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少年サッカー(キーパー)保護者心得(7褒め3アドバイス方式)

<まえがき>

お読みいただきありがとうございます\(^o^)/

本書は主に小学生ゴールキーパーの保護者に向けて、ごく個人的な心得(7褒め3アドバイス方式)を備忘録的にまとめたものとなります。基本はキーパーについて書いていますが、7褒め3アドバイス方式自体は、他のポジションの保護者でも、同じだと思っています。

筆者は約5年間、小学生ゴールキーパーの父親を経験した者です(フィールドプレイヤーだった兄の保護者としての期間も含めると、少年サッカー保護者歴はトータル9年間。途中、4級審判も3年経験)。初めてサッカーにふれるという保護者(あるいは全くスポーツ経験の無い母親など)の方を念頭に書きましたので、経験者やある程度知識のある方には冗長に感じる部分もあるとは思いますし、違う考え方の方もたくさんおられるとは思いますが、あくまで一個人の個人的な見解として、ご容赦ください。


<ゴールキーパーの特殊性>

ゴールキーパーはサッカーの中で最も特殊なポジションです。これはルール上、唯一手が使えるということも当然そうなのですが、ここで触れたい特殊性は「守備専門のポジションである」ということです。守備専門であるということには、2つの意味があります。①必ず失点にからむ②得点することは基本的にない


前提として、サッカーは最もロースコアゲームなスポーツのひとつです。1−0で試合が決まることも全然珍しくありません。これが意味するところは、サッカーにおいての1得点はとても重要だということです。5点以上入ることも珍しくない野球や、もっとたくさんの得点が入るバスケットボールなど他のスポーツにおける得点と、ここが違います。それがゆえに、サッカーでは得点後の派手なセレブレーション(ロナウドのあれとかですね)がある程度許されています。それくらい得点は奇跡的だということです。ここがサッカーというスポーツの醍醐味とも言えます。その醍醐味とも言える得点にほぼ関与しない。これだけで、キーパーというポジションは、とりわけ小学生などにとっては、ある意味とてもやりがいを持ちにくいポジションです。ですので、どうやって子供にやりがいをもってもらうかは、保護者としてそれなりに工夫がいると思います。

逆を言えば1失点が非常に重たいです。わずか1回のミスでチーム全体が負けとなることが、日常的に起こり得ます。たとえば前後半合計40分間、ごくごく無難なプレイをキーパーとしてこなしていても、ラストワンプレイ、たった1回、ミス(例えばイージーなシュートが止められなかった、ゴールキックが相手フォワードに渡ってしまったなど)から失点して、もしその試合が0−1の敗戦となれば、皆の記憶には、その1回のミスしか残りません。これは事実です。では、こうしたことについて、ゴールキーパーや、その親はどのように考え、どのように事態を受け止めるべきでしょうか?

私は、全く気にする必要がないと考えていますし、子供にもそのように心がけるように、常に声をかけています。理由を以下であげていきたいと思います。

・失点の責任はキーパーだけにあるわけではない

当然、状況によって、実際にどの程度の責任がキーパーに求められるかは異なるとは思います。しかし、ほとんどの場合、失点は最終的にキーパーに防ぐチャンスがあるだけで、その前段階で失点を防ぐことができた可能性があるはずです。シュートを打たれたのであれば、そもそもシュートを打たせないディフェンスができなかったことが、失点の原因の一つになっているはずですし、自陣にまでボールを運ばれる前に、前線でのディフェンスが機能していれば、相手の攻撃はなかったかもしれません。言えばきりがありませんが、大事なことは、最後にキーパーに失点を防ぐチャンスがあっただけであって、そこだけに責任を求めるのは理不尽で間違っているということです。これはあきらかなミス、例えばゴールキックを相手選手に渡してしまい、そこから失点したなどであっても、キックオフから味方チームが一度もボールを失わなければ、そもそもゴールキックにはならないわけで、同じだと思います。極端な意見にも思えますが、失点をキーパーのみの責任にするのは、これよりも極端な意見だと、個人的には思います。

・失点は敗戦の理由のひとつでしかなく、得点が少ないことも、同じだけ考える必要がある

例えば0−1で試合に負けた場合、何が敗戦の理由でしょうか?失点しなければ負けないのはその通りですが、失点より得点が多ければ負けないのも、また道理だと思います。しかし、往々にして得点機会の損失は見過ごされがちです。フォワードの選手が決定的なシュートをポストに当てた場面は、むしろ称賛に近いニュアンスで振り返られることすら、あるかもしれません。いや、それはそれで良くて、むしろ惜しかったシュートはポジティブに「ナイスシュート、もうちょっとだったね」と振り返れば良いと思うのですが、同じようにキーパーのプレイに対しても「ナイスプレイ、もうちょっとだったね」と、ポジティブに振り返ることが求められるのではないでしょうか?

・キーパーのミスは失点に直結するが、フィールドのミスはそうではない

キーパーというポジションの特殊性のひとつですね。フィールドの選手がトラップのミスをしても、誰も覚えていませんが、キーパーの選手がたった1回、トラップミスをすれば、それは失点につながってしまうかもしれません。そのくらい、難しく緊張感の高いポジションを小学生でやっていることは、そもそも特別に配慮されないといけないと考えます。キーパーをやっている選手には、その部分に対して、他のポジションの選手以上の尊敬と配慮が必要だということです。

・反省はプレイの改善に必要だが、責任の押し付け合いはチームを悪い方向にしか進めない

前述の通り1失点が重たいので、チームが負けた場合、その責任を失点にからんだ個人(となると、必ずキーパーが含まれます)に帰属しがちになるのですが、繰り返しますが、失点はチーム全体に責任があり、改善も本来、チーム全体に必要なはずです。もちろん、キーパーのあきらかなミスなどは、反省する必要がありますが、むしろ明らかなミスは5秒反省して、次から同じミスをしないように切り替えて集中するのみで、しつこく失敗を責める(それは周囲もキーパー自身も)のは百害あって一利ありません。もちろん、同じミスが続くのであれば、普段の練習から、それが技術的なことが原因なのか、精神的なことが原因なのか、プレイ分析をしたうえで、個人として改善に取り組んでいくことが必要ですが、少なくとも試合当日は、失敗はひきずらないメンタリティをチームとして雰囲気づくりしていくことが、とても重要だと考えます。

・失敗を恐れるマインドセットだと、結果的に消極的になり、プレイの質が低下する

これは非常に重要です。どんなスポーツでも、失敗を恐れて消極的になることは、良い結果を生みません。では、消極的にならないためには、何が必要でしょうか?「消極的になるな」「積極的にプレイしろ」と声をかければ、積極的になるでしょうか?答えは、なりません。そんなに簡単ではないです。

選手を消極的にするのは、簡単です。常に失敗を批判し、ダメ出しをすれば良いのです。チームメイトからもそうですし、自分より年齢も経験も高い大人からであれば、なおさら効果的です。失敗を批判されれば、小学生であれば、失敗をしないように、必ずプレイが消極的になります。

蛇足ですが、たまに「なんで積極的にプレイしないんだ?」と大人が子供に質問風の詰問をしているのを目にしますが、それは、大人や周りが、その子を消極的にするだけのダメ出し、失敗に対しての批判をしているからに他ならないと思います。ですので、消極的にプレイしている子を見たら「あぁ、自分も含めて、まだ失敗を許容して、勇気を持たせて上げるだけの環境が作れていないんだな。ごめんね」と思うのが、正しい大人の考え方だと、個人的には思っています。

ダメ出しをするつもりがなくても、「もう少し、あそこをこうしてみたら?」と声をかけるだけでも、場合によっては、小学生であれば「批判された」「ダメ出しされた」と受け止めてしまうこともあります。自分に少しでも自信がない時期なら、相当慎重な声掛けが必要と考えます。


<保護者が心がけておくいくつかのこと>

上記を踏まえて、個人的におすすめするのは、7褒め3アドバイス方式です。説明します。

まず、子供にプレイについて声をかけるときは、必ず7つ褒めてください。まちがっても、先に改善点を伝えないでください。必ず先に、いかに今日のプレイが良かったか、どこが素晴らしかったか、必ず褒めるところから入ります。絶対7つ褒めてとまでは言いませんが、7対3のバランスは守るべきと考えます。ですので、伝えたい改善点、アドバイスが1つなら、少なくとも3つ褒めてから改善点を伝えることをおすすめします。褒める内容はお任せします。褒めるのが苦手、何を褒めて良いのか分からないという保護者の方でしたら、とにかくキーパーという最も過酷で大変なポジションをやっていること、そのものをねぎらうことを、まずはやると良いと思います。あとは、かっこよかったとか、元気で頑張っていたとか。その他、気がついた良いプレイを具体的に伝えてあげられれば、バッチリだと思います。逆を言えば、子どものプレイを見るときは、常に、どこをほめるかという視点で見るクセをつけることを強くおすすめします。そして、積極的にプレイすることを期待するなら、子供なりに積極的にプレイしたと思われるシーンを、とりあげて褒めておくことをすすめます。仮にその結果が失敗だった(果敢に前に飛び出したが、ボールに触れなかったなど。よくあります)としても、積極性があったプレイを褒めておくと、少しずつ積極的にプレイする可能性が上がっていきます。間違っても結果論で、積極的な失敗をダメ出ししないようにしましょう。二度と積極的にプレイしなくなるかもしれません。

積極性に関して言うと、味方へのキーパーからの声掛けについても、保護者からなるべく取り上げて、褒めておきたいことのひとつと考えます。理由はいくつかありますが、まずひとつは、すぐできるからです。ボールが関与するプレイに関しては技術の向上に時間がかかりますが、声を出す、声をかけるということは、主に頭の整理とメンタルの要素がほとんどですので、比較的すぐに取り組めて上達できる部分です。ですので、ちょっとでも声を出してプレイしていたら、褒めておきたいですし、改善点として取り上げるポイントとしても、私の場合は、キーパー初期には多かったと思います。上手なキーパーは、ほとんど例外なく大きな声で味方へコーチングと声出しをします。ここがキーパーとして上達すると、チームの雰囲気も少しずつ変わっていくはずです。チームの雰囲気が失敗を引きずらない、ポジティブなメンタリティになると、良い循環が生まれます。これが、声かけを取り上げて褒めたいもうひとつの理由です。また前述のとおり、キーパーは得点にからまないので、やりがいを持つとすれば、チームの勝利が重要です(フォワードだったら、自分が得点すれば、極端な話チームが負けても平気という子はいます。でもキーパーで、どんなにファインセーブを連発した試合でも、チームが負けて平気という子はほとんどいないと思います)。誰よりもチームのことを考えて、声をだす、味方を鼓舞するというのが、キーパーというポジションには望ましいスタンスだと思います。そのほうが、やりがいが持ちやすいです。

ちなみに、我が家は現在中3の兄が小学校低学年の頃から、試合はほとんどビデオ撮影して、帰宅後に見られるようにしていますが、兄も小学6年の弟も、すぐに私と一緒にビデオを見ることをせがみます。理由は単純で、自分の一番良かったプレイを一緒に見て、褒めてもらいたいからです。

自分のベストプレイだけ見ていて大丈夫か?と思われる保護者もいると思いますが、大丈夫です。多くの場合、流れで1試合見ることになりますし、仮に見なかったとしても、自分の良いプレイを客観的に、ビデオで見るというだけでも、とても得るものは多いです。

ビデオを一緒に見るときも、絶対に7褒めて3アドバイスの割合は守ってください。むしろ、最初のうちは、9褒めて、アドバイスは1つだけぐらいが好ましいと思います。そうやって、少なくとも親からはサッカーに関しては、とにかく褒められる、ビデオを見るときは、自分の良いところを親と共有できる、という体験にしておくことで、まずサッカーを好きになってくれる可能性が上がります。サッカーを上手になるためには、サッカーを好きになることが一番の近道です。サッカーを好きになるために、保護者ができる最大の貢献は、とにかく褒めることだというのが、私の考えです。そして、子供がビデオを見ることをせがむようになれば、ビデオでプレイを外から客観的に見る習慣を獲得しつつあるということです。そのうち、勝手に自分で試合後にビデオを見て、自分のファインセーブと、失点シーン、得点シーンを振り返るようになります。そうなれば、しめたものです。

プレイの改善点について伝える際も、相当慎重に言葉を選ぶことをおすすめします。「◯◯がだめだった」とか「◯◯ができていない」などの否定形もできれば避けましょう。「もう少し◯◯してみるのは、どうかな?」「お父さんは◯◯してみるのが、良いのかもなと思ったけど、どう思う?」など、提案するくらいが、無難かもしれません。どのみち、監督やコーチなどからは、テクニカルなアドバイスについては、厳しい言葉も含めて、既に言われていることも多いので、「監督やコーチからは、何か言われた?」「それについてどう思った?」という感じで、気持ちを聞いてあげて、ねぎらいつつ、こうしてみたらどうかな?と提案するという流れが、良いように思います。


とにかく、間違っても子どものプレイに対して、保護者が苛立ったりダメ出しをしたり、ましてや怒ることはNGです。もし、子どものプレイにイライラしているようなら、保護者の気持ちが落ち着くまで、サッカーの話はしないほうが無難です。ダメ出しをするくらいなら、何も話さないほうが、まだましだと思います。

たまに、子どものプレイに怒っている保護者や監督、コーチを見かけますが、サッカーのプレイに関して、基本、大人が子供に怒ることは、必要ないと思います。なぜなら、サッカーを含めてスポーツというのは、究極的には遊びだからです。遊びは楽しむためにやっているのです。もちろん、勝ちにこだわらないと楽しくないので、一生懸命遊ぶように、子供に求める、手を抜いたり、いい加減な気持ちで遊んでいたら、楽しくならないことを教えることは、ときに必要だと思いますが、私の知る限り、手を抜いてプレイしている子は、少なくとも今の小学生にはほとんどいません。子供のプレイに「ちゃんとやれ」「なんで〇〇できないんだ」と大人が怒るというのは、大人自身が勝ちにこだわり過ぎて、大切なものを見失っていると思います。もしあなたが、子どものプレイでイライラしたり、怒りの感情が湧いてくるようなら「所詮は玉遊び。失敗も楽しむもののはず」と冷静になりましょう。そして、にっこり笑って「サッカー難しいな!でも、だから面白いよな!」と子どもに言ってあげましょう。

誤解があるとよく無いので断っておきますが、スポーツは遊びだからといい加減で良いとは思っていません。むしろ、遊びだからこそ本気で取り組まないと、学べないことが多いのだと思います。スポーツの本質的な価値は、勝ち負けという結果にあるのではなく、本気でチームメイトや周りの大人と、遊びに取り組むなかで学ぶ失敗や成功の体験というプロセスにこそあるのだと考えています。それこそが、社会人になって、最も役に立つからです。トラップの技術なんて、プロになる人以外は、役に立たないですからね。


さて、長々と書きましたし、最後はお説教臭くなって申し訳なかったですが、覚書としては以上になります。

それでは、よいサッカー体験を!

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