、大人自身が具体的な行動にかみ砕く必要がありますし、もしコーチが「いい加減なプレイをするな」等、あいまいな指示をしていたら、保護者は「味方がボールを失ったら、すぐに切り替えて自陣に戻るということじゃないかな?」とか、「ディフェンスで相手選手に最後までついていった方が良いかもね」とか、かみ砕いて一緒に考えるために、具体的な行動として伝えるというのが、良いかと思います。

 もうひとつは、肯定形で伝えるということです。避けたいのは否定形です。「簡単に飛び込むな」よりは、「相手と一定の距離を保ちながら、スピードを落とさせて味方の戻りを待とう」という感じでしょうか。言っている中身は同じですが、「簡単に飛び込むな」だと、子どもは「じゃあどうすれば良いか」は自分で考えないといけないので、難易度が上がります。もちろん、考えてできるならそれでも良いのですが、最初は難しいかもしれません。それよりはシンプルに「〇〇してみよう」と伝える方が、できる可能性が高まります。余裕があれば、一度、一緒にやってみます。そうすると子どもの理解度が分かります。

 7褒め3アドバイス方式でも書きましたが、最初にほめるのもとても重要です。どんなに適切なアドバイスでも、子どもに聞く気持ちが無いと、役に立ちません。ほめるのが難しければ、せめて気持ちに理解を示します。「確かにあの場面では〇〇だったよね。分かるよ」という感じでしょうか。アドバイスを伝える前に、ワンクッション置いて、それから「もう少しこうしたら、もっと良いかもね」と伝えることで、素直に聞いてくれる可能性を上げます。

 避けたいのは長い説明です。大人は子どもより知っていることが多いので、ついたくさん説明したくなるのですが、伝わりにくいです。それよりは1つに絞って、シンプルに伝える方が行動の変化につながりやすいです。長い説明をすると、つい、大人が興奮していやみを言ったり(「どうせやる気がないんだろ」「それでいいと思ってるんだ」)、おどしたり(「もう連れてこないよ」「置いて帰るよ」)、罰を与えたり(「明日は練習行かせないから」「一人で反省してろ」)ということが起きがちですが、どれも伝わりにくいし、そもそも子どもからすると「怖い」ので、結果的に子どもの行動の長期的かつ本質的な変化につながらず、大人も子どもも疲れるオチになりがちです。

 ほめて、かみ砕いて具体的に行動を肯定形で伝えて、一緒にやってみても、実際にはなかなかプレイがすぐに上達する訳ではありません。同じ失敗を繰り返すのが、むしろ普通かと思います。それでもそうしたプロセスこそが、社会人になった時に役に立つ、トライ&エラーの経験そのものですし、結局は時間をかけてトライ&エラーをする中でしか、子どもの本質的な学びと深い理解は作られないのだと思います。ですので、時間がかかるものと、大人は最初から自分に言い聞かせておく必要があります。忍耐力が大切ということですね。

 ひとまず、今回の記事はこれで終わろうと思います。私自身も偉そうなことを書いていますが、まだまだ修行の身なので、忍耐と言い聞かせながら、子どもたちの成長を見守っていきたいと思います。長文、乱文、最後までお読みいただきありがとうございました。それでは良いサッカー体験を!

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