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認知症とガンと父 その③

今朝早くから電話が鳴ったので何事かと思ったら
母が何か用事を頼みたかったようで、その電話でした

今日は、長男夫婦が帰省していて
いろいろと家のことをしようと思っていたことを伝えると
「じゃあ、いいわ。何とかやってみる」とのこと

父が入院している間に、自宅を改造(?)しているらしく
ホームセンターで調達したいものがあったのだとか

そんな話をしていると、母がこんな話をしてきました

先日、父の着替えを持って面会に行ったとき
看護師さんから「面会は1日1回までとなっていますので」
とお𠮟りを受けたとのこと

午前中に面会したとき洗濯物を持ち帰ったため
夕方補充するために持って行ったところ、そう言われた、と

まだまだ病院では感染症拡大予防のための面会制限があって
父が入院している病院では
「1回あたり30分まで」
「1日4人まで」
「1日1回まで」とされているようです

ん?
でも、この前は妹が面会した後、時間差で私も行ったけど
お断りはされんかったような?
この時は妹が十数分、私もそのくらいだったから
合計30分以下ということで認められたのかな?

今回母は午前に30分面会していたから夕方はNGだったのかな?

そこらへんがよくわからないのですが
母の口調はその対応に不満がある様子でした

そして後日、再び父の面会をしたとき
父が先日持って行った着替えのシャツを4枚重ねて着ていた、と
「もう、お父さん、そういうこともわからんのんじゃけ」
と母は苦笑いしながら私に報告してきました

「看護師さんは、お父さんがシャツを4枚重ねて着とっても、病衣を着ていなくても、直してくれんのんよね。なんか、ここの看護師さんは、冷たいというか、優しさがないような気がするんよ。」
母としては、肌着のシャツを4枚重ねで着てしまう、判断能力の落ちた父が放ったらかしにされているように感じたのだと思います

私も、元看護師なので、夜間休日の勤務体制は予想がつきますし
看護師側の事情は理解できるのですが
看護師側にとって「これくらいのこと」と思えるほどの
些細な事でも、患者家族にとっては自分たちの尊厳を
脅かすようなことになってしまう可能性があるってことですよね

それにしても、病棟看護師の業務は多すぎると思います
やること、抱え込むことが多いので
「ゆっくりと患者の傍らに寄り添う」ことなんて
ほぼ不可能に近いんですよね

でも、看護の本質は、本当はそこにあるんですけどね…
私は、病棟看護師時代、常に葛藤していました
1日8時間の勤務で7~8人の患者さんを受け持ち👇
おむつ交換、清拭、陰部洗浄、創傷処置、検温、点滴交換(抗生剤や輸血や抗がん剤投与なども患者ごとに決められた時間があるため、数分刻みで交換することもある)、食事介助、口腔ケア、痰の吸引、吸入などの処置、ナースコール対応、トイレ介助、入浴介助、術後の歩行介助などなど

これらを受け持った患者さん一人一人に対応していると
下手すれば自分の休憩時間も取れないほど病棟内を動き回るんですよね
患者さんが話しかけてきても用件だけ聞いて対応する…
本当はもっと伝えたいことがあるのかもしれないのに
そこに「ゆっくり」時間を割くことができませんでした

病院からはできるだけ残業をしないように言われます
なので、とにかく時間内に自分がやらなければならないことを
「達成」しておかなければならないんです

なので、母が抱いたような不満の気持ちを
患者さんご家族さんから実際にぶつけられたこともあります

私たちは、精一杯、休憩時間も削って頑張ってるんですけど
患者さんご家族さんが求める「人としての尊厳」の部分が
優先順位から外されてしまう現状がありました

そんな看護が嫌になって、それしかできない自分が嫌になって
「看護師」の自分に限界を感じてしまいました

看護の現場を退いて、患者家族の立場が多くなった今は
煩雑すぎる看護業務を、人の手を増やすことでゆとりを持たせ
看護師本来の「患者に寄り添う看護」ができるような
看護体制にできないものか、
看護を提供する側も提供される側もWIN-WINになるような
そんな現場にならないものか、と強く願ってやみません

看護師の対応を冷たいと感じ、悲しい思いをする母
対応が冷たいと患者家族に誤解されてしまう看護師
どちらも苦しみ…ですよね


自分を取り巻く人たちがいろんな思いを抱いているとはつゆ知らず
父は今日も父の世界の一日を過ごしているのでしょう

みんなが穏やかに、笑顔で過ごせる社会をつくりたい…
果てしなく大きな夢だけど、いつか叶いますように

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