【エッセイ】ギブ ミー チョコレートだった日々
少年たちはもう何年も甘い物など口にしていない。その前に、ろくな食事すらしていないのだ。
「一度でいいかな腹いっぱい食べてみたいなぁ」
叶うはずのないことはわかりすぎるほどわかっていたが、言うだけで空腹はいくぶん紛らわすことができたのだ。
「毒が入っているかもしれないから、食べるんじゃない」
たしなめるおふくろの言葉が薄れていく。
甘い香りの誘惑に勝てず、ニトログリセリンをなめたことがある。
「少しなら平気だ」
少年は、米兵が置いて行ったチョコレートを指でこそぎ、なめた。毒は