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【エッセイ】子どもだって、恋に悩む

やっぱり今はかなり昔。
同級生に恋をした。下駄屋のタケちゃんだ。
タケちゃんは、やや太め。
タケちゃんの書く「た」の字が好きだった。
大きくて、偉そうだったのだ。

「タケちゃん、一緒に帰ろう」
「うん、一緒に帰ろう」
 ランドセルを背負って、タケちゃんを促す私に、言った。
「ちょっと待ってね。たみ子ちゃんを呼んでくるから」
 ……。
傘屋のたみ子ちゃんと、タケちゃんは幼稚園時代からの
同級生だった。
おまけにタケちゃんちの下駄屋の斜め前が、たみ子ちゃんちの傘屋だった。
私を覆う、敗北感。

タケちゃん、たみ子ちゃん、私の3人での下校が続いた。
やがてタケちゃんは、男子と帰るようになった。
女子と遊ぶより、男子同士のほうがおもしろかったのだろう。

いつしか下校時、私の隣にはいつもたみ子ちゃんだけがいるようになった。
なんで、こうなるの!?
子どもながら、恋の不条理をもてあましていた。

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