真宮書子

小説家志望です。 小説は、ウソの世界です。ウソの世界でしか言えない真実もあります。 ウ…

真宮書子

小説家志望です。 小説は、ウソの世界です。ウソの世界でしか言えない真実もあります。 ウソの世界でしか表現できない思い、気持ちをめざしています。 ぜひ、ぜひ、ぜひ。ご堪能くださいませ。

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嬲(なぶ)る 元同級生

     第一章 一 学生アパートの一夜                                  気づかなかったぜ、まったく。  ウワサの勘違い女が、袖子のことだったなんて。どっちかっていうとおとなしくて、目立たないほうだったもんな。  成績はよくも悪くもなかったんじゃないかな。中くらい。容姿も……、まぁそこそこ、ということにしておこう。何といっても女だもんな、容姿に言及すると、思わぬとばっちりを受けかねない。  好意も悪意も持ってなかったな。思い出すこともなか

    • 【エッセイ】たまには、ふんどし

      博多祇園山笠を観覧して、何年になるだろう。 前日、バリッとしたスーツ姿で名刺交換した市役所職員が、夜明け前には ふんどし姿で現れた。 何ともいえない気まずい空気が流れ、何か言おうとしても、うまく言葉にならなかった。 聞くところによれば、福岡市役所職員にとっても、観光課は鬼門になっているのだとか。今どきのイケメン男子にとって、ふんどし姿が高い敷居になるのは理解してあまりある。 さて、本題。 縛るという行為は、精神的に意義があるという説がある。縄文時代から、貫頭衣を着て、腰の

      • 【小説】嬲(なぶ)る33  金運あっても、人運なし

        四 金運はあっても、人運がない男  60歳前後だろう。その歳にしては背が高い。髪には白いものが目立つものの、鼻筋の通った端正な顔だちだ。若いころはさぞイケメンだったことが想像できる。  離婚した元嫁も、そんなところに惚れたんだろうな。    元嫁の実家は、市内でも有数の問屋だ。個人相手の商売ではないので一般には知られていないが、知る人ぞ知る老舗だ。  格式のようなものを重んじるところがあり、立浪との結婚には親族そろって大反対した。死ぬの生きるのといった騒ぎにもなったらしいぜ。

        • 【小説】嬲(なぶ)る31 うぬぼれとかさけ

          三 私だけは、特別  立浪の会社自体はさほど大きくはない。社員総数は、30~40名ほどだ。すでに登記上の社長は息子に譲っているが、完全に退いてはいない。  会長として、昔からの取引先は相変わらず立浪を通して商売している。立浪の資産への信用なくしては経営に支障が出ることもあるのだろう。  息子は、立浪とはいささか様子が異なる。生真面目な優等生タイプのようで、ルールに即した商売をする。自身で開拓した顧客もおり、わるい評判は立っていない。  地味ではあるが、堅い商売を展開する。無

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        嬲(なぶ)る 元同級生

          【小説】嬲(なぶ)る30 悪評をまとう金持ちに、近づく?

          二 守銭奴  さっそく電話が来たのは、あの爪マニキュア男だ。 「見舞に行ったが、面会謝絶で会えなかった。一命は取りとめたようですから、私もちょいちょい顔を出してみます」  事態が事態だけに当分、誰にも会わせない。親父のもとには、すでに連絡があった。親父は、衿子の娘を付き添いに付けていた。  家族の威力を知らないんだな、爪マニキュア男は。状況はおかまいなしに、自分の功績をアピールしようとする。だから、舐められる。  100万円の金も満足に動かせない爪マニキュア男と比べるのは失

          【小説】嬲(なぶ)る30 悪評をまとう金持ちに、近づく?

          【エッセイ】浴衣、着られる?

          誰でも浴衣は着られる。 問題は、自分1人で着られるかどうかだ。 そんなもん当たり前ジャン! と思っていたら、違った。 「着れない」 「私も」「私も」 1人で着られない人が大半だった。 20代、30代の若い女性ではない。 40代、50代の女性も、やっぱり「着れない」と言い出す。 本当、カルチャーショックだった。 以前、「三蔵法師が男って本当ですか!?」と尋ねられたとき以来の ショック。 私に断りもなく、時代はどんどん変っていくものなのね。

          【エッセイ】浴衣、着られる?

          【短編小説】損得のすゝめ(仮案) つばさのちぎれた鳥たちへ

          《あらすじ》 製造業なら、自社製品を世に送り出したあとも、責任を負う。教育産業だって、世に送り出した生徒に責任を負うべきだ。この持説に基づいて、教え子に出す手紙の作成を思いついた。 何とか想いを伝えようとするが、数学教師だけに文章は苦手だ。そこで、売れないライターに依頼することになった。 教え子は、とある星の、とある選挙で、選挙妨害で逮捕されていた。 とある星の、とある国の、とある選挙で、とある候補者が逮捕された。 他の候補者への、選挙活動を妨害したという容疑だ。 「今度

          【短編小説】損得のすゝめ(仮案) つばさのちぎれた鳥たちへ

          【短編小説】慰留嘆願書(仮案) 辞めないで!

          《あらすじ》 とある星の、とある国の、生活苦のライター。彼のもとにやってきた依頼は、辞任を示唆する政治団体の代表に向けて、慰留を求める文書を作成してほしいというものだった。 失言多発、組織内外からの批判多数する代表。生活苦のライターが作成した慰留嘆願書とは……。 「ディスカウントしたんだって」 「介護士やってる女性で、どう見てもお金なさそうなんだもん」 「金のない苦労は身に染みてわかるってわけだ。タダにしてやればよかったのに」 「そうはいかないよ、俺だって、家賃3カ月ためて

          【短編小説】慰留嘆願書(仮案) 辞めないで!

          【短編小説】立候補声明文(仮案)

          《あらすじ》 選挙の話題がかまびすしい、ある星のある国の首都。現職首都知事は過去のスキャンダルを説明することができず、立候補表明を躊躇していた。窮地を打開するために、声明文を公募することにした。 テーマは、「誰もが納得する立候補声明文」。 生活苦のライターが考えた、声明文の仮案とは……。 とある星の、とある国の、首都。 誰が立候補するとかしないとかで、騒がしい。 「学歴詐称で外国に弱みを握られているとか、公約達成ゼロとかってウワサの人だろ」 「まあな」 「もの好きだな」

          【短編小説】立候補声明文(仮案)

          【エッセイ】立候補した! 責任

          生徒会選挙は、年2回行われる。 落選した半年後、私はまた候補に推薦された。 二度と、前回のような想いはしたくない。 同時に、落選するのが怖いから逃げたと思われたくないと いう気持ちもあった。 結局、再度、立候補することになった。 ただし、生徒会長さんは、すでに引退。 最大のモチベーションを失った私は、やる気がない。 前回のように立会演説会の原稿を考えるのも、めんどくさい。 結局、生徒会規約を全条、暗誦した。 いわば、コピペ。 時代の先端を行っていたわけだ。 当選したけど、

          【エッセイ】立候補した! 責任

          【エッセイ】立候補した! 理由

          最初に断っておくと、国政でも地方自治でもない。 私が体験した唯一の選挙経験は、中学校の生徒会だ。 目新しいことには何でも飛びついてしまう私は、生徒会選挙に 興味津々だった。 かといって、自分から名乗りを挙げるほどの度胸はない。 ホームルームの議題は、わがクラスからも生徒会役員を出そう! みたいなものだった。 誰か推薦してくれないかなという下心を隠しつつ、臨んでいた。 出ました、出ました、私の名前。 決をとったところ、私に決まった。 「できるかどうかわからないけど、私でいい

          【エッセイ】立候補した! 理由

          【小説】嬲(なぶ)る 29 他人事だって、明日は我が身

               第六章 一 家庭内殺傷事件、勃発  人生を閉じると決めたとき、最後に連絡をするのは誰か。普通に考えれば、一番大事に思う奴だろうな、やっぱ。  衿子の場合は、立浪だった。冴子を3倍の給料で引き抜こうとして、フラれた男だ。爪マニキュア男でなかったのがせめてもの救い。それにしても衿子の周りにはろくな奴がおらん。人生の最期を託したのが立浪だったとは、あまりにも哀れだよな。  約束手形の無断発行がわかったとき、袖子は内容証明郵便を配達証明付きで取引先に出したんだ。  身内に

          【小説】嬲(なぶ)る 29 他人事だって、明日は我が身

          【短編小説】私はトイレ 

          《あらすじ》  都心にある大手企業本社ビル内の女子トイレ。さまざま女子社員が訪れては、オフィスとはちょっと違った顔を見せている。女子トイレだけが知っている、ありふれた女子トイレ内の日常が、今日もスタートした。  気になるのは、始業まもなく駆け込んできた女子社員だ。昼休みが過ぎ、夕方になっても、ブースに閉じこもったまま出てこない。 《本文》 私は、トイレ。 名前はまだ、ない。この先も間違いなく、ない。 都心にある大手企業の本社ビル37階、東側中央に居座って30年が過ぎた。

          【短編小説】私はトイレ 

          【小説】嬲(なぶ)る 28 家族が家族でなくなるとき

           七 お姉ちゃんが壊れちゃった  想像を交えて説明するな。気になるだろう、他人の離婚って。のぞき見根性って、誰の心にもあるもんだからな。  えっ、想像じゃしょうがないって? お前らだって、想像にすぎないことをさも事実かのように噂してるじゃん。  世の中、そんなもんさ。まぁいいから、黙って聞けや。事実も少しは交えているわけで、そう的外れでもないはずだぜ。  藤枝クリーニングの資金繰りが厳しくなり、やがて亭主も察するところになる。  亭主は、保証人から外してくれと言い出したん

          【小説】嬲(なぶ)る 28 家族が家族でなくなるとき

          【小説】嬲(なぶ)る 27 家族が豹変するとき

          六 身内に差し込むヤバい影  衿子の亭主が、藤枝クリーニングから手を引いた経緯は知らないんだよな。特段、噂にもなっていなかったからな。  元々いてもいなくても関係ないというか、存在感がなくなっていたんだよな。  資金繰りが怪しくなってからは、衿子は経理も自分でやることが多くなっていた。亭主に文句を言われることが嫌だったんだと思うぜ。  都合のわるいことは何でもナイショにする癖があるからな。  最終的に、亭主がやったのは営業くらいじゃないのかな。それも嫌味や皮肉を言う得意先

          【小説】嬲(なぶ)る 27 家族が豹変するとき

          【小説】嬲(なぶ)る 25 悪女パターンはいろいろ

          五 ありがちな悪女沼  勤め人は誰でも、自分の将来に不安を抱えている。クビになる不安はもちろんだが、ミスをしたときの左遷、同期との出世競争に負ける、減給、上司からの叱責……数え上げればきりがない。 「お前はいいよ、藤枝クリーニングがあるもんな」    藤枝クリーニングが大きくなるにつれて、衿子の亭主も、そう言われることが増えたと思うぜ。  結婚当は街角のクリーニング店にすぎなかったので、亭主も家族の生活は自分で背負う気でいたはず。    しかし大きくなるにつれて、世間は亭

          【小説】嬲(なぶ)る 25 悪女パターンはいろいろ